ATM~それが私の生きる意味~
アイドル議論
翌日、事務所に訪れたクロナたちは、社長から恵未のことについて知らされた。
「社長とタクさんは知り合いだったんですね」
「彼は音楽業界に顔がきく人物だからね。今の音楽業界の重鎮ともいえる者たちとも親しいのだよ」
「へー。社長って、音楽業界の重鎮だったんだ」
時雨が非常に失礼なことを言う。
「それで、彼女は何て言ってたんです?」
彩希が尋ねる。
「三日以内に答えを出す、だそうだ」
「……」
三日という期間、彼女は悩んでくれるようだ。
「三日かー。結構長いね」
「でも、ありがたいことだよ」
心配そうな表情を浮かべている時雨とは裏腹に、クロナはにこやかな表情だ。
「そもそもやる気がないなら、すぐにやりたくないって答えてくるはず。返事するのに三日ほしいっていうことは、それだけ私の誘いに対して悩んでいるってことだよ」
「まあ、確かにね。彼女が私たちのユニットに入ってくれれば、いろいろと心強いだろうし」
「あ、そういう話になってるの?」
彩希の言葉に、時雨は疑問を浮かべた。
「はじめは私とくーちゃんだけだったけど、今は時雨も入ってきてくれたし、ここにさらに彼女が入ってくれればなーって思ったんだ。四人ユニットとしてなら、いろいろとバランスもよくなりそうだし」
「なるほどねー」
彩希の考えを時雨は理解したが、あまり納得はいってないようだ。
「私ももし恵未が一緒にアイドルをやってくれるなら、このユニットに入ること自体は賛成なんだけど、そしたらいろいろと問題が出てくると思うんだよね」
「例えば?」
「まずは歌かな。恵未が入れば四人になるから、それぞれにソロパートを入れるとしたら、誰かが割を食うことになるんじゃないかな。全員平等に同じ数歌うなんてことできないでしょ」
時雨の言葉に、彩希は理解したようにうなずく。
「次にダンス。三人とかなら、センターを決めてそれにちなんだダンスを踊ればいいかなって思ったけど、四人だとセンターを決めるのが辛そうだなって思った」
「それはどうして?」
「これは個人的な見解もあるんだけど、アイドルでセンターっていえば、やっぱり真ん中に立っている人ってイメージがあるんだ。テレビとかのライブで見てみると、やっぱり真ん中に立っている人って存在感あるし、見ている人たちからしても目につきやすい位置だと思う。でも四人だと、真ん中を作ることが難しいから、ファンじゃない人たちが見たときに、印象に残りづらいんじゃないかなって考えてるんだよ」
二人が思っている以上に、時雨はアイドルについて考えていた。時雨の考えを聞いたクロナと彩希は、考え込むように黙ってしまった。
「……で、でも私が考えているだけだから、ただの杞憂で終わるかもしれないよ! あんま深く考えないほうがいいんじゃないかなっ」
自分で言っておきながら、クロナたちが黙ってしまったため、前言撤回した。
「別に、恵未が嫌いだからあんなこと言ったんじゃないんだ。ただ、こういうこともあるかもって……」
「大丈夫だよ、時雨ちゃん」
慌てている時雨に、クロナは優しく話しかける。
「時雨ちゃんがすごくアイドルについて、私たちのユニットについて考えてくれているのは伝わった。時雨ちゃんの言ってることは一理あると思ってる」
「クロナ……」
「時雨ちゃんに反するようなことを言うけど、私は恵未ちゃんが入って四人になることで、何かものすごいことが起こせそうな気がするんだ。だから私は、恵未ちゃんがこのユニットに入ってくれることを願ってる」
それは、根拠のない自信だ。しかし、昨日感じたあの予感が、虚偽であるとは思えなかった。
「どちらにしろ、私たちにできるのは待つだけ。恵未ちゃんがどんな答えを出すのか……」
窓の外の景色を見ながら、クロナは呟いた。
「社長とタクさんは知り合いだったんですね」
「彼は音楽業界に顔がきく人物だからね。今の音楽業界の重鎮ともいえる者たちとも親しいのだよ」
「へー。社長って、音楽業界の重鎮だったんだ」
時雨が非常に失礼なことを言う。
「それで、彼女は何て言ってたんです?」
彩希が尋ねる。
「三日以内に答えを出す、だそうだ」
「……」
三日という期間、彼女は悩んでくれるようだ。
「三日かー。結構長いね」
「でも、ありがたいことだよ」
心配そうな表情を浮かべている時雨とは裏腹に、クロナはにこやかな表情だ。
「そもそもやる気がないなら、すぐにやりたくないって答えてくるはず。返事するのに三日ほしいっていうことは、それだけ私の誘いに対して悩んでいるってことだよ」
「まあ、確かにね。彼女が私たちのユニットに入ってくれれば、いろいろと心強いだろうし」
「あ、そういう話になってるの?」
彩希の言葉に、時雨は疑問を浮かべた。
「はじめは私とくーちゃんだけだったけど、今は時雨も入ってきてくれたし、ここにさらに彼女が入ってくれればなーって思ったんだ。四人ユニットとしてなら、いろいろとバランスもよくなりそうだし」
「なるほどねー」
彩希の考えを時雨は理解したが、あまり納得はいってないようだ。
「私ももし恵未が一緒にアイドルをやってくれるなら、このユニットに入ること自体は賛成なんだけど、そしたらいろいろと問題が出てくると思うんだよね」
「例えば?」
「まずは歌かな。恵未が入れば四人になるから、それぞれにソロパートを入れるとしたら、誰かが割を食うことになるんじゃないかな。全員平等に同じ数歌うなんてことできないでしょ」
時雨の言葉に、彩希は理解したようにうなずく。
「次にダンス。三人とかなら、センターを決めてそれにちなんだダンスを踊ればいいかなって思ったけど、四人だとセンターを決めるのが辛そうだなって思った」
「それはどうして?」
「これは個人的な見解もあるんだけど、アイドルでセンターっていえば、やっぱり真ん中に立っている人ってイメージがあるんだ。テレビとかのライブで見てみると、やっぱり真ん中に立っている人って存在感あるし、見ている人たちからしても目につきやすい位置だと思う。でも四人だと、真ん中を作ることが難しいから、ファンじゃない人たちが見たときに、印象に残りづらいんじゃないかなって考えてるんだよ」
二人が思っている以上に、時雨はアイドルについて考えていた。時雨の考えを聞いたクロナと彩希は、考え込むように黙ってしまった。
「……で、でも私が考えているだけだから、ただの杞憂で終わるかもしれないよ! あんま深く考えないほうがいいんじゃないかなっ」
自分で言っておきながら、クロナたちが黙ってしまったため、前言撤回した。
「別に、恵未が嫌いだからあんなこと言ったんじゃないんだ。ただ、こういうこともあるかもって……」
「大丈夫だよ、時雨ちゃん」
慌てている時雨に、クロナは優しく話しかける。
「時雨ちゃんがすごくアイドルについて、私たちのユニットについて考えてくれているのは伝わった。時雨ちゃんの言ってることは一理あると思ってる」
「クロナ……」
「時雨ちゃんに反するようなことを言うけど、私は恵未ちゃんが入って四人になることで、何かものすごいことが起こせそうな気がするんだ。だから私は、恵未ちゃんがこのユニットに入ってくれることを願ってる」
それは、根拠のない自信だ。しかし、昨日感じたあの予感が、虚偽であるとは思えなかった。
「どちらにしろ、私たちにできるのは待つだけ。恵未ちゃんがどんな答えを出すのか……」
窓の外の景色を見ながら、クロナは呟いた。
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