⇄ チェンジ  腐女子⇄ゆうた

はる

始まりは叫び声と共に

「ぎゃあああああああああああああああ」
朝、自分の体を見て、大声を上げた。 
(何、このペッタンコで硬い胸板・・・てか髪短っっ!!そして下半身のコレは・・・)
明らかに男。そうとしか考えられなかった。
(いや、ちょっと待て?有り得るのか??こんな事は)
私が考え込んでいるとドタバタと階段を駆け上がって来る音がし、豪快にドアが開けられた。
「ゆうた、どしたの!?」
40代半ば程だろうが肌のとても綺麗な女性が心配そうな顔をして現れそう言った。
ゆうた、はこの身体の元の持ち主でこの女性はその母親なんだろう。
私は私がゆうたではないと察しさせないように何事も無かったという笑顔で答えた。
「大丈夫。母さん。変な夢を見ただけだから・・・」
(母さん呼びで合ってるか!?)
内心は焦っていた。だけどそれを感じさせないように振舞ったつもりだった。
しかし、私の取り繕ったような言葉を不審に思ったのかゆうた母は暫く無言でこちらを見つめていた。
しかし、疑われていた訳ではなかったらしい。
「・・・そうなの?本当に大丈夫なのね?・・・ならいいけど・・・」
と、言ってあっさり部屋を出ていった。
(ギリギリセーフかな?でも心臓に悪い・・・)
私はひとまずホッと胸を撫で下ろした。
(でもホントに入れ替われるなんてねー)
落ち着いたらそんな事を考える余裕が生まれてきた。
私の名前は瀬田一華。15歳、女。だった。
男になりたい、そんな願望はかなり昔からあったけれど神社で願ったのは初めてだった。
多分それが昨日だ。
(神様なんて絶対いないと思ってたなー)
けれど願いは叶った。
(ならばこの状況を有効に使わなくては!!!ありがとう神様!!今までごめん)
私はゆうたに成り代わる、完璧に。
まずはさっきのような賭けをしなくて良くなるように情報収集をすることにした。
(よーし、お部屋荒らしますか!!あと表札も見に行かないとね!!)






「苗字は赤家、でもってゲーマー、成績ビミョーで同い年、クラスは3組、12/28生まれ・・・っと」
部屋はあまり物がなく情報は思いの外集まらなかった。
(収穫少ないなぁ・・・まあ、衣装持ちだったのは結構な収穫かなー)
冴えない見た目からは意外でしかなかったが嬉しい誤算である。
(まあ、冴えないって思ったのはこの男子にしてはちょっと長い髪の毛のせいなんだけど…まっ、これは逆に考えればこれからアレンジし放題って事だよね!!)
「ふふふ・・・」
私はこれからの未来を想像して思わずニヤケてしまった。
(あ、でも男の声でこの笑い方は無いな)
なんて、ちょっとだけ冷静に考えつつ。
「ゆうたー、ご飯よー!!」
「あ、はーい」
私はゆうた母に呼ばれてダイニングのある1階へ下りていった。
そう言えばゆうた母やゆうたの知人との接し方の情報をまだ手に入れれていなかった。
これは由々しき事態だ。いつだってバレる可能性があると言う事なのだから。
(バレては絶対ならない!!何があっても私はこのままで居たいから!!)
私は気づいた頃には“腐女子”だった。
それも自分が男になりたいという願望を持つ類の“腐女子”だ。
無理な事は分かっていた。変な願望だって事も分かってた。
けれど、私も男の子を愛でたい!!アンアン言わせたい!!・・・と、いうのが願望は年々強くなっていっていた。
(ずっと叶わないと思っていたものが叶った!!だからこの幸せを失いたくない!!)
そんな事を思っていた時だった、あの電話が鳴ったのは。
「ゆうたー、取って頂戴。」
「はーい」 
何の構えもなく、私は電話を取った。
完全に油断していた。
「もしもし、赤家です。どちらさまですか?」
「あの・・・ゆうた・・・です・・・。」
(!!)















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