学園の人気者のあいつは幼馴染で……元カノ

ナックルボーラー

GW開始!

 御影が転校して来て早1週間が経過していた。
 始業式でも無く、始業式を終えての暫く立った月の中旬という変な期間に転校して来た彼女だが、持ち前のコミュ力でかクラスに随分馴染んでいた。
 陸上の有名選手という周りからの特別な視線を送られるが、彼女は特に気にせず、一人の女子生徒として学校生活を謳歌していた。

 光との一件から、光と御影の間にギスギスな雰囲気で周りの空気を悪くするのではと懸念していたが、学校で二人がすれ違った際に普通に挨拶を交わしていたから杞憂だったのだろう。

 そんなこんなで色々とあった4月も終わりに差し掛かった頃。
 
「…………………」

「…………………」

 日本最大の大型連休であるGW二日目。
 世間では旅行だ、部活だ、講習だと賑わう中だが、高校2年である古坂太陽の今年のGWの過ごし方は、

 何故か現在、元カノである渡口光と通路を挟んでの隣同士で座席に座り、バスに揺られて移動していた。
 
「…………なんでお前がここにいるんだよ」

「古坂君こそ。なんで無関係の君が、陸上部の合宿に同行してるのかな?」

 太陽の質問に冷徹に返す光。
 そして二人はそのまま無言となり気まずい空気が流れる。
 
 光が口にした様に、このバスは鹿原高校陸上部が貸し切るバス。
 太陽以外にも総勢30人近い部員及び、教師とコーチが二人、そして、太陽と光に同伴した千絵と信也がいるそれぞれの同性の隣に座っている。
 
 どうしてこうなったのか、それは、GW初日へと遡る。

* * *

「……暇だなぁ……」

「そうだな~。宿題始めて30分でそれを聞けるとは思わなかったけど」

 世間一般では日本最大の大型連休であるGW初日。
 
 部屋主の古坂太陽を含め、太陽の中学からの親友である新田信也と二人。
 若干室温が高い部屋でテーブルに向かいながら座っていた。
 互いの前には学校から出されたそこそこ量の多い宿題が並べられ、その量に嫌気を指した太陽が机にうつ伏せながら不満を流していた。

「てかよ……。なにが悲しくて男二人が二人キリで宿題しているんだよ、俺たちは……。普通GWって旅行とかでワイワイ盛り上がるイベントじゃねえのか……」

「知らねえよ。金がねえ学生がおいそれと旅行に行けるか。てか。宿題を言い出したのはお前だろうが。GW初日に全部宿題を終わらせれば、後は楽にエンジョイできるからってよ。言い出しっぺが開始30分でぶーたらこくなよ」

 太陽の不満に律儀に返しながら信也は己の宿題のペンを進める。
 
「そもそも、太陽。お前は俺と違って色々な女に声をかけたり仲良くしてるじゃねえか。そん中で一人ぐらいいないのかよ。遊べる女友達とか」

 太陽は友達に誘われ合コンなどに参加をするプレイボーイ。
 連絡先の交換をしているだろうと疑問に思い、信也は太陽に質問するが。

「あぁ。残念な事に良さそうな奴を6人ピックアップしてメールしたら。6人中5人が無視で、残り1人は『GWは彼氏とデートだから無理。彼氏に誤解されるといけないからもうメールしてこないで』って返信が来たよ」

「……それはなんだか……ドンマイ……」

 信也の言葉の思いつかない慰めが更に太陽に追い打ちに掛けたのか、太陽から負のオーラがあふれ。

「マジでよ……。イチャイチャイチャイチャ! マジ、リア充死ね!」

 太陽の憤怨の籠った叫びに苦虫を噛み潰した様な表情。
 彼の表情から察するにこう思っているのだろう。

『お前も少し前まではそのリア充だっただろうが、ゴラッ』と。

 過去は過去、今は今と現在の寂しい太陽だが、ここで太陽の携帯がバイブ音を鳴らして電子音を奏でる。

「おい太陽。携帯鳴ってるぞ?」

「んだよ。母さんからか? そう言えば、父さんと一緒に行った泊りがけの同窓会から帰る時に連絡するって言ってたな……」

「親父さんと一緒って。親父さんとお袋さんは同じ学校出身なのか?」

「大学はな。なんでも二人は大学の時に知り合ってから付き合って結婚したらしい。んで。サークルの仲間で久々に集まろうって話になって、昨日からいねえんだ」

 別に両親の馴れ初め話に興味がないと吐き捨てる太陽だが、そうこうしている間も途切れずに携帯の電子音が流れる。
 どうやら太陽は電話の相手が母親だと決めつけてる様子。
 
「……出ないのか?」

「そうだな~。まあ、適当にお土産でも買って来てもらうか」

 無視する理由も無く、太陽は携帯を取り、画面の発信者を見ずに通話ボタンを押し、携帯を耳に当て、

「もしもし、太陽だけど、なに?」

『あっ、古坂さん! 私です、はるみ――――』

 ぶちっ、と太陽は通話終了ボタンを反射的に押してしまった。

「……誰からだったんだ?」

 出て2秒も経たずに終了ボタンを押した太陽に苦笑しながら信也が尋ねると、

「あぁー、あれだ。間違い電話」

 思わず終了ボタンを押してしまったが、声の主は確実にあの人物だった。

「(……ん? 待てよ。俺、あいつに)」

 何故あの人が自分に電話出来たのかとそもそもな疑問を思い浮かんでいると、再び携帯の電子音が部屋に響く。
 今度は太陽は事前に発信者画面で誰からの電話なのかを確認する。
 が、今電話かけている者の番号は登録していない為に見慣れない番号だけが映し出されている。
 太陽は恐る恐ると通話ボタンを押し、携帯を耳に当て、

「もしもし、古坂ですが」

 相手とは初対面の体で電話に出る。
 すると、通話主はすぅーと息を吸い込む音が聞こえ。

『―――――知ってますよッ! なんで電話切ったんですか! いきなり切るとか非常ひどすぎますよ!』

 鼓膜に響き、相手の金切り声が太陽の耳にダメージを与える。
 この聞き覚えのある声、それは、ここ最近交友関係を築けた転校生、晴峰御影の声だった。

 太陽はキーンと違和感がある耳の穴を少し撫でて、再び携帯を耳に当て。

「んだよ。そんな大声出さなくてもいいだろうが、晴峰。てか、なんでお前、俺の電話番号知ってるんだ? 俺、お前に番号教えたっけ?」

 太陽の携帯に登録外からの通話を意味する番号のみの時点で御察しだろうが、太陽は御影に自分の連絡先を教えていなかった。
 
『そうなんですよ。不思議ですね。学校でそこそこ会ってるのに、連絡先交換してないなんて、完全に忘れてました』

 御影の言う通りに太陽自身も御影との連絡先の交換を忘れていた。
 別に彼女と連絡する理由もそこまで無いのだが、知っとくだけで便利なはず。
 だが、教えてもいないのに、何故彼女から太陽の携帯に連絡出来たのか、それだけが疑問だった。
 が、大方の予想で誰からか聞いたのだろう。
 陸上部には同じクラスの者や、そこそこ仲の良い池田優菜もいる。

「んで? 俺にわざわざ電話してきて、なんか用か?」

『そうですそうです。私、古坂さんにかなり重要な用があって電話したんです。古坂さんは明日からのGW中ってお暇ですか?』

「なんでそんな事聞くんだ?」
 
 暇かと聞かれれば暇なんだが、突然に聞かれると勘繰りしてしまい聞き返す。

『いえ、用事があるんでしたら断わってもいいのですが、用事があるかないかだけ教えてください』

 要件をハッキリと言わず食い下がらない御影に、太陽は観念して、

「暇だけど?」

 太陽はここで考える。
 普通なら相手から暇だと言う事実を確認してくるってことは、相手は何かしらの誘いをする事が多い。
 それに沿って考えるなら、御影がしつこくGW中に太陽は暇かと尋ねてくるってことは、御影は太陽を何かに誘いたいってことになる。
 しかもGW中ってことは長期間。これは旅行フラグ。
 
 太陽は別に御影の事を女性として嫌なわけではなく、ハッキリ言えばありである。
 なら、御影から遊びの誘いがあるのであれば、快く受けようとうんうんと考える太陽だったが、

『そうですか! なら良かったです。でしたら――――――陸上部の合宿に行きましょう!』

「………………は?」
 

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