引きこもり14歳女子の異世界デビュー ─変わり者いじめられっ子の人リスタート─

さんじゅーすい

40話 剣術大会終了

ザディウスの剣が眩い光を纏い、襲いかかる。

名前からして竜殺しの技か?
ほんと何でも有りだな。
人間相手にそんなもん使ってんじゃねぇよ、危ないだろ。


だが、大技なだけに動きが単純で読みやすくはある。
闘技場のフィールド内ですら、直撃すればどうなるかわからないほど危険な匂いがプンプンするが……それは考えないでおこう。

まあ後は賭けだな。頼むぜ──


「リヒト!ここで決めるぞ!気合い入れて合わせろ!」


先ほどからのザディウスの違和感ある動き、時折感じるリヒトの気配、俺は確かに感じ取っていた。

攻撃的で荒いザディウスの気配とリヒトの穏やかで優しい気配は正に対極。
それゆえ、俺にはリヒトが必死に肉体の主導権を取り戻そうと戦っていることに気付くことができた。


俺一人ならザディウスには絶対に勝てない。
だが、リヒトと二人なら勝機はある。
ザディウスは慢心して、リヒトの存在を完全に無視しているようだからな。


2対1を卑怯だとも思わない。
もともと俺とリヒトの真剣勝負にいきなり割り込んできたザディウスが余りに無粋すぎるからだ。
俺たち2人に返り討ちに遭っても文句は言えまい。


一瞬の隙さえ作ってくれればいい。
その一瞬に、俺の全力をぶつけてやる。


「……くっ!なんだと……!?一体何が──」


俺の呼びかけに呼応するかのように、ザディウスの攻撃の軌道は大きく逸れ、腹部にでかい隙ができる。

予想以上だぜ、リヒト。
さっきまで全力で戦っていただけあって、タイミングもばっちりだな。


「敵は俺一人じゃねーってことだよ……俺たちの勝ちだな!」


俺の剣がザディウスの胴にヒットし、周囲に衝撃波が巻き起こる。
そして、派手に吹き飛ばされて闘技場の端で大の字になって倒れ込んだ。


警戒しつつザディウスに近付く俺だったが……もはや戦える状態ではないようだ。

本来この体の持ち主はリヒトだからな。
精神的に弱れば、リヒトに主導権を明け渡して引っ込まざるを得なくなるということだろう。

見下ろす俺に、ザディウスが弱々しく語りかける。


「……なあ、オマエ。一緒に居た……ガキじゃない方の女のことはどう思ってんだ?」

「急に何の話だよ?……リーシェのことならルナと同じ、俺の家族みたいなもんだ。守るべき人の1人だ。」


「なるほど、……ね。そうか、それなら安心だな……ハハハハハハ……。」


そう言うと、ザディウスは意識を失い、もう話すことはなくなってしまった。


ルナは守ろうとする俺が邪魔、逆にリーシェは俺が守るから安心とでも言いたいのか?
最後まで何が言いたいのかさっぱりわからん奴だったな。


まあ途中言ってた、ルナが危険な存在だというような話は、どうしても引っ掛かるところはあるが──

現状ザディウスの、あのあやふやな言葉だけを頼りに、ルナに対して疑いの目を向けるようなことは俺はしたくない。


マーヤは墓参りでしばらく戻らないし、この件で今できることは、ザディウスと関わりのあるリヒトに聞いてみることぐらいだろうか。



ともかく、意外な展開を経て俺は今年の剣術大会にも優勝することとなった。

あくまで対外的には、だが。


その実態は──

リヒトとの勝負はザディウスの割り込みで途中終了。

そのザディウスは、リヒトと俺の協力プレイで撃破。


俺とリヒトの決勝はどこ行った?


ほんと何てことしてくれたんだよ、あの剣聖様は、まったく。

コメント

  • さんじゅーすい

    はっきりとした話は、我らがマーヤさんの帰還を待つのです笑

    1
  • 美浜

    ザディウスの言葉が気になる!

    ルナはどういう存在なんだろう?

    2
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