引きこもり14歳女子の異世界デビュー ─変わり者いじめられっ子の人リスタート─
0話 引きこもり留奈さん(14)の華麗な生活
「さすがに限界かな……。また、そろそろお風呂入らないと。」
脂で硬くまとまった、ごわごわした髪の毛を、指でくしゃっとやりながらわたしは独り呟いた。
学校でのいじめが原因で、引きこもり生活を初めてはや3ヶ月。
わたしも14歳の年頃の女子な訳だから、当然毎日お風呂には入りたい。
おしゃれして出掛けたい。
そしてそして、欲を言えば恋だってしたい。光月留奈14歳、イケメン彼氏絶賛大募集中です。……いやいや、それはさすがに欲張りすぎか。ごめんなさい調子乗りました。
でも、部屋から出ることへの恐怖は、そんなこんなの欲求を軽々しく上回っているわけで、結果としてこの惨状なわけである。
でも信じて欲しい。わたしは断じて不潔な女子なのではなく、不可抗力からこうなってしまっているだけなのだと。
って、わたしは誰に言い訳をしているのか。
いやいや、自分自身への言い訳だろうとセルフですかさずツッコミを入れる。
ひとりノリツッコミでほんの少しだけ上がったわたしのテンションも、現実の重みに耐えきれずあっという間にもとの状態に戻ってしまう。
本当に、何でこんなことになってしまったのだろう。
いじめって本当に下らない言い掛かりから始まって、あっという間に集団に広まって、一度広まったらもう終わり。
集団心理が働いたらもう誰にも止められやしない。
学校って何なんだろうね。生存競争を学ぶ場なの?場合によっちゃ死人だって出るわけだから、むしろデスゲーム?なんか呪いのやつの蠱毒とかいう、あれの人間版?血迷ってダブルクリックするとパソコンの画面がえらいことになりそうな蠱毒.EXE?みたいな?
まあ建前上は勉強するための施設なんだけどね。
若者は苦しんでこそだぞみたいな、昔のなんかすっごい人が言ったらしい現実はよく学習出来た気はするよ。
いらないけどねそんな学習内容。そういうのは思春期に学んじゃダメなカリキュラムだと思うわけよ。リアル真剣な十代としてはさ。
まあともかくお風呂入ろう、お風呂。
もう家族も寝てるはずだし。
「はぁー、生き返るわぁー……。たまんないねーこれ。ほんとやばい。」
忍び足で脱衣所に侵入し、光の速さで服を脱ぎ捨て、かけ湯のあと湯船に浸かったわたしは、予想外の心地よさに思わず歓喜の声を上げた。
日付及び曜日感覚がもはや跡形もなく消滅しているから、いつ以来かははっきりわからないけど、最低でも一週間は入ってなかったと思う。我ながらやばいな自分。
でもまあここでしっかり洗っとけばそんな過去は全て水に流して、玉の肌のぴちぴちの女子中学生に再びわたしは返り咲くことが出来る。光月留奈14歳、イケメン彼r(以下略
ではまず頭からだ。ここまでずっと秘密にしていたけれど、わたしは上から下に洗う派なのだ。
そんなわけで、わたしは盛大にざばぁと音を立てて湯船から立ち上がり、豪快に大股開きでイスに座ると、おもむろにシャンプーへと手を伸ばした。
「あぁー、さっぱりした。髪めっちゃサラサラだわ、やばいこれ。ほんとやっばい。」
全身をくまなく洗い終え、お風呂から上がったわたしは下着姿で背中をぼりぼり掻きながら、2階の自分の部屋へと向かっていた。
男性諸君、男の目の届かない所では、女なんて大体こんなもんだ。幻想なんて抱かないように。
部屋に戻ったわたしは服を着ようと思ったわけだけど、困ったことに洗濯済みの服がないことに気付いてしまった。
誤解の無いように言っておくと、今つけてる下着はちゃんと洗濯済みのものだから安心して欲しい。
一部の人にとっては残念なお知らせなのかも知れないが。
「これは、まだ生きてるか……?」
試しにまだマシそうな服を拾い上げて匂いを嗅いでみるが、独特の臭気が鼻を刺し、思わずわたしは咳き込んでしまう。
「うぅ……こいつはもうダメだ。毒属性に冒されてしまっている。」
他もいくつか当たってみたが、全て全滅。
我が軍の兵力は底をついてしまったようだ。
そしてこの状況は非常にまずい。年頃の女子がやっていい行為ではない。早く何とかしなければ。
「いや待った、まだあれがあった。そう、あれがあるじゃないか……!」
まさに絶望的状況に駆けつけた援軍。それは学校の制服である。
少々堅苦しいものの、洗濯済みでサイズもぴったり。非常時の服としては申し分ない。
わたしは久方ぶりに、学校の制服をその身に纏う。
ここ最近、部屋着は大体ずっとジャージだったからスカートにやや違和感を感じるものの、これはこれでなぜか新鮮な気分にもなってくるものがある。
鏡を見ると、当然のことながら制服を着たわたしの姿があった。
引きこもって以来鏡を見るのを避ける傾向があったが、こうして見てみるとまだまだ全然いけるぞわたし。
洗い立てで髪もきれいだし、制服姿も決まってる。
久しぶりにわくわくした気分になったわたしだけれど、でもやっぱりそれで現実が変わるわけでもない。
「あーあ……ここじゃないどっかに、誰か連れてってくれないかなぁ。」
どさっとベッドに寝そべりながら、わたしは何となくそんなことを口にしていた。
引きこもってから、また少しゲームをやるようになった。
剣と魔法、勇者と魔王、オーソドックスだけど、そんなファンタジーの世界観がわたしは昔から大好きだった。
もしもそんな世界に行けたなら……。
そんなことを妄想しながら、わたしは深い、深い眠りへとついた。
脂で硬くまとまった、ごわごわした髪の毛を、指でくしゃっとやりながらわたしは独り呟いた。
学校でのいじめが原因で、引きこもり生活を初めてはや3ヶ月。
わたしも14歳の年頃の女子な訳だから、当然毎日お風呂には入りたい。
おしゃれして出掛けたい。
そしてそして、欲を言えば恋だってしたい。光月留奈14歳、イケメン彼氏絶賛大募集中です。……いやいや、それはさすがに欲張りすぎか。ごめんなさい調子乗りました。
でも、部屋から出ることへの恐怖は、そんなこんなの欲求を軽々しく上回っているわけで、結果としてこの惨状なわけである。
でも信じて欲しい。わたしは断じて不潔な女子なのではなく、不可抗力からこうなってしまっているだけなのだと。
って、わたしは誰に言い訳をしているのか。
いやいや、自分自身への言い訳だろうとセルフですかさずツッコミを入れる。
ひとりノリツッコミでほんの少しだけ上がったわたしのテンションも、現実の重みに耐えきれずあっという間にもとの状態に戻ってしまう。
本当に、何でこんなことになってしまったのだろう。
いじめって本当に下らない言い掛かりから始まって、あっという間に集団に広まって、一度広まったらもう終わり。
集団心理が働いたらもう誰にも止められやしない。
学校って何なんだろうね。生存競争を学ぶ場なの?場合によっちゃ死人だって出るわけだから、むしろデスゲーム?なんか呪いのやつの蠱毒とかいう、あれの人間版?血迷ってダブルクリックするとパソコンの画面がえらいことになりそうな蠱毒.EXE?みたいな?
まあ建前上は勉強するための施設なんだけどね。
若者は苦しんでこそだぞみたいな、昔のなんかすっごい人が言ったらしい現実はよく学習出来た気はするよ。
いらないけどねそんな学習内容。そういうのは思春期に学んじゃダメなカリキュラムだと思うわけよ。リアル真剣な十代としてはさ。
まあともかくお風呂入ろう、お風呂。
もう家族も寝てるはずだし。
「はぁー、生き返るわぁー……。たまんないねーこれ。ほんとやばい。」
忍び足で脱衣所に侵入し、光の速さで服を脱ぎ捨て、かけ湯のあと湯船に浸かったわたしは、予想外の心地よさに思わず歓喜の声を上げた。
日付及び曜日感覚がもはや跡形もなく消滅しているから、いつ以来かははっきりわからないけど、最低でも一週間は入ってなかったと思う。我ながらやばいな自分。
でもまあここでしっかり洗っとけばそんな過去は全て水に流して、玉の肌のぴちぴちの女子中学生に再びわたしは返り咲くことが出来る。光月留奈14歳、イケメン彼r(以下略
ではまず頭からだ。ここまでずっと秘密にしていたけれど、わたしは上から下に洗う派なのだ。
そんなわけで、わたしは盛大にざばぁと音を立てて湯船から立ち上がり、豪快に大股開きでイスに座ると、おもむろにシャンプーへと手を伸ばした。
「あぁー、さっぱりした。髪めっちゃサラサラだわ、やばいこれ。ほんとやっばい。」
全身をくまなく洗い終え、お風呂から上がったわたしは下着姿で背中をぼりぼり掻きながら、2階の自分の部屋へと向かっていた。
男性諸君、男の目の届かない所では、女なんて大体こんなもんだ。幻想なんて抱かないように。
部屋に戻ったわたしは服を着ようと思ったわけだけど、困ったことに洗濯済みの服がないことに気付いてしまった。
誤解の無いように言っておくと、今つけてる下着はちゃんと洗濯済みのものだから安心して欲しい。
一部の人にとっては残念なお知らせなのかも知れないが。
「これは、まだ生きてるか……?」
試しにまだマシそうな服を拾い上げて匂いを嗅いでみるが、独特の臭気が鼻を刺し、思わずわたしは咳き込んでしまう。
「うぅ……こいつはもうダメだ。毒属性に冒されてしまっている。」
他もいくつか当たってみたが、全て全滅。
我が軍の兵力は底をついてしまったようだ。
そしてこの状況は非常にまずい。年頃の女子がやっていい行為ではない。早く何とかしなければ。
「いや待った、まだあれがあった。そう、あれがあるじゃないか……!」
まさに絶望的状況に駆けつけた援軍。それは学校の制服である。
少々堅苦しいものの、洗濯済みでサイズもぴったり。非常時の服としては申し分ない。
わたしは久方ぶりに、学校の制服をその身に纏う。
ここ最近、部屋着は大体ずっとジャージだったからスカートにやや違和感を感じるものの、これはこれでなぜか新鮮な気分にもなってくるものがある。
鏡を見ると、当然のことながら制服を着たわたしの姿があった。
引きこもって以来鏡を見るのを避ける傾向があったが、こうして見てみるとまだまだ全然いけるぞわたし。
洗い立てで髪もきれいだし、制服姿も決まってる。
久しぶりにわくわくした気分になったわたしだけれど、でもやっぱりそれで現実が変わるわけでもない。
「あーあ……ここじゃないどっかに、誰か連れてってくれないかなぁ。」
どさっとベッドに寝そべりながら、わたしは何となくそんなことを口にしていた。
引きこもってから、また少しゲームをやるようになった。
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