引きこもり14歳女子の異世界デビュー ─変わり者いじめられっ子の人リスタート─
47話 結成・愛月コンビ
「……それでは、試験の概要を説明します。……お2人にはお互いに協力して、精霊魔動機兵と15分間戦っていただきます。……その戦闘における各自の行動を総合的に判断し、3人の試験官の採点をつき合わせて合否を決定します。」
目の前にいる受験者は、ルナさんとアイシアさんだ。
アイシアさんは私の勤める魔法学校の1年生で、剣術大会に出場していたハーデスさんの娘でもある。
2人とも私の顔見知りだが、試験官は規定により顔が隠れる全身ローブと声を変える魔導具の着用が義務づけられているため、2人からは私がアイナだとはわからない。
「……試験会場には、剣術大会でも用いられる、怪我をしないフィールドが展開されるのでその点はご安心下さい。……ただし、制限時間内に精霊魔動機兵の攻撃や魔力の枯渇により戦闘不能となった場合は、その時点で不合格となります。」
「……また、試験用の精霊魔動機兵は、一般的には極めて撃破困難なレベルに設定しております。……攻撃は牽制にとどめ、協力して生き残ることに専念するのを強くお勧めします。」
「……それでは、これより試験開始まで15分間、ミーティングのための時間を設けます。……お2人で話し合い、しっかりと作戦を立てて下さい。……では、始め。」
私は椅子に座り、2人の様子を見る。
先に話しかけたのはルナさんの方だ。
「あの、はじめまして。何かペアらしいから自己紹介から……わたしルナ。えっと、あなたは?」
「あたしはアイシア。よろしくね、おねーさん。……んー、さっきから気になってたんだけどさ。おねーさん、1つ質問しても大丈夫?」
アイシアさんは不思議そうな顔でそう言った。
聞きたいことは、何となく予想はつく。
「なになに?アイシアちゃん。何でも聞いて。」
「……おねーさん、その杖で一次試験通ったの?それって初心者用の一番安い杖だよね?しかもそれで二次試験まで受けようなんて……。」
受験者は一般的に、試験の規定に引っ掛からないギリギリ高性能な杖を使うため、アイシアさんが疑問に思うのは当然だ。
それをあえて不利な条件で受験する理由が何なのか、私も気になるところではある。
「ああ、これ……いやほら、これってガイストさんにプレゼントされた思い出の品だから、なんか愛着あってこれじゃないとダメだなーって。ほら、願掛けみたいな?あれ?違ったっけ?」
なるほどと私は思う。
思い入れのある品なら、あるいは手に馴染まない高性能な新品より場合によっては高い性能を発揮するケースもなくはない。
特に魔法においては。
「え……ガイストさんって、もしかしてあのガイスト様?剣術大会二連覇の……。」
しかし、どうもアイシアさんは杖の件とはまた別の部分に食いついたらしい。
そう言えば、以前学校でアイシアさんはガイストさんの大ファンだと話していたのを思い出した。
「そうそう、そのガイストさん!おっきくて強いんだよ、しかも優しいし──」
「おねーさん、ガイスト様とどういう関係なの!?プレゼント貰えるぐらい親しいの!?ね!ね!紹介とかしてもらえたりするの!?無理かな!?駄目かな!?」
アイシアさんは目を輝かせながらルナの両肩を掴み、前後に揺すりながら大声でまくし立てる。
落ち着いた子だと思っていたけれど……よほどガイストさんがお気に入りらしい。
「ちょ、ちょっとアイシアちゃん落ち着いて!……ガイストさんなら一緒に都に来てるから、試験終わったら一緒に会いに行こ?ね?だから落ち着いて。リアルに脳みそがシェイクされるから。」
「あ、ごめんなさい!……よっしゃぁ、俄然やる気出て来た……愛しのガイスト様にお会いできるなんて夢みたい……。おねーさん、約束だからね!」
ここまで2人は雑談しかしていないように見えるが、実際には共闘に必要な信頼関係の形成がしっかりと行われている。
とてもよい流れだ。
「よし、じゃあ時間もないし、一気に作戦立てちゃおう。合格して、ガイスト様にいいところ見せなきゃ……。ね、まずおねーさんがどんな魔法使えるか教えて。それで、あたしの使える魔法と合わせて作戦考えよ。」
「えっと、わたし初心者だからまだ全然種類使えなくて……教科書の最初に載ってる、魔力凝縮と、魔力壁だけ……。」
「……え、うそ、どういうこと?それでどうやって一次試験受かったの?熱量制御系の属性魔法使えなきゃ受かんないでしょ、あれ?」
一次試験は、5つのオブジェクトを時間内に破壊する単純な試験だ。
それぞれのオブジェクトには熱に弱いなどの異なった性質があり、普通は無属性に分類される魔力凝縮では時間内に破壊することはできない。
だから、私もルナさんの一次試験の詳細な結果を見たときは驚いた。
「おねーさん、一次試験の結果通知持ってるでしょ?ちょっと見せて。」
「あ、うん。……これのこと?」
「魔力の最大計測値、3207.9、平均値、2189.0、試験時間、58秒……。おねーさん、化け物だね……すごい。項目別の得点は攻撃力だけ満点で他はほとんど0点だけど。」
ルナさんは全てのオブジェクトを魔力凝縮を使って一撃で破壊したそうだ。
標準作業時間は10分とされているため、58秒というのは異常値と言っていいほど速い。
また、魔力の計測値はこの試験を受けるレベルの人なら大体は200~300程度が一般的だ。
なので、ルナさんの魔力は単純計算で通常の10倍以上あることになる。
この異常すぎるパワーが、魔力凝縮による全オブジェクト破壊という離れ技を可能にしたということだ。
しかし、これはまさに一芸に特化したルナさんの特性が、一次試験の内容に見事にマッチした結果にすぎない。
一見とんでもない能力を持っているかに見えるルナさんにも、いくつかの致命的な欠点があるのだ。
目の前にいる受験者は、ルナさんとアイシアさんだ。
アイシアさんは私の勤める魔法学校の1年生で、剣術大会に出場していたハーデスさんの娘でもある。
2人とも私の顔見知りだが、試験官は規定により顔が隠れる全身ローブと声を変える魔導具の着用が義務づけられているため、2人からは私がアイナだとはわからない。
「……試験会場には、剣術大会でも用いられる、怪我をしないフィールドが展開されるのでその点はご安心下さい。……ただし、制限時間内に精霊魔動機兵の攻撃や魔力の枯渇により戦闘不能となった場合は、その時点で不合格となります。」
「……また、試験用の精霊魔動機兵は、一般的には極めて撃破困難なレベルに設定しております。……攻撃は牽制にとどめ、協力して生き残ることに専念するのを強くお勧めします。」
「……それでは、これより試験開始まで15分間、ミーティングのための時間を設けます。……お2人で話し合い、しっかりと作戦を立てて下さい。……では、始め。」
私は椅子に座り、2人の様子を見る。
先に話しかけたのはルナさんの方だ。
「あの、はじめまして。何かペアらしいから自己紹介から……わたしルナ。えっと、あなたは?」
「あたしはアイシア。よろしくね、おねーさん。……んー、さっきから気になってたんだけどさ。おねーさん、1つ質問しても大丈夫?」
アイシアさんは不思議そうな顔でそう言った。
聞きたいことは、何となく予想はつく。
「なになに?アイシアちゃん。何でも聞いて。」
「……おねーさん、その杖で一次試験通ったの?それって初心者用の一番安い杖だよね?しかもそれで二次試験まで受けようなんて……。」
受験者は一般的に、試験の規定に引っ掛からないギリギリ高性能な杖を使うため、アイシアさんが疑問に思うのは当然だ。
それをあえて不利な条件で受験する理由が何なのか、私も気になるところではある。
「ああ、これ……いやほら、これってガイストさんにプレゼントされた思い出の品だから、なんか愛着あってこれじゃないとダメだなーって。ほら、願掛けみたいな?あれ?違ったっけ?」
なるほどと私は思う。
思い入れのある品なら、あるいは手に馴染まない高性能な新品より場合によっては高い性能を発揮するケースもなくはない。
特に魔法においては。
「え……ガイストさんって、もしかしてあのガイスト様?剣術大会二連覇の……。」
しかし、どうもアイシアさんは杖の件とはまた別の部分に食いついたらしい。
そう言えば、以前学校でアイシアさんはガイストさんの大ファンだと話していたのを思い出した。
「そうそう、そのガイストさん!おっきくて強いんだよ、しかも優しいし──」
「おねーさん、ガイスト様とどういう関係なの!?プレゼント貰えるぐらい親しいの!?ね!ね!紹介とかしてもらえたりするの!?無理かな!?駄目かな!?」
アイシアさんは目を輝かせながらルナの両肩を掴み、前後に揺すりながら大声でまくし立てる。
落ち着いた子だと思っていたけれど……よほどガイストさんがお気に入りらしい。
「ちょ、ちょっとアイシアちゃん落ち着いて!……ガイストさんなら一緒に都に来てるから、試験終わったら一緒に会いに行こ?ね?だから落ち着いて。リアルに脳みそがシェイクされるから。」
「あ、ごめんなさい!……よっしゃぁ、俄然やる気出て来た……愛しのガイスト様にお会いできるなんて夢みたい……。おねーさん、約束だからね!」
ここまで2人は雑談しかしていないように見えるが、実際には共闘に必要な信頼関係の形成がしっかりと行われている。
とてもよい流れだ。
「よし、じゃあ時間もないし、一気に作戦立てちゃおう。合格して、ガイスト様にいいところ見せなきゃ……。ね、まずおねーさんがどんな魔法使えるか教えて。それで、あたしの使える魔法と合わせて作戦考えよ。」
「えっと、わたし初心者だからまだ全然種類使えなくて……教科書の最初に載ってる、魔力凝縮と、魔力壁だけ……。」
「……え、うそ、どういうこと?それでどうやって一次試験受かったの?熱量制御系の属性魔法使えなきゃ受かんないでしょ、あれ?」
一次試験は、5つのオブジェクトを時間内に破壊する単純な試験だ。
それぞれのオブジェクトには熱に弱いなどの異なった性質があり、普通は無属性に分類される魔力凝縮では時間内に破壊することはできない。
だから、私もルナさんの一次試験の詳細な結果を見たときは驚いた。
「おねーさん、一次試験の結果通知持ってるでしょ?ちょっと見せて。」
「あ、うん。……これのこと?」
「魔力の最大計測値、3207.9、平均値、2189.0、試験時間、58秒……。おねーさん、化け物だね……すごい。項目別の得点は攻撃力だけ満点で他はほとんど0点だけど。」
ルナさんは全てのオブジェクトを魔力凝縮を使って一撃で破壊したそうだ。
標準作業時間は10分とされているため、58秒というのは異常値と言っていいほど速い。
また、魔力の計測値はこの試験を受けるレベルの人なら大体は200~300程度が一般的だ。
なので、ルナさんの魔力は単純計算で通常の10倍以上あることになる。
この異常すぎるパワーが、魔力凝縮による全オブジェクト破壊という離れ技を可能にしたということだ。
しかし、これはまさに一芸に特化したルナさんの特性が、一次試験の内容に見事にマッチした結果にすぎない。
一見とんでもない能力を持っているかに見えるルナさんにも、いくつかの致命的な欠点があるのだ。
コメント
さんじゅーすい
残念ながら、ルナさんにそういうおいしい役回りは回ってきません笑
美浜
精霊魔動機兵もルナさんの魔力凝縮で一撃だったりするかな?