令嬢は呪術師 〜愛しき名に精霊は宿る〜
31.第二章 カロア川の精霊⑨
女子集団からは、ロギの大嫌いな女の陰険さが漂っている。ロギは集団で行動する女が苦手だった。どうして女って、集団になるとこういう空気を醸し出すんだろう……。
「こんなところでサボってたら、白制服に返り咲けないよ?」
「いいの? あんな異人種に負けたままでさあ」
「あんな鼻高々だったくせに、ぽっと出の外国人に負けちゃって」
「やーよね、異人種が白制服だなんて。デジャンタン術式学院の格が落ちちゃう。あたし、王都の術式学院に行けばよかったな」
「異人種に白制服は似合わないよね」
「この子だって似合わないけど」
「言えてる。あははははは!」
明らかに悪意のある言葉を浴びせ掛けられ、薄茶の髪の女生徒は縮こまってうつむいていた。髪が垂れ下がって表情は見えないが、おびえているにちがいない。
(……ったく。ガキどもが)
助けてやる義理はないし、かったるいとは思ったが、こういうのは生理的に耐えられない。ロギはのっそりと木の幹から離れた。
「おい!」
ロギの太い声に、女生徒の集団ははっとしたようにこちらを見た。
薄茶の髪の女生徒も、涙でうるんだ瞳をこちらへ向けた。「助かった」と思ったのは一瞬だったようで、ロギの姿を見て絶望した顔をしている。
――ついさっき、喧嘩ふっかけた相手だもんな。
(まさか、俺が女どもに加勢するとか思ってないだろうな)
そんな思いが頭をかすめ、ロギは少々憮然とした顔をしてしまった。
それが悪かったのだろうか。
窮地に追い込まれたと思ったのか、薄茶の髪の女生徒は、手にした布袋をリーダー格の女生徒の顔面に投げつけた。
「きゃっ!」
リーダー格がひるんだ隙に、彼女は集団をすり抜けた。
追いかけようとした女生徒もいたが、ロギがにらんで牽制する。
「ミラ、だいじょうぶ?」
「なによ、あいつ! あたしにこんなことして。許さない!」
ミラと呼ばれた紺制服の女生徒は、腹立たしげにぶつけられた布袋を蹴っとばした。
白い丸いものが入っているはずの袋が大きく弧を描き、カロア川の水面にぽちゃんと落ちる。重さのなさそうなその袋は、ぷかぷかと浮かんだまま、下流に向けて流れ去って行った。
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