令嬢は呪術師 〜愛しき名に精霊は宿る〜

サカエ

70.第四章 愛しさと、ぬくもりと⑦

「あたしが嘘ついたみたいな言いがかりつけて!」
「嘘ついたなんて言ってないわ」
「言ったも同然よ! あやまりなさいよ!」
「どうしてあやまらないといけないの?」
「あたしに恥をかかせたからよ!」
「恥をかかせたのはわたしかしら?」

 ローザでしょ。心の中でメリチェルは言った。

「あなたに決まってるでしょ! あやまりなさいよ! 赤マントが紺色に歯向かっていいと思ってるの!?」
「誰が誰に歯向かったら駄目かなんて、決められることじゃないと思うわ」
「あははは! お貴族様からその言葉が出るとは思わなかったわ! じゃあ、あたしがあなたになにやっても、お咎めなしよね?」

 ミラはつかつかとメリチェルに歩み寄ると、怒りにまかせて両手でおもいきりメリチェルの肩を押した。
「きゃ……」
 前から強い力で押され、メリチェルは石畳の上に尻もちをついた。

 ミラが、無様に倒れたメリチェルを真上から見下ろす。
 メリチェルにとっては生まれてはじめての、屈辱的な姿勢だった。

「地面に手をついてあやまりなさいよ。あたしを嘘つき呼ばわりしたこと」
「そこまで言うならはっきり言うわ。ミラの嘘つき」
「この……!」

 ミラの足が、メリチェルを蹴ろうとするかのように地面から浮いた。


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