引きこもり14歳女子の異世界デビュー ─変わり者いじめられっ子の人リスタート─
31話 贅沢で大きい悩み
その日の夜、宿の部屋で。
「もうちょい左、いや、もうちょい上だな。」
「えーっと、この辺ですか?いや、もうちょっとこっちかな?」
「おー、そこだそこ。いいねぇ……もうちょい強めに頼んで大丈夫か?」
「はーい。……くすくす、なんかいいですね、こういうの。」
うつ伏せになった背中に、ルナに乗ってもらい足踏みマッサージをしてもらう俺。
リーシェはちょうど風呂に入っているところだ。
結局あの後の試合は、特に苦戦することもなく俺の圧勝で終わった。
初戦の相手があのエリザだったため、今年は強者揃いで大いに苦戦することを予想していたのだが……蓋を開けてみれば特にそういうわけでもなかったようだ。
もっとも、次からの試合がどうなるかはまだまだわからないので、油断は禁物だが。
「ところでルナ、今日リヒトの試合中いやに大人しかったが、何か気になることでもあったのか?」
「……気になるって言うか、えーと、なんて言うか、……。」
やはり言いにくいか。
言いにくいなら無理して言わなくても……と、まさに俺が言いかけたところだった。
ルナが再び口を開く。
「……決勝戦でガイストさんとナツ……リヒトくんが戦うことになったとき、わたしどっちを応援したらいいのかなって考え出したら、なんかよくわかんなくなっちゃって……。」
ルナの口からは、大方予想通りの答えが返って来た。
どちらかを応援すると、どちらかをひいきしているように思えて心が痛む、と言ったところか。
俺としては、勝ち負け以上にリヒトとは単純にいい勝負ができればと思っているし、リヒトも恐らく同じではないかと思う。
なので、ルナにはもっと気楽に考えてほしいところだが……とは言え、それはあくまでこちらの都合であって、ルナの気持ちはまた別だ。
とりあえずこちらの都合は横に置いといて、まずルナの気持ちを汲みとった上で言葉をかけてやらなきゃいけない。
結局のところ、ルナはどっちを応援すべきか決められずに悩んでいる。
ならば、必要なのはそれに対する折衷案だ。
「ルナはどっちを応援すべきか決められずに悩んでいるんだよな。……だったらこういうのはどうだ?『その時劣勢に見える方を応援する』。こういう風に自分の中に何となく正しいって思えるようなルールを決めちまえば、すっきりしないか?」
人間の本質的な心情として、劣勢の方を応援したくなるというのは、恐らく誰にでもある感情だ。
そこに根拠はなくとも、なぜか人はそれを正しいことだと考える。
「……なるほど、なんかよくわかんないけど、たしかにそう考えるとすっきりします。……片方だけ応援してるようで、実はちゃんと両方応援してるみたいな。」
ルナの表現は少し独特で、俺には理解しかねる部分はあったが、伝えたかったことはしっかりと伝わったように思える。
「それならよかった。……実はこれ、幼い頃に聞いたリーシェの受け売りなんだよ。『自分が正しいと信じられることを、自分の中にルールとして定め、それに従って行動すれば決して迷わない』ってな。……まあ実際はもっと子供らしい辿々しい説明だったが──」
「──ただ、とんでもねーのは10歳にも満たない子供がこれを言ったってことだよ。……幼い頃から、リーシェは『正しい』ことをする子供でな。ガキの俺には随分と頼もしく見えたもんだ。」
「……子供の頃、ガイストさんはその、リーシェちゃんの──」
言いかけてちらっと風呂場の方を横目に見るルナ。
お湯を流す音がざばぁと聞こえてから、ルナは続きを口にする。
「──リーシェちゃんの、そういうとこに惹かれたんですか?……いやほら、前に子供の頃リーシェちゃんのこと好きだったって……。」
「もうちょい左、いや、もうちょい上だな。」
「えーっと、この辺ですか?いや、もうちょっとこっちかな?」
「おー、そこだそこ。いいねぇ……もうちょい強めに頼んで大丈夫か?」
「はーい。……くすくす、なんかいいですね、こういうの。」
うつ伏せになった背中に、ルナに乗ってもらい足踏みマッサージをしてもらう俺。
リーシェはちょうど風呂に入っているところだ。
結局あの後の試合は、特に苦戦することもなく俺の圧勝で終わった。
初戦の相手があのエリザだったため、今年は強者揃いで大いに苦戦することを予想していたのだが……蓋を開けてみれば特にそういうわけでもなかったようだ。
もっとも、次からの試合がどうなるかはまだまだわからないので、油断は禁物だが。
「ところでルナ、今日リヒトの試合中いやに大人しかったが、何か気になることでもあったのか?」
「……気になるって言うか、えーと、なんて言うか、……。」
やはり言いにくいか。
言いにくいなら無理して言わなくても……と、まさに俺が言いかけたところだった。
ルナが再び口を開く。
「……決勝戦でガイストさんとナツ……リヒトくんが戦うことになったとき、わたしどっちを応援したらいいのかなって考え出したら、なんかよくわかんなくなっちゃって……。」
ルナの口からは、大方予想通りの答えが返って来た。
どちらかを応援すると、どちらかをひいきしているように思えて心が痛む、と言ったところか。
俺としては、勝ち負け以上にリヒトとは単純にいい勝負ができればと思っているし、リヒトも恐らく同じではないかと思う。
なので、ルナにはもっと気楽に考えてほしいところだが……とは言え、それはあくまでこちらの都合であって、ルナの気持ちはまた別だ。
とりあえずこちらの都合は横に置いといて、まずルナの気持ちを汲みとった上で言葉をかけてやらなきゃいけない。
結局のところ、ルナはどっちを応援すべきか決められずに悩んでいる。
ならば、必要なのはそれに対する折衷案だ。
「ルナはどっちを応援すべきか決められずに悩んでいるんだよな。……だったらこういうのはどうだ?『その時劣勢に見える方を応援する』。こういう風に自分の中に何となく正しいって思えるようなルールを決めちまえば、すっきりしないか?」
人間の本質的な心情として、劣勢の方を応援したくなるというのは、恐らく誰にでもある感情だ。
そこに根拠はなくとも、なぜか人はそれを正しいことだと考える。
「……なるほど、なんかよくわかんないけど、たしかにそう考えるとすっきりします。……片方だけ応援してるようで、実はちゃんと両方応援してるみたいな。」
ルナの表現は少し独特で、俺には理解しかねる部分はあったが、伝えたかったことはしっかりと伝わったように思える。
「それならよかった。……実はこれ、幼い頃に聞いたリーシェの受け売りなんだよ。『自分が正しいと信じられることを、自分の中にルールとして定め、それに従って行動すれば決して迷わない』ってな。……まあ実際はもっと子供らしい辿々しい説明だったが──」
「──ただ、とんでもねーのは10歳にも満たない子供がこれを言ったってことだよ。……幼い頃から、リーシェは『正しい』ことをする子供でな。ガキの俺には随分と頼もしく見えたもんだ。」
「……子供の頃、ガイストさんはその、リーシェちゃんの──」
言いかけてちらっと風呂場の方を横目に見るルナ。
お湯を流す音がざばぁと聞こえてから、ルナは続きを口にする。
「──リーシェちゃんの、そういうとこに惹かれたんですか?……いやほら、前に子供の頃リーシェちゃんのこと好きだったって……。」
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コメント
さんじゅーすい
勉強って強制されるとなかなかやる気出ないんですよねぇ(´・ω・`)
気持ちはわかります笑
美浜
いや~良いこと言うな。
私は宿題はやんなくてもいいと信じているので、夏休みの宿題は後回し!