令嬢は呪術師 〜愛しき名に精霊は宿る〜
42.第二章 カロア川の精霊⑳
静寂をやぶったのは、外廊下に面した焦げ付いた扉だった。
半ば炭になった主幹教諭室の扉が、崩れ落ちるようにガタンと外れる。中からレオニードに肩を貸したマヨルが、しっかりとした足取りで出てきた。白い制服は煤で汚れているものの、レオニード共々火傷や外傷は見えない。
マヨルはふらつくレオニードを助けながら、ゆっくりと外階段を降りて来た。教師たちがふたりのもとへ駆け寄る。
ロギはじっとしていなければならないことなどすっかり忘れて立ち上がっていた。
マヨルがロギの姿に気付き、レオニードをほかの教師にまかせてつかつかと彼のところへ向かう。
「お嬢様は?」
「――え?」
「え、じゃない。メリチェル様はどこだ?」
「……わからん」
「メリチェルちゃんなら門の外に……」
おずおずとベルタが言った。その答えを聞くか聞かないかのうちに走り出そうとするマヨルの腕を、反射的にロギはつかんだ。
「おまえなんで無事なんだよ」
「悪かったな無事で。レオニード先生の防御術式のおかげだ。離せ」
ロギの腕を振り切ってマヨルは走り出す。
ロギはあんぐりと口を開けるしかなかった。
「それなら普通、お嬢様じゃなくてレオニードじぇねえの……」
ロギはレオニードのほうをふりかえった。
守り抜いた生徒に見捨てられたレオニードは、力尽きて気を失ったらしかった。ちょうどロギのために毛布が敷いてあったので、そこへ運ばれている。
ふと、不穏な気配を感じてロギはレオニードから目線を上げた。
アンゼラが、まだこの場にいた。
警備員に捕縛されたアンゼラが、抜け殻ような表情で目を閉じたレオニードを見ていた。
半ば炭になった主幹教諭室の扉が、崩れ落ちるようにガタンと外れる。中からレオニードに肩を貸したマヨルが、しっかりとした足取りで出てきた。白い制服は煤で汚れているものの、レオニード共々火傷や外傷は見えない。
マヨルはふらつくレオニードを助けながら、ゆっくりと外階段を降りて来た。教師たちがふたりのもとへ駆け寄る。
ロギはじっとしていなければならないことなどすっかり忘れて立ち上がっていた。
マヨルがロギの姿に気付き、レオニードをほかの教師にまかせてつかつかと彼のところへ向かう。
「お嬢様は?」
「――え?」
「え、じゃない。メリチェル様はどこだ?」
「……わからん」
「メリチェルちゃんなら門の外に……」
おずおずとベルタが言った。その答えを聞くか聞かないかのうちに走り出そうとするマヨルの腕を、反射的にロギはつかんだ。
「おまえなんで無事なんだよ」
「悪かったな無事で。レオニード先生の防御術式のおかげだ。離せ」
ロギの腕を振り切ってマヨルは走り出す。
ロギはあんぐりと口を開けるしかなかった。
「それなら普通、お嬢様じゃなくてレオニードじぇねえの……」
ロギはレオニードのほうをふりかえった。
守り抜いた生徒に見捨てられたレオニードは、力尽きて気を失ったらしかった。ちょうどロギのために毛布が敷いてあったので、そこへ運ばれている。
ふと、不穏な気配を感じてロギはレオニードから目線を上げた。
アンゼラが、まだこの場にいた。
警備員に捕縛されたアンゼラが、抜け殻ような表情で目を閉じたレオニードを見ていた。
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