引きこもり14歳女子の異世界デビュー ─変わり者いじめられっ子の人リスタート─
37話 偉大で尊大な100年前の亡霊
攻撃の瞬間、あたかも周囲の大気や、広がる大地、広大な空の全てが、振り下ろす剣とともにリヒトへと襲いかかるかのように錯覚する。
まるで、周囲の空間の全てと一体となったかのような陶酔感に、俺は包まれた。
避けきれないと悟ったか、リヒトは俺の攻撃を受け流そうと試みたようだが──
俺の剣とリヒトの剣がぶつかった時、そこを起点に大気が振動し、非常に美しい音色が闘技場全体へと響き渡った。
そして次の瞬間、闘技場全体を震わせるほどの衝撃波が発生し、リヒトは大きく闘技場の端まで吹き飛ばされた。
「……くっ、さすが……!」
剣で地面を突き、体を支えながらリヒトは言う。
「この決勝のためにない頭で考えた新技だよ、なかなのもんだろう?」
「なかなかどころじゃないね、これは……なら、僕も全力でいかないといけないみたいだ!」
そう言うと、体勢を立て直したリヒトは地面を蹴り、一気に俺との距離を詰めてきた。
それまでより相当速度は速いが、しなやかさは全く失われていない。
お互い射程圏内へと入ったところだが、それまでとはリヒトの動きが違う。
単純に速度が上がっているだけではなく、その気配はあたかも2つや3つに分裂しているかのようだ。
残像を纏いながら俺の周囲を舞うように攻撃を仕掛けてくるリヒト。
意識を撹乱するかのような動きに惑わされないように、研ぎ澄ました心で動きを読みその攻撃を防ぐ俺。
隙を突いて俺も攻撃を仕掛けるものの、この高速戦闘では全力での攻撃も難しい。
発生する衝撃波ごとリヒトに受け流され、壁や地面に爆風を発生するに留まる。
響き渡る剣の音と、爆風により舞い上がる砂煙。
今の俺とリヒトの実力は、完全に拮抗しているようだった。
同じ実力の相手と全力で戦うというのは、これほどまでに気分の良いものだったのかと、俺は初めての経験に胸を熱くする。
だが、これも長くは続かないことを俺も、恐らくはリヒトも予見していた。
実力差がないため、確かに勝敗は付かない。
決め手になる一撃が繰り出されないためだ。
ただ、それはあくまで現状の話。
見た目に違わず、俺とリヒトでは余りにも体力差がありすぎた。
時間が経つにつれ、その差は明確に2人の動きのキレに差を与えてゆく。
長期戦はリヒトの苦手とするところなのだろう。
全力で動き回るリヒトの顔には、明らかな疲労の色が見え始めてきていた。
そして──
「……がはっ!」
動きの鈍ったリヒトへ俺の剣が掠めるようにヒットする。
瞬間、発生した剣圧と衝撃波によって、リヒトはまたも大きく吹き飛ばされた。
リヒトは倒れたまま動かない。が──
今の一撃では全く致命傷とはなり得ないだろう。
まだ戦うか、それとも……。
俺も観客もリヒトの次の動向に注目し、闘技場はしばしの静寂に包まれる。
俺は剣を構え直し、リヒトの次の行動に備えた。
程なく、リヒトはゆっくりと起き上がった。
そして、顔を上げて俺に視線を向けてきたのだが──
どうも様子がおかしい。
口の端を上げてニタァと笑ったその表情は、まるでリヒトとは違う別人のようだ。
「おいリヒト、一体──」
「ククク……リヒトじゃねーよ、かの有名な剣聖ザディウス様だ。コイツじゃどうも荷が重いみたいだからな、俺様が直々に相手してやるよ。」
余りのことに絶句する俺をよそに、リヒト……いや自称ザディウスは話し続けた。
「……オマエのその目、心底気に入らねぇな。自信と希望に満ちたその恵まれた人間の目がよ。セレスティアに好かれてるからって調子乗ってんのか?」
「セレスティア?100年も前に死んだ聖女セレスティアの名前が何で急に出てくる?」
「ああ、そうだよ。確かにセレスティアは100年前に死んだ。……人間の醜い悪意の前に!為す術もなく!虫けらのごとく殺された!……ハハハハハハ!」
ハーデスの話と合わせて考えても、今話してるのは本当に英雄の1人、剣聖ザディウスなのかも知れない。
だが、話に伝え聞く剣聖のイメージとは全く違う。
明らかに狂ってるだろう、この様子は。
聖女は魔王との戦いで命を落としたはずだし、訳がわからん。
「──それとな、あのルナとかいうガキ。アイツが何者かわかってつるんでんのかオマエ?……まあいいけどな。オマエもあのガキもぶっ殺して、俺様はもう一回全部やり直す。今度こそ、セレスティアと結ばれてみせる。」
「何だと……?」
こいつは今、ルナを殺すと言ったのか?
もはや俺の家族同然となった、ルナを。
まるで、周囲の空間の全てと一体となったかのような陶酔感に、俺は包まれた。
避けきれないと悟ったか、リヒトは俺の攻撃を受け流そうと試みたようだが──
俺の剣とリヒトの剣がぶつかった時、そこを起点に大気が振動し、非常に美しい音色が闘技場全体へと響き渡った。
そして次の瞬間、闘技場全体を震わせるほどの衝撃波が発生し、リヒトは大きく闘技場の端まで吹き飛ばされた。
「……くっ、さすが……!」
剣で地面を突き、体を支えながらリヒトは言う。
「この決勝のためにない頭で考えた新技だよ、なかなのもんだろう?」
「なかなかどころじゃないね、これは……なら、僕も全力でいかないといけないみたいだ!」
そう言うと、体勢を立て直したリヒトは地面を蹴り、一気に俺との距離を詰めてきた。
それまでより相当速度は速いが、しなやかさは全く失われていない。
お互い射程圏内へと入ったところだが、それまでとはリヒトの動きが違う。
単純に速度が上がっているだけではなく、その気配はあたかも2つや3つに分裂しているかのようだ。
残像を纏いながら俺の周囲を舞うように攻撃を仕掛けてくるリヒト。
意識を撹乱するかのような動きに惑わされないように、研ぎ澄ました心で動きを読みその攻撃を防ぐ俺。
隙を突いて俺も攻撃を仕掛けるものの、この高速戦闘では全力での攻撃も難しい。
発生する衝撃波ごとリヒトに受け流され、壁や地面に爆風を発生するに留まる。
響き渡る剣の音と、爆風により舞い上がる砂煙。
今の俺とリヒトの実力は、完全に拮抗しているようだった。
同じ実力の相手と全力で戦うというのは、これほどまでに気分の良いものだったのかと、俺は初めての経験に胸を熱くする。
だが、これも長くは続かないことを俺も、恐らくはリヒトも予見していた。
実力差がないため、確かに勝敗は付かない。
決め手になる一撃が繰り出されないためだ。
ただ、それはあくまで現状の話。
見た目に違わず、俺とリヒトでは余りにも体力差がありすぎた。
時間が経つにつれ、その差は明確に2人の動きのキレに差を与えてゆく。
長期戦はリヒトの苦手とするところなのだろう。
全力で動き回るリヒトの顔には、明らかな疲労の色が見え始めてきていた。
そして──
「……がはっ!」
動きの鈍ったリヒトへ俺の剣が掠めるようにヒットする。
瞬間、発生した剣圧と衝撃波によって、リヒトはまたも大きく吹き飛ばされた。
リヒトは倒れたまま動かない。が──
今の一撃では全く致命傷とはなり得ないだろう。
まだ戦うか、それとも……。
俺も観客もリヒトの次の動向に注目し、闘技場はしばしの静寂に包まれる。
俺は剣を構え直し、リヒトの次の行動に備えた。
程なく、リヒトはゆっくりと起き上がった。
そして、顔を上げて俺に視線を向けてきたのだが──
どうも様子がおかしい。
口の端を上げてニタァと笑ったその表情は、まるでリヒトとは違う別人のようだ。
「おいリヒト、一体──」
「ククク……リヒトじゃねーよ、かの有名な剣聖ザディウス様だ。コイツじゃどうも荷が重いみたいだからな、俺様が直々に相手してやるよ。」
余りのことに絶句する俺をよそに、リヒト……いや自称ザディウスは話し続けた。
「……オマエのその目、心底気に入らねぇな。自信と希望に満ちたその恵まれた人間の目がよ。セレスティアに好かれてるからって調子乗ってんのか?」
「セレスティア?100年も前に死んだ聖女セレスティアの名前が何で急に出てくる?」
「ああ、そうだよ。確かにセレスティアは100年前に死んだ。……人間の醜い悪意の前に!為す術もなく!虫けらのごとく殺された!……ハハハハハハ!」
ハーデスの話と合わせて考えても、今話してるのは本当に英雄の1人、剣聖ザディウスなのかも知れない。
だが、話に伝え聞く剣聖のイメージとは全く違う。
明らかに狂ってるだろう、この様子は。
聖女は魔王との戦いで命を落としたはずだし、訳がわからん。
「──それとな、あのルナとかいうガキ。アイツが何者かわかってつるんでんのかオマエ?……まあいいけどな。オマエもあのガキもぶっ殺して、俺様はもう一回全部やり直す。今度こそ、セレスティアと結ばれてみせる。」
「何だと……?」
こいつは今、ルナを殺すと言ったのか?
もはや俺の家族同然となった、ルナを。
コメント
さんじゅーすい
ようやく起承転結の転まで来ました(^^)
結局何話で終わるか自分でも予測不能笑
美浜
まさかの急展開!?
これからどうなるんだ?