令嬢は呪術師 〜愛しき名に精霊は宿る〜
81.終章②
もっと会話の余韻を楽しんでいたかったのに、「あっロギさんとメリチェルだ!」と、ほかの生徒に見つかってしまった。
カロア様に人の姿を与えた人物として、メリチェルは一日にして学院の有名人になってしまった。精霊がみなそうなのか、カロア様だけがそうなのかわからないのだが、カロア様は姿を与えた人物が死ぬまで、おなじ姿で人間の前へ出てくるのだそうだ。
ロギの読んだ文献によると、姿が変わると人格も変わるらしい。
「カロア」という名と「カロア川の精霊」という属性はそのままに、勇猛果敢な戦士だったり慈悲深い聖女だったり溌剌とした少年だったり、その姿なりの人格を持って現れる。
精霊とは、なんて不思議なのかしらとメリチェルは思った。
「あいつらは俺が相手する。おまえは囲まれる前に、さっさとレオニードのとこ行け。試験がんばれよ! ベルタが祝いの準備はりきってるぞ!」
「残念会にならないようにがんばるわ。ありがとう!」
階段の前でふりかえると、ロギがわらわら寄ってくる生徒たち相手に奮闘している。「メリチェルは試験だからそっとしといてやってくれ」と、懇願する声が聞こえた。
ロギはこうやって、いつもメリチェルの日常を守ってくれる。
くじらちゃんを見つけてくれたり、心配や騒々しさから遠ざけてくれたり。
遠くからロギを見ていたら、じんわりとメリチェルの胸が熱くなった。
(ロギが好き。大好き)
たぶん、ロギにとって自分は妹みたいなもので、守ってあげたくなるだけの存在なのだろうけれど。
それでもいいと、メリチェルは思った。
「メリチェルがんばれよー!」
「受かれよー!」
「水、動かなかったら呪術で動かしちまえ!」
「……それ駄目なんだって」
ロギから試験のことをきいた生徒が、大声でメリチェルに激励の言葉を送ってくれる。
誰からも無視されていたのに、こんな日が来るなんて思わなかった。
いい流れがきている。メリチェルはそう感じた。試験だって、きっと受かる。
メリチェルは声をかけてくれた生徒たちに笑顔で手をふってから、きりりと顔を上げて主幹教諭室めざして階段を上って行った。
カロア様に人の姿を与えた人物として、メリチェルは一日にして学院の有名人になってしまった。精霊がみなそうなのか、カロア様だけがそうなのかわからないのだが、カロア様は姿を与えた人物が死ぬまで、おなじ姿で人間の前へ出てくるのだそうだ。
ロギの読んだ文献によると、姿が変わると人格も変わるらしい。
「カロア」という名と「カロア川の精霊」という属性はそのままに、勇猛果敢な戦士だったり慈悲深い聖女だったり溌剌とした少年だったり、その姿なりの人格を持って現れる。
精霊とは、なんて不思議なのかしらとメリチェルは思った。
「あいつらは俺が相手する。おまえは囲まれる前に、さっさとレオニードのとこ行け。試験がんばれよ! ベルタが祝いの準備はりきってるぞ!」
「残念会にならないようにがんばるわ。ありがとう!」
階段の前でふりかえると、ロギがわらわら寄ってくる生徒たち相手に奮闘している。「メリチェルは試験だからそっとしといてやってくれ」と、懇願する声が聞こえた。
ロギはこうやって、いつもメリチェルの日常を守ってくれる。
くじらちゃんを見つけてくれたり、心配や騒々しさから遠ざけてくれたり。
遠くからロギを見ていたら、じんわりとメリチェルの胸が熱くなった。
(ロギが好き。大好き)
たぶん、ロギにとって自分は妹みたいなもので、守ってあげたくなるだけの存在なのだろうけれど。
それでもいいと、メリチェルは思った。
「メリチェルがんばれよー!」
「受かれよー!」
「水、動かなかったら呪術で動かしちまえ!」
「……それ駄目なんだって」
ロギから試験のことをきいた生徒が、大声でメリチェルに激励の言葉を送ってくれる。
誰からも無視されていたのに、こんな日が来るなんて思わなかった。
いい流れがきている。メリチェルはそう感じた。試験だって、きっと受かる。
メリチェルは声をかけてくれた生徒たちに笑顔で手をふってから、きりりと顔を上げて主幹教諭室めざして階段を上って行った。
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