引きこもり14歳女子の異世界デビュー ─変わり者いじめられっ子の人リスタート─
30話 「技」が支配する空間
ハーデスは距離を詰め、リヒトに向かって大剣を振り下ろす。
が、リヒトは回避する素振りを全く見せない。
……まさか、あの攻撃を正面から受ける気か?
回避しても厄介な攻撃とは言え、ガードするよりはよほどマシなはず。
それを敢えて受けようというのか?
俺にはリヒトの考えが全く読めなかった。
観客席の誰もが、先ほどの地震を予測し、近くの手すりやら何やらに半ば反射的に掴まったことだろう。
俺たちも例外じゃなかった。
だが、予測された揺れは起こらなかった。
にわかには信じがたい光景だったが、リヒトの剣は、あの大剣をいとも容易く受け流したのだ。
あの、魔法によって重量を大きく増加させているであろうハーデスの大剣を、だ。
垂直に振り下ろされた大剣は、リヒトの剣さばきによって大きくその軌道を変えられてしまう。
まるで、その剣の切っ先によって膨大な力の流れを完全にコントロールしているかのような、楽団の指揮者を思わせるかのような、優雅ささえ感じさせる鮮やかな動き。
そこに「力」は一切感じられない。
ただ、「技」によって「力」を完全に支配する空間が、リヒトによって形成されていた。
予想外の方向へ弾かれた大剣に引っ張られるように、大きく体勢を崩してしまうハーデス。
瞬間。
リヒトがハーデスの後方に回り込み、目にも止まらぬ速さで水平に剣を振り、ハーデスを切りつけた。
急所に的確な一撃を受け、ハーデスの巨体はは音を立てて倒れた。
審判がリヒトの勝利を宣言し、観客席は大きな歓声に包まれる。
勝負あったようだ。
「……剣術の天才ってのは、全く誇張でも何でもないみたいだな。単純な力押しは一切通用しねーってことか。」
「……そうみたいね。リヒトさん、確かに噂通りの実力者だわ。」
俺も、どちらかと言わずともハーデスのように力押しで攻めるタイプだ。
だが、俺よりも数倍上のパワーを持っているように見えたハーデスは、リヒトの剣術の前に為す術もなく敗れた。
少なくとも、力だけの攻撃はリヒトには全く通用しないことはわかった。
それは大きな収穫と言える。
ではどうするか?
ここにきて付け焼き刃の剣術勝負に持ち込むなんて馬鹿げたことはしない。
力押しの勝負は避けるべきだが、リヒトの得意分野において、同じ土俵での勝負を仕掛けることはもっと避けるべきだろう。
となると、残る要素は1つ。
闘いにおいては、「心」「技」「体」の三要素があると昔からよく言われている。
「体」を「力」と読みかえるならば、「力」も「技」もだめだ。
ならば、残る「心」を主軸にして戦うというのはどうか。
すなわち、マーヤ直伝のあのイメージの刃だ。
果たしてそれがリヒトに通用するのかどうか。
また、リヒトとの戦いの中で俺はどれだけ成長できるのか。
今から楽しみに思えて仕方がない。
……ここからの勝負、決勝まで絶対に負けられねーな。
だからリヒトも、約束通り絶対に勝ち上がって来いよ。
「……。」
ふと見ると、ルナが黙ったまま少し複雑な表情で闘技場を見ている。
実際にリヒトの強さを目の当たりにして、さらに内心複雑と言ったところか。
考えてることは何となくわかるが……今日の夜にでも少し話しておくとするか。
が、リヒトは回避する素振りを全く見せない。
……まさか、あの攻撃を正面から受ける気か?
回避しても厄介な攻撃とは言え、ガードするよりはよほどマシなはず。
それを敢えて受けようというのか?
俺にはリヒトの考えが全く読めなかった。
観客席の誰もが、先ほどの地震を予測し、近くの手すりやら何やらに半ば反射的に掴まったことだろう。
俺たちも例外じゃなかった。
だが、予測された揺れは起こらなかった。
にわかには信じがたい光景だったが、リヒトの剣は、あの大剣をいとも容易く受け流したのだ。
あの、魔法によって重量を大きく増加させているであろうハーデスの大剣を、だ。
垂直に振り下ろされた大剣は、リヒトの剣さばきによって大きくその軌道を変えられてしまう。
まるで、その剣の切っ先によって膨大な力の流れを完全にコントロールしているかのような、楽団の指揮者を思わせるかのような、優雅ささえ感じさせる鮮やかな動き。
そこに「力」は一切感じられない。
ただ、「技」によって「力」を完全に支配する空間が、リヒトによって形成されていた。
予想外の方向へ弾かれた大剣に引っ張られるように、大きく体勢を崩してしまうハーデス。
瞬間。
リヒトがハーデスの後方に回り込み、目にも止まらぬ速さで水平に剣を振り、ハーデスを切りつけた。
急所に的確な一撃を受け、ハーデスの巨体はは音を立てて倒れた。
審判がリヒトの勝利を宣言し、観客席は大きな歓声に包まれる。
勝負あったようだ。
「……剣術の天才ってのは、全く誇張でも何でもないみたいだな。単純な力押しは一切通用しねーってことか。」
「……そうみたいね。リヒトさん、確かに噂通りの実力者だわ。」
俺も、どちらかと言わずともハーデスのように力押しで攻めるタイプだ。
だが、俺よりも数倍上のパワーを持っているように見えたハーデスは、リヒトの剣術の前に為す術もなく敗れた。
少なくとも、力だけの攻撃はリヒトには全く通用しないことはわかった。
それは大きな収穫と言える。
ではどうするか?
ここにきて付け焼き刃の剣術勝負に持ち込むなんて馬鹿げたことはしない。
力押しの勝負は避けるべきだが、リヒトの得意分野において、同じ土俵での勝負を仕掛けることはもっと避けるべきだろう。
となると、残る要素は1つ。
闘いにおいては、「心」「技」「体」の三要素があると昔からよく言われている。
「体」を「力」と読みかえるならば、「力」も「技」もだめだ。
ならば、残る「心」を主軸にして戦うというのはどうか。
すなわち、マーヤ直伝のあのイメージの刃だ。
果たしてそれがリヒトに通用するのかどうか。
また、リヒトとの戦いの中で俺はどれだけ成長できるのか。
今から楽しみに思えて仕方がない。
……ここからの勝負、決勝まで絶対に負けられねーな。
だからリヒトも、約束通り絶対に勝ち上がって来いよ。
「……。」
ふと見ると、ルナが黙ったまま少し複雑な表情で闘技場を見ている。
実際にリヒトの強さを目の当たりにして、さらに内心複雑と言ったところか。
考えてることは何となくわかるが……今日の夜にでも少し話しておくとするか。
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