引きこもり14歳女子の異世界デビュー ─変わり者いじめられっ子の人リスタート─
25話 自由意志
そこからエリザの猛攻が始まった。
最初は急所への一撃を積極的に狙っていたようだが、俺がそれを的確にガードできることにエリザが気付いてからは、フェイントをかけての、腕や脚などへの攻撃も織り交ぜてくるようになった。
致命傷とは全くなり得ないが、幾度となく切りつけられ確実に体力を奪われていく。
傍目には俺が完全に押されていて、全く為す術もないように見えるだろう。
大会1日目初戦にして、前回優勝者を独自の戦法で圧倒。
いきなりの大番狂わせの登場に、観客席は大いに沸き立っていた。
エリザは時折空中で静止し、そんな観客席へポーズを取りつつ投げキッスをしたりしている。
そしてそれを見て、ひときわ大きい歓声が観客席から上がる。
もしや薄着はこのためでもあったのか?
大会の盛り上げ方まで熟知してるとは、すげーよあんた。
もはや流れは完全にエリザへと傾いていることは、俺にもひしひしと感じられている。
──しかし、俺は俺が負けるなどとは微塵も思ってはいない。
大多数の人間が俺が負けると思ったとしても、それと俺自身がどう思うかの間には何の因果関係も存在しないのだから。
俺が何を思うかは、他ならぬ俺自身が決めることだ。
そして俺は、心の底から俺自身の勝利を確信すると決めた。
それはただの悪あがきでも、自惚れでもない。
そうすることに意味があるから、あえてそうしている。なぜなら──
負けるかも知れない、ガードに失敗するかも知れない、そしてもし失敗したら、もし負けたら……そういった負の考え、恐怖、心配は、自分の心を内へ内へと押し込んでしまう。
そして、本来見えるはずのもの、聞こえるはずのもの、感じ取ることのできるものを、わからなくしてしまう。
そう、幼い頃絶望に心を閉ざしていた頃の俺のように。
もしまた大切な人を喪ったら……と。
だが、もしも。
もしも、その逆を行ったらどうなるか。
すなわち、感覚の異常な鈍化の逆である、感覚の異常な鋭化。
本来見えないはずのものを心で観て、本来感じ取れないほどの微弱な変化をも感じ取る。
マーヤとの稽古の中で、俺はその片鱗を掴んでいた。
しかし完成には至らなかった。
それが今、このエリザとの戦いの中で、全身を切りつけられた極限の中で、確かに目覚めたのだ。
「あなたのその目。全然諦めてないね。むしろ切り刻まれるほどにどんどん輝いてきてるみたい……すっごくゾクゾクしちゃう。」
「あいにく、諦めの悪さだけが取り柄なもんでね。」
ここに来てエリザが攻撃の手を止め話しかけてきたのは、恐らくは俺の変化を感じ取ったからだろう。
その表情からは、少しばかりの警戒心が読み取れる。
「あたし、諦めの悪い男って大好き。付き合っちゃう?」
「悪いな、あんたは相当にいい女だとは思うが、俺はもうちょっと肉付きの良い女が好みなんだ。」
エリザの冗談に、俺も冗談で返す。
本気で剣を交えたからか、初対面で大した時間も経っていないのにとても自然に話せてしまう。
「あははは、ざんねーん。……じゃ、そろそろ終わらせちゃうよ?なんかやな予感するから、もう次で決めちゃうね。」
「勘のいい女は好きだぜ。……俺も次で終わらせるつもりだよ。どっちが勝っても負けても恨みっこなしだぜ。」
俺は防御を完全に捨て、剣を下段に構え、全力でエリザを迎撃する体勢に入った。
最初は急所への一撃を積極的に狙っていたようだが、俺がそれを的確にガードできることにエリザが気付いてからは、フェイントをかけての、腕や脚などへの攻撃も織り交ぜてくるようになった。
致命傷とは全くなり得ないが、幾度となく切りつけられ確実に体力を奪われていく。
傍目には俺が完全に押されていて、全く為す術もないように見えるだろう。
大会1日目初戦にして、前回優勝者を独自の戦法で圧倒。
いきなりの大番狂わせの登場に、観客席は大いに沸き立っていた。
エリザは時折空中で静止し、そんな観客席へポーズを取りつつ投げキッスをしたりしている。
そしてそれを見て、ひときわ大きい歓声が観客席から上がる。
もしや薄着はこのためでもあったのか?
大会の盛り上げ方まで熟知してるとは、すげーよあんた。
もはや流れは完全にエリザへと傾いていることは、俺にもひしひしと感じられている。
──しかし、俺は俺が負けるなどとは微塵も思ってはいない。
大多数の人間が俺が負けると思ったとしても、それと俺自身がどう思うかの間には何の因果関係も存在しないのだから。
俺が何を思うかは、他ならぬ俺自身が決めることだ。
そして俺は、心の底から俺自身の勝利を確信すると決めた。
それはただの悪あがきでも、自惚れでもない。
そうすることに意味があるから、あえてそうしている。なぜなら──
負けるかも知れない、ガードに失敗するかも知れない、そしてもし失敗したら、もし負けたら……そういった負の考え、恐怖、心配は、自分の心を内へ内へと押し込んでしまう。
そして、本来見えるはずのもの、聞こえるはずのもの、感じ取ることのできるものを、わからなくしてしまう。
そう、幼い頃絶望に心を閉ざしていた頃の俺のように。
もしまた大切な人を喪ったら……と。
だが、もしも。
もしも、その逆を行ったらどうなるか。
すなわち、感覚の異常な鈍化の逆である、感覚の異常な鋭化。
本来見えないはずのものを心で観て、本来感じ取れないほどの微弱な変化をも感じ取る。
マーヤとの稽古の中で、俺はその片鱗を掴んでいた。
しかし完成には至らなかった。
それが今、このエリザとの戦いの中で、全身を切りつけられた極限の中で、確かに目覚めたのだ。
「あなたのその目。全然諦めてないね。むしろ切り刻まれるほどにどんどん輝いてきてるみたい……すっごくゾクゾクしちゃう。」
「あいにく、諦めの悪さだけが取り柄なもんでね。」
ここに来てエリザが攻撃の手を止め話しかけてきたのは、恐らくは俺の変化を感じ取ったからだろう。
その表情からは、少しばかりの警戒心が読み取れる。
「あたし、諦めの悪い男って大好き。付き合っちゃう?」
「悪いな、あんたは相当にいい女だとは思うが、俺はもうちょっと肉付きの良い女が好みなんだ。」
エリザの冗談に、俺も冗談で返す。
本気で剣を交えたからか、初対面で大した時間も経っていないのにとても自然に話せてしまう。
「あははは、ざんねーん。……じゃ、そろそろ終わらせちゃうよ?なんかやな予感するから、もう次で決めちゃうね。」
「勘のいい女は好きだぜ。……俺も次で終わらせるつもりだよ。どっちが勝っても負けても恨みっこなしだぜ。」
俺は防御を完全に捨て、剣を下段に構え、全力でエリザを迎撃する体勢に入った。
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