毒手なので状態異常ポーション作る内職をしています
4-2
「怒られたんだよ、薬屋の主人に。僕も謝りに行った」
それを聞いて、思い至る。「ああ、あれか」
ランプリットに入る前に話した、カリンが嘘をついて七日間も家を空けるっていう。
「結局、こってり絞られたのか」
「むぅ……」
「そういや、他の二人は?」
「カティアなら、もうすぐここに来る筈じゃよ。
ブラッドとかいう奇人のことは知らぬ」
噂をすればなんとやら、研究所の玄関が開く音に続いて、こちらの部屋のドアがノックされ、カティアさんが入ってきた。
「こんにちはー。 皆さんお揃いのようですね」
「ちわっす。
そしてお前もか、ブラッド」
「……」
もう一人、開いたドアの前で半身だけこちらに向けている彼に言った。
ブラッドは俺の様子を見ると「起きたようだな」と呟き、中に入ってきた。
「まだ何か用があるのか?」
「ああ、言い忘れたことをな」
「なんかあったっけ?」
「毒手のコントロールについて、だ」
「あ」
そういえば決闘をしたのはそんな約束でだった。
「先に技だけ教えて、肝心のコントロール方法は教えず仕舞いだったな」
「それで、その方法というのは?」
ブラッドは指を二本折り曲げながら言った。
「気を浴びて、肉体を鍛える。
ただそれだけだ」
「はぁーっ、なるほど。
……って、それだけ?」
「冒険を続けて実力を高めるなり、あの滝に打たれるなりしていればいずれ可能になる。
我も昔はそうだった」
「レベルアップすればその内、ってことで良いのか?」
「まあ、そうなるな」
てか昔って、いつのことだよ。
「またウン千年かかるとか言い出したりしないだろうな?」
「我の場合は半年だった」
あふーん、衝撃の事実。
「えーっ!  俺二年目突入したのに!」
「コーキさん、それはたぶん……」
「文字通り修行が足りないのじゃ!」
「まあ、これから頑張りましょうね」
「トホホ……」
女性陣二人に指摘されて不甲斐ない。
そういえばアイザックさん、ブラッドの毒手が気になってしょうがないんじゃないだろうか。
俺のチカラのこともかなり知りたがってたし。
そう思い、彼の方を見ると、
「……ふむ、興味深い」
などと口にしながら、ブラッドのことを無遠慮に観察していた。
「どうしたんですか? そんなに考え込んで」
「いや、すまない。むむう……」
アイザックさん、研究分野のことに結び付くと途端にこれだからなあ。
「あ、研究って言えば……」
ブラッドという証人を連れて冒険者学校の教授に会いに行くとか約束してたな。
アイザックさんにつてがあるということは、調合学科の人物だろうか。
それを質問すると、
「ラポン・デルナーイ教授。
植物学の権威と称される、かのリーブ・デルナーイ氏の甥にあたる人物で、彼自身は調合学の教授だ」と答えた。
「へえ、あの調合入門の著者の甥かあ」
「それはガンバ・テッバイト教授じゃ、たわけ!!」
俺なんかよりもよっぽど調合に詳しいカリンが言った。
「あ、じゃあカリンが言ってた方の人か。
植物学の体系化だったよな、たしか?」
「――お前たち、いったい何の話をしておるのだ??」
「コホン、話を戻して良いかな。
早ければ出立は明後日になると思うけど、皆は予定は大丈夫?」
「……まあ、普通に空いてますね」
「わしも問題無いが……
そやつが教鞭をとっている冒険者学校はどこにあるのじゃ?」
「魔法都市、エーテル・エペに」
アイザックさんが答えたのを聞いて、やっぱりなと思った。
エーテル・エペの冒険者学校は、俺が所属していたところ。クサい言い方をすれば、母校。
「ランプリットに行く道の反対側ですね」
「おお、カティアは知っとるのか?」
「ええ、あの場所には訓練生時代お世話になりましたから」
「あれ、卒業生なんだ?
じゃあコーキ君と同じじゃないか」
「え、そうなんですか!?」彼女が驚いた。
「そうっす、俺もエーテル・エペから――」
「うわあ、奇遇ですね! ちょっと使い方違いますけど」
カティアさん、先輩だったのか。まあ、冒険者同士なら特別珍しいことでも無いけど。でも知り合いと共通点があるって分かるとビックリだよな。
「あれ、じゃあカティアさんも来るんですか? なんだかんだで数日間ずっと付いてきてくれましたけど」
俺が気になって聞くと、彼女は残念そうに答えた。
「実は、一週間前に先約で冒険の依頼を受けてしまっていたので、私はいったん抜けさせていただきます」
「冒険者だから無理も無いか」
「ああ、なんだか寂しいのう」
「もうしばらく話していたいのですが、実は、準備のためにもう行かなきゃなんですよね。
――何かありましたらこちらの住所に手紙でも頂ければ。
私の方からアイザックさんの研究所まで来るかもですけど」
そう告げてメモをテーブルの上に置くと、「皆さんの健闘を祈ります」と言って出ていった。
彼女が出ていったのち、カリンがふと漏らした。
「なんだかんだで気丈じゃのう、カティアは」
俺も同意見だ。
「確かに、一見掴み所が無さそうな割に意外としたたかな感じだよな」
「あ、ブラッドは予定の方は大丈夫かな?」
アイザックさんが言う。
「フン、好きにしろ。 我は何時でも構わぬ」
やりとりを見ていたカリンが言った。
「それに引き換えコイツは、芯まで流木のようじゃ」
「どちらかと言えば氷山じゃないのか」
「成る程、ブラッドに絡まれたが最後、戦闘を挑まれて負けることを、船が氷に当たると沈没することに、例えておるのじゃな」
「……お前ら、聞こえておるぞ」
それを聞いて、思い至る。「ああ、あれか」
ランプリットに入る前に話した、カリンが嘘をついて七日間も家を空けるっていう。
「結局、こってり絞られたのか」
「むぅ……」
「そういや、他の二人は?」
「カティアなら、もうすぐここに来る筈じゃよ。
ブラッドとかいう奇人のことは知らぬ」
噂をすればなんとやら、研究所の玄関が開く音に続いて、こちらの部屋のドアがノックされ、カティアさんが入ってきた。
「こんにちはー。 皆さんお揃いのようですね」
「ちわっす。
そしてお前もか、ブラッド」
「……」
もう一人、開いたドアの前で半身だけこちらに向けている彼に言った。
ブラッドは俺の様子を見ると「起きたようだな」と呟き、中に入ってきた。
「まだ何か用があるのか?」
「ああ、言い忘れたことをな」
「なんかあったっけ?」
「毒手のコントロールについて、だ」
「あ」
そういえば決闘をしたのはそんな約束でだった。
「先に技だけ教えて、肝心のコントロール方法は教えず仕舞いだったな」
「それで、その方法というのは?」
ブラッドは指を二本折り曲げながら言った。
「気を浴びて、肉体を鍛える。
ただそれだけだ」
「はぁーっ、なるほど。
……って、それだけ?」
「冒険を続けて実力を高めるなり、あの滝に打たれるなりしていればいずれ可能になる。
我も昔はそうだった」
「レベルアップすればその内、ってことで良いのか?」
「まあ、そうなるな」
てか昔って、いつのことだよ。
「またウン千年かかるとか言い出したりしないだろうな?」
「我の場合は半年だった」
あふーん、衝撃の事実。
「えーっ!  俺二年目突入したのに!」
「コーキさん、それはたぶん……」
「文字通り修行が足りないのじゃ!」
「まあ、これから頑張りましょうね」
「トホホ……」
女性陣二人に指摘されて不甲斐ない。
そういえばアイザックさん、ブラッドの毒手が気になってしょうがないんじゃないだろうか。
俺のチカラのこともかなり知りたがってたし。
そう思い、彼の方を見ると、
「……ふむ、興味深い」
などと口にしながら、ブラッドのことを無遠慮に観察していた。
「どうしたんですか? そんなに考え込んで」
「いや、すまない。むむう……」
アイザックさん、研究分野のことに結び付くと途端にこれだからなあ。
「あ、研究って言えば……」
ブラッドという証人を連れて冒険者学校の教授に会いに行くとか約束してたな。
アイザックさんにつてがあるということは、調合学科の人物だろうか。
それを質問すると、
「ラポン・デルナーイ教授。
植物学の権威と称される、かのリーブ・デルナーイ氏の甥にあたる人物で、彼自身は調合学の教授だ」と答えた。
「へえ、あの調合入門の著者の甥かあ」
「それはガンバ・テッバイト教授じゃ、たわけ!!」
俺なんかよりもよっぽど調合に詳しいカリンが言った。
「あ、じゃあカリンが言ってた方の人か。
植物学の体系化だったよな、たしか?」
「――お前たち、いったい何の話をしておるのだ??」
「コホン、話を戻して良いかな。
早ければ出立は明後日になると思うけど、皆は予定は大丈夫?」
「……まあ、普通に空いてますね」
「わしも問題無いが……
そやつが教鞭をとっている冒険者学校はどこにあるのじゃ?」
「魔法都市、エーテル・エペに」
アイザックさんが答えたのを聞いて、やっぱりなと思った。
エーテル・エペの冒険者学校は、俺が所属していたところ。クサい言い方をすれば、母校。
「ランプリットに行く道の反対側ですね」
「おお、カティアは知っとるのか?」
「ええ、あの場所には訓練生時代お世話になりましたから」
「あれ、卒業生なんだ?
じゃあコーキ君と同じじゃないか」
「え、そうなんですか!?」彼女が驚いた。
「そうっす、俺もエーテル・エペから――」
「うわあ、奇遇ですね! ちょっと使い方違いますけど」
カティアさん、先輩だったのか。まあ、冒険者同士なら特別珍しいことでも無いけど。でも知り合いと共通点があるって分かるとビックリだよな。
「あれ、じゃあカティアさんも来るんですか? なんだかんだで数日間ずっと付いてきてくれましたけど」
俺が気になって聞くと、彼女は残念そうに答えた。
「実は、一週間前に先約で冒険の依頼を受けてしまっていたので、私はいったん抜けさせていただきます」
「冒険者だから無理も無いか」
「ああ、なんだか寂しいのう」
「もうしばらく話していたいのですが、実は、準備のためにもう行かなきゃなんですよね。
――何かありましたらこちらの住所に手紙でも頂ければ。
私の方からアイザックさんの研究所まで来るかもですけど」
そう告げてメモをテーブルの上に置くと、「皆さんの健闘を祈ります」と言って出ていった。
彼女が出ていったのち、カリンがふと漏らした。
「なんだかんだで気丈じゃのう、カティアは」
俺も同意見だ。
「確かに、一見掴み所が無さそうな割に意外としたたかな感じだよな」
「あ、ブラッドは予定の方は大丈夫かな?」
アイザックさんが言う。
「フン、好きにしろ。 我は何時でも構わぬ」
やりとりを見ていたカリンが言った。
「それに引き換えコイツは、芯まで流木のようじゃ」
「どちらかと言えば氷山じゃないのか」
「成る程、ブラッドに絡まれたが最後、戦闘を挑まれて負けることを、船が氷に当たると沈没することに、例えておるのじゃな」
「……お前ら、聞こえておるぞ」
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