引きこもり14歳女子の異世界デビュー ─変わり者いじめられっ子の人リスタート─
29話 珍しく冴えてるルナさん
試合開始とともに、ハーデスが自身の周囲に力場を展開する。
あいつあの図体で魔法使うのかよ。
それを見たリヒトが発動を阻止すべく、一気に間合いを詰め切りつけようとしたのだが──
ハーデスは力場を維持したまま大剣を横になぎ払い、リヒトの攻撃を阻止した。
力場の展開中に余計なことをすれば、普通は集中が途切れて力場を維持できないはずなんだが……とんでもねーな。
あとあのハーデスの武器。あれは大剣というよりもはや鋼鉄の板か?
明らかに鈍器としての用途に特化しているとしか思えないデザイン。
剣術大会としてそれはどうなんだって話だが、こうやって出場してる以上ルール上は特に問題ないんだろう。
ハーデスは横に薙いだ大剣を天高く掲げ、観客席まで聞こえる程の馬鹿でかい雄叫びとともに、そのままリヒト目がけて勢いよく振り下ろした。
それと同時に消える力場。
何らかの魔法が発動したことは確かなはずだが、見る限りは何の変化もない。
そう、変化は発動の瞬間ではなく、その次の瞬間に起こったのだ。
振り下ろされたハーデスの大剣が地面に叩きつけられた瞬間、耳をつんざくような轟音とともに、地震でも起こったかのように闘技場全体が揺れた。
観客席は一時騒然となる。
リヒトは……体勢を崩していたようだが、何とか回避したようだ。
もし食らってたら、確実に勝負あっただろう。
そしてハーデスは再び大剣を持ち上げ構えると、またも自分の周囲に力場を形成する。
「なあ、今のは一体何の魔法使ったんだろうな?強化魔法か何かか?それにしても、明らかに尋常じゃねー威力だが。」
「……わからないわ。攻撃魔法は禁止されているから地震を起こすような魔法は使えないはずだし……となると強化魔法ぐらいしか……。うーん。」
マーヤぐらいの使い手ならともかく、普通は強化魔法で上げられる能力はそれほど大したものではない。
また仮に、万一ハーデスがその普通でない強化魔法の使い手だったとしても、大剣を振り回しながら、あんな短時間でいとも簡単に発動することなど不可能なはずだ。
非常に複雑な構造の人間の体を、人並み外れた能力にしてしまうような強化魔法というのはとても難しいものらしく、マーヤですら、発動には深い集中とそれなりの時間を要する。
リーシェも俺も、それがわかっているから納得がいかない。
しかしここで、考え込んでいたルナが口を開く。
「あくまで予想なんですけど──」
「──あれって、あの鉄板みたいな剣にかかる重力を振り下ろす間だけ思いっきり増やしてるんじゃないですか?……さっきエリザさんが、自分にかかる重力を減らす魔法があるって言ってたし、逆もあるんじゃないかな……って。」
「……なるほど、武器の重さだけを増やしてるわけか。確かに、それなら十分にあり得る話だな。」
ルナの予想が正しければ、驚異となるのは武器である大剣のみであると言うこと。
更に、重くなっているのは振り下ろす間の短い時間だけ。
実際、攻撃後ハーデスは大剣を軽々と持ち上げていた。
つまり、そこに付け入る隙があると言える。
あのハーデスの武器は振りが大きく、ある程度距離を取っていないと真価を発揮できないように見える。
俺なら、何とか隙を突いて懐に飛び込んでしまうだろうか。
それも少々分の悪い賭けだろうが……。
今の俺なら、大気の流れを読んであの攻撃そのものを回避することは容易い。
だが問題はそのすぐ後に来る地震だ。
これだけ離れた観客席ですら、あそこまで揺れるのだ。
真近くだと足元のバランスを崩してしまい、恐らく反撃どころではないだろう。
最悪、転倒したところにトドメを刺され、試合終了だ。
ならば、そもそも大振りな攻撃自体をさせないために懐に飛び込んでしまえ、というわけだ。
色々と考えていると、リヒトとハーデスが何やら話を始めた様子。
案の定ここからでは何も聞こえないが……。
見ていると、リヒトが剣の先でハーデスを指して何やら言っている。
それを聞いたハーデスが大声を上げて大剣を構える。
リヒトのやつ、ハーデスを挑発しやがったな。
ハーデスも見た目通り短気なようで、あっさりと誘いに乗ったようだ。
わざわざ攻撃を誘うからには、リヒトには何か策があるってことなんだろうが、一体……。
あいつあの図体で魔法使うのかよ。
それを見たリヒトが発動を阻止すべく、一気に間合いを詰め切りつけようとしたのだが──
ハーデスは力場を維持したまま大剣を横になぎ払い、リヒトの攻撃を阻止した。
力場の展開中に余計なことをすれば、普通は集中が途切れて力場を維持できないはずなんだが……とんでもねーな。
あとあのハーデスの武器。あれは大剣というよりもはや鋼鉄の板か?
明らかに鈍器としての用途に特化しているとしか思えないデザイン。
剣術大会としてそれはどうなんだって話だが、こうやって出場してる以上ルール上は特に問題ないんだろう。
ハーデスは横に薙いだ大剣を天高く掲げ、観客席まで聞こえる程の馬鹿でかい雄叫びとともに、そのままリヒト目がけて勢いよく振り下ろした。
それと同時に消える力場。
何らかの魔法が発動したことは確かなはずだが、見る限りは何の変化もない。
そう、変化は発動の瞬間ではなく、その次の瞬間に起こったのだ。
振り下ろされたハーデスの大剣が地面に叩きつけられた瞬間、耳をつんざくような轟音とともに、地震でも起こったかのように闘技場全体が揺れた。
観客席は一時騒然となる。
リヒトは……体勢を崩していたようだが、何とか回避したようだ。
もし食らってたら、確実に勝負あっただろう。
そしてハーデスは再び大剣を持ち上げ構えると、またも自分の周囲に力場を形成する。
「なあ、今のは一体何の魔法使ったんだろうな?強化魔法か何かか?それにしても、明らかに尋常じゃねー威力だが。」
「……わからないわ。攻撃魔法は禁止されているから地震を起こすような魔法は使えないはずだし……となると強化魔法ぐらいしか……。うーん。」
マーヤぐらいの使い手ならともかく、普通は強化魔法で上げられる能力はそれほど大したものではない。
また仮に、万一ハーデスがその普通でない強化魔法の使い手だったとしても、大剣を振り回しながら、あんな短時間でいとも簡単に発動することなど不可能なはずだ。
非常に複雑な構造の人間の体を、人並み外れた能力にしてしまうような強化魔法というのはとても難しいものらしく、マーヤですら、発動には深い集中とそれなりの時間を要する。
リーシェも俺も、それがわかっているから納得がいかない。
しかしここで、考え込んでいたルナが口を開く。
「あくまで予想なんですけど──」
「──あれって、あの鉄板みたいな剣にかかる重力を振り下ろす間だけ思いっきり増やしてるんじゃないですか?……さっきエリザさんが、自分にかかる重力を減らす魔法があるって言ってたし、逆もあるんじゃないかな……って。」
「……なるほど、武器の重さだけを増やしてるわけか。確かに、それなら十分にあり得る話だな。」
ルナの予想が正しければ、驚異となるのは武器である大剣のみであると言うこと。
更に、重くなっているのは振り下ろす間の短い時間だけ。
実際、攻撃後ハーデスは大剣を軽々と持ち上げていた。
つまり、そこに付け入る隙があると言える。
あのハーデスの武器は振りが大きく、ある程度距離を取っていないと真価を発揮できないように見える。
俺なら、何とか隙を突いて懐に飛び込んでしまうだろうか。
それも少々分の悪い賭けだろうが……。
今の俺なら、大気の流れを読んであの攻撃そのものを回避することは容易い。
だが問題はそのすぐ後に来る地震だ。
これだけ離れた観客席ですら、あそこまで揺れるのだ。
真近くだと足元のバランスを崩してしまい、恐らく反撃どころではないだろう。
最悪、転倒したところにトドメを刺され、試合終了だ。
ならば、そもそも大振りな攻撃自体をさせないために懐に飛び込んでしまえ、というわけだ。
色々と考えていると、リヒトとハーデスが何やら話を始めた様子。
案の定ここからでは何も聞こえないが……。
見ていると、リヒトが剣の先でハーデスを指して何やら言っている。
それを聞いたハーデスが大声を上げて大剣を構える。
リヒトのやつ、ハーデスを挑発しやがったな。
ハーデスも見た目通り短気なようで、あっさりと誘いに乗ったようだ。
わざわざ攻撃を誘うからには、リヒトには何か策があるってことなんだろうが、一体……。
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1
コメント
さんじゅーすい
30話近くきてようやくという笑
美浜
あのルナが真面目なことを言っている······
明日は雷だな。