毒手なので状態異常ポーション作る内職をしています
第4章 気のせいだったら良いんですが4-1
あの後、ブラッドとカティアさんが帰り道、そして研究所まで着いてきた。
カティアさんは初めから、冒険が終わったら着いてくる約束だった。
ブラッドの方は、まあ仕方無い。不可抗力的な意味でだが。
彼から与えられたこの新たなチカラ、蝕狼撃と、そして――例の毒気槍。
蠍(さそり)の尾を模した、槍の鎖。本当になんなのだろう。
訳もわからないままあんな大技を出してしまった俺がその後完全に無事だったかと言えばそうでなかった。
あの後ブラッドと何を話したのかは、朦朧(もうろう)としていたためよく覚えていない。
俺は帰り道の途中、眠るように倒れこんだ。
たしか猫車か何かに乗せられて、王都の転送陣をくぐったのだけは覚えている。
一方通行の魔方陣に触れると、数日ぶりに見た景色があって、そのままビーカーや試験管のある見慣れた場所で寝かされた気がする。
***
「おう、やっと目を覚ましたか」
意識が戻るなり聞こえてきたのは、古風なイントネーションの声。
ついこの前もこんなことがあったなと思いながら体を起こすと、そこにいたのは古風は古風でも、小娘のほう。
起きてから初めて聞いたのはカリンの声だった。
「師匠が診てやっとったが、単なる疲労のようで安心したのじゃ」
「心配いらねえよ、バカ」
俺は重い腕を回しながら軽口を叩いた。
カリンがいつもの調子で言い返す。
「バカって言う方がバカなのじゃ」
「うっさい、この古風ボキャ貧いろいろ貧小娘」
「ここが研究所でなかったのなら足蹴をお見舞いしたいところじゃ」
ベッドの近くにはポーションが沢山入った棚が。
「いっそ派手に割って怒られれば良いのに」
俺がそう言うと、カリンは一瞬目を点にして固まってから、ごまかすように「フン」と鼻をならした。
「もう怒られたのじゃ」
「えっ?」
俺がその意味をよく分からずにいると、
「お早う、やっと起きたね」
アイザックさんが入ってきた。
「カラダの調子はどう?」
俺は節々に痛みが無いかを確認してから答える。
「ちょっと重いくらいですね。
なんか、疲労らしいですけど。
やっぱ、あの技のせいですかね?」
「察するにあの技、かなり体力を消耗するみたいだしね」
アイザックさんが頷く。
「まあ、見た目からしてそうじゃっな」
カリンが横から言う。
「しかし、あのいかにも強そうなブラッドの奴と互角に鍔迫(つばぜ)り合いするとはのう。
あれは本当にすごかったぞ。
なんだかお主を見直してもいいかな、と微妙に思ったかもしれない気がするのじゃ」
「ずいぶんと控え目な表現だな、オイ。
――にしてもアイザックさん、冒険者が自分のチカラを他の冒険者に受け渡すなんて、聞いたことがないですよ。
それに、毒手の存在自体のこと。
俺の能力は結局、イメージが具現化されたオリジナルじゃ無かったってことになるんでしょうか」
「ああ、君も気づいたようだね。
どうして、本物の使い手である彼がコーキ君にチカラを分け与えることが出来たのか。
また新たな謎が増えたよ」
「ひょっとしたら、俺の毒手はアイツ――ブラッドの、いわば劣化コピーにあたるんでしょうか?だったら納得がいくんですが」
「下位置換の、そのまた複製か……では、神殿で君が手に入れたのは……むむぅ――」
アイザックさんは俺の言葉を反すうしながら、しきりに何かぶつぶつと言いはじめた。
俺も浮かんだ疑問を呟いていく。
「仮説との矛盾。今では存在しないと思われた能力の、圧倒的な使い手。そしてチカラの分け与え。かと思えば俺の毒気槍がスタミナ以外互角。
これはもう、わけがわかりませんね……」
何か考えようとするが、一日二日で答えが簡単に出るようなものではないだろう。
ブラッドもあの分では、よく分かっていなかったようだし。
「ところで、カリンが怒られたってどういうことです?」
カティアさんは初めから、冒険が終わったら着いてくる約束だった。
ブラッドの方は、まあ仕方無い。不可抗力的な意味でだが。
彼から与えられたこの新たなチカラ、蝕狼撃と、そして――例の毒気槍。
蠍(さそり)の尾を模した、槍の鎖。本当になんなのだろう。
訳もわからないままあんな大技を出してしまった俺がその後完全に無事だったかと言えばそうでなかった。
あの後ブラッドと何を話したのかは、朦朧(もうろう)としていたためよく覚えていない。
俺は帰り道の途中、眠るように倒れこんだ。
たしか猫車か何かに乗せられて、王都の転送陣をくぐったのだけは覚えている。
一方通行の魔方陣に触れると、数日ぶりに見た景色があって、そのままビーカーや試験管のある見慣れた場所で寝かされた気がする。
***
「おう、やっと目を覚ましたか」
意識が戻るなり聞こえてきたのは、古風なイントネーションの声。
ついこの前もこんなことがあったなと思いながら体を起こすと、そこにいたのは古風は古風でも、小娘のほう。
起きてから初めて聞いたのはカリンの声だった。
「師匠が診てやっとったが、単なる疲労のようで安心したのじゃ」
「心配いらねえよ、バカ」
俺は重い腕を回しながら軽口を叩いた。
カリンがいつもの調子で言い返す。
「バカって言う方がバカなのじゃ」
「うっさい、この古風ボキャ貧いろいろ貧小娘」
「ここが研究所でなかったのなら足蹴をお見舞いしたいところじゃ」
ベッドの近くにはポーションが沢山入った棚が。
「いっそ派手に割って怒られれば良いのに」
俺がそう言うと、カリンは一瞬目を点にして固まってから、ごまかすように「フン」と鼻をならした。
「もう怒られたのじゃ」
「えっ?」
俺がその意味をよく分からずにいると、
「お早う、やっと起きたね」
アイザックさんが入ってきた。
「カラダの調子はどう?」
俺は節々に痛みが無いかを確認してから答える。
「ちょっと重いくらいですね。
なんか、疲労らしいですけど。
やっぱ、あの技のせいですかね?」
「察するにあの技、かなり体力を消耗するみたいだしね」
アイザックさんが頷く。
「まあ、見た目からしてそうじゃっな」
カリンが横から言う。
「しかし、あのいかにも強そうなブラッドの奴と互角に鍔迫(つばぜ)り合いするとはのう。
あれは本当にすごかったぞ。
なんだかお主を見直してもいいかな、と微妙に思ったかもしれない気がするのじゃ」
「ずいぶんと控え目な表現だな、オイ。
――にしてもアイザックさん、冒険者が自分のチカラを他の冒険者に受け渡すなんて、聞いたことがないですよ。
それに、毒手の存在自体のこと。
俺の能力は結局、イメージが具現化されたオリジナルじゃ無かったってことになるんでしょうか」
「ああ、君も気づいたようだね。
どうして、本物の使い手である彼がコーキ君にチカラを分け与えることが出来たのか。
また新たな謎が増えたよ」
「ひょっとしたら、俺の毒手はアイツ――ブラッドの、いわば劣化コピーにあたるんでしょうか?だったら納得がいくんですが」
「下位置換の、そのまた複製か……では、神殿で君が手に入れたのは……むむぅ――」
アイザックさんは俺の言葉を反すうしながら、しきりに何かぶつぶつと言いはじめた。
俺も浮かんだ疑問を呟いていく。
「仮説との矛盾。今では存在しないと思われた能力の、圧倒的な使い手。そしてチカラの分け与え。かと思えば俺の毒気槍がスタミナ以外互角。
これはもう、わけがわかりませんね……」
何か考えようとするが、一日二日で答えが簡単に出るようなものではないだろう。
ブラッドもあの分では、よく分かっていなかったようだし。
「ところで、カリンが怒られたってどういうことです?」
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