引きこもり14歳女子の異世界デビュー ─変わり者いじめられっ子の人リスタート─

さんじゅーすい

7話 魔法学校の修了生リーシェ

「どこに仕舞ったかなぁ……あ、あったあった。……じゃーん!」

「リーシェちゃん、それは……?えっと、都立南区第1魔法学校訓練課、短期基礎魔法訓練課程……修了証書!?リーシェちゃん、魔法学校の卒業生だったんですか!?」

「ううん、正規に入学した卒業生って訳じゃなくて……魔法学校には就職支援の一環として、魔法を学びたい人向けにこういう外部の人向けの軽い内容の訓練課程が設けられているのよ。私はそれの修了生ってわけ。」

感心したように修了証書を見ながら頷くルナちゃん。
ガイストが連れて来たときの泣きそうな顔が今や嘘のように、いつものルナちゃんらしさを取り戻して一安心と言ったところ。

当のガイストは事情を話した後、「ルナを笑顔に出来るのはリーシェしかいない。この子に涙は似合わないぜ。」なんて何故かかっこつけたこと言って、そのまま魔物狩りに出掛けて行ってしまった。
あなた、なんかいつもと少しキャラ違くないですか?
でもルナちゃんに涙が似合わないってとこには同意する。全力で同意する。

まあ、今回ばかりは大の魔法嫌いのガイストには管轄外と言ったところだし、マーヤ様はハイレベルすぎてガイストとは逆の意味で管轄外だし、残る私に白羽の矢が立ったのは必然とも言えるけれど。
ただ、ルナちゃんのやる気が本物なら、もっと良い方法は世の中には存在するはずなんだ。

「ねぇ、もしルナちゃんが本気で魔法を学びたいなら、私なんかに教わるより、私と同じように魔法学校の訓練課程に応募するのも──」

「あーわたし、学校はちょっとあれなんですよー。あんまりいい思い出なくって。」

「いやほらわたし、割と変人なとこあるじゃないですか。だから集団生活とか、いろいろとアレなことなっちゃったりすることがあって。この村でちゃんとやってけてるのがむしろ異常って言うか。」

「うーん、確かにちょっと変わったところはあるかもだけれど……でもルナちゃんとっても性格のいい子だから別に変なことにはならないと思うんだけどなぁ……。でもまあ、ルナちゃんがそう言ってくれるのなら、私がんばって教えるね!」

少しはぐらかしてはいるものの、ルナちゃんが危惧する内容についてはおおよそ察しがつく。
きっと、元の世界で色々つらいことがあったんだって思う。

でも私は確信できる。こんな真っ直ぐでいい子を、ただ変わってるってだけの理由で排除しようとする世界なら、それはきっとルナちゃんじゃなくって世界の方が間違ってる。

そしてそんな過去を越え、今ここに、この世界にルナちゃんは来てくれた。
ならそれが必然であっても偶然であっても、私はそんなルナちゃんのつらい過去や記憶を、すこしでも癒してあげたいって思う。

ルナちゃんが興味を持った魔法を教えること、それが少しでも、そのための助けになれば。

「ルナちゃん。魔法はね、最初のきっかけさえ掴めれば、使うこと自体はそんなに難しいことじゃないの。今からそれを証明して見せるわね。」

そう言って私は目線を目標へと定め、両手の指に意識を集中した。


目標はそう……他ならぬルナちゃんの脇腹だ。

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