令嬢は呪術師 〜愛しき名に精霊は宿る〜
46.第三章 くじらちゃんを探せ④
日が暮れるまで復旧作業にこき使われて、ロギがくたくたになって下宿に戻ると、メリチェルが居間でぼんやりしていた。
ベルタは夕食のしたくらしい。台所から鼻歌が聞こえる。
「どうした?」
めずらしくメリチェルが沈んでいる。
いつも笑っていて当然のように思っているので、生気のないメリチェルにはとまどってしまう。
「くじらちゃんのことを考えていたの。どこいっちゃったのかしら……」
「そんなことより、今後の身の振り方を考えたほうがいいんじゃないか? どのタイミングで『わたしがカロア川の精霊を召喚しました』って公表するつもりだ?」
「公表しないわよ。あれから一度も呼べないもの」
「どんな文言で呼んだのかくらい教えろ。俺にだけこっそりと」
「文言なんてなにも言わなかったって何度も言ったでしょ。名前を呼んだだけよ――カロア様って。カロア様、マヨルを助けてって。あのままじゃマヨルが死んじゃうって思って、必死で」
「ほんとかよ」
「カロア様はわたしの気持ちに応えてくれたんだわ。だから、わたしが想像した姿をとって出てきてくれたのよ。やさしい精霊さんね、カロア様は」
「やさしい? ひと癖ありそうな顔してたぜ」
「人はそういうほうが魅力的じゃないの」
「人じゃないだろ」
「精霊は人が理解しやすいように、人になって出てきてくれるからいいのよ、別に」
「ほかにも精霊を知ってるような口ぶりだな」
「知ってるわよ、いっぱい」
「……おまえさらっととんでもないことを」
ロギを無視して、メリチェルは窓の外を眺めた。夜なので、部屋の明かりがガラスに反射し、カロア川は見えない。
ベルタは夕食のしたくらしい。台所から鼻歌が聞こえる。
「どうした?」
めずらしくメリチェルが沈んでいる。
いつも笑っていて当然のように思っているので、生気のないメリチェルにはとまどってしまう。
「くじらちゃんのことを考えていたの。どこいっちゃったのかしら……」
「そんなことより、今後の身の振り方を考えたほうがいいんじゃないか? どのタイミングで『わたしがカロア川の精霊を召喚しました』って公表するつもりだ?」
「公表しないわよ。あれから一度も呼べないもの」
「どんな文言で呼んだのかくらい教えろ。俺にだけこっそりと」
「文言なんてなにも言わなかったって何度も言ったでしょ。名前を呼んだだけよ――カロア様って。カロア様、マヨルを助けてって。あのままじゃマヨルが死んじゃうって思って、必死で」
「ほんとかよ」
「カロア様はわたしの気持ちに応えてくれたんだわ。だから、わたしが想像した姿をとって出てきてくれたのよ。やさしい精霊さんね、カロア様は」
「やさしい? ひと癖ありそうな顔してたぜ」
「人はそういうほうが魅力的じゃないの」
「人じゃないだろ」
「精霊は人が理解しやすいように、人になって出てきてくれるからいいのよ、別に」
「ほかにも精霊を知ってるような口ぶりだな」
「知ってるわよ、いっぱい」
「……おまえさらっととんでもないことを」
ロギを無視して、メリチェルは窓の外を眺めた。夜なので、部屋の明かりがガラスに反射し、カロア川は見えない。
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