令嬢は呪術師 〜愛しき名に精霊は宿る〜

サカエ

26.第二章 カロア川の精霊④


 学院生の序列は、白制服を頂点として次に濃紺、深緑、茶色と続くピラミッド型らしい。
 下にいけばいくほど人数は増え、茶色が最も多く生徒の六割は茶制服なのだそうだ。メリチェルの属する赤マントは、生徒には勘定されない。部外者扱いである。

 赤マントと白制服では学院内身分が違いすぎるので、ああは言ったもののメリチェルはマヨルと一緒にいられる時間はあまりなかった。マヨルはびっちりと詰まった時間割をこなしたあと、夜遅くまでレオニード先生の個人授業を受けているのである。

 生徒が王立術士団にストレートで入れば学院の評判が高まるので、白制服には学院側の期待が大きいらしい。

 王立術士団入団希望者には術式学校あがりの学徒組と、巷で術者として仕事をしてきた叩き上げ組がいる。ロギは後者だ。
「あの胸クソ悪い女は、王立術士団に入る気はないんじゃなかったのか?」
「胸クソ悪い女じゃありません。マヨルって名前があるのよ、ロギ」
「あいつは清廉潔白なこの俺を、凶悪犯罪者かなにかみたいににらみつけるんだぞ。同じ下宿にいるだけじゃないか! 俺がなにをしたっていうんだ」

 マヨルと一緒にいられないぶん、メリチェルは学院でロギの姿を見かけると話しかけに行った。もちろん、うっとうしがられている。でも気にしない。今日も中庭で図書室に向かうロギを見かけたので、こうして追いかけているのである。
「ちょっと過敏なのよ……。ゆるしてあげて。王立術士団に合格すると、学院の名を高めた褒賞として、収めた授業料が返済されるんですって。人脈も広がるし、ためしに入ってみるのもいいんじゃないかしら」

 メリチェルがそう言ったところで、背後でバシッ!と何かを石畳に叩きつける音がした。
 ぎょっとしてふりかえる。

「ためしに、ですって……?」

(あ……。あのときの)


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