声の神に顔はいらない。
380 運命の日 15
「えっと私も一緒に……」
「次の方、篠塚さん、篠塚宮さん」
「あっ、えっ……」
私の事を心配してくれてた宮ちゃんがここで呼ばれた。結構早い。私と名前を呼んでるスタッフの方を交互に見てる宮ちゃん。いやいや、それは駄目だよ? なんで呼ばれてるのに、私を気にしてるの? それはいけない事だ。
いくら宮ちゃんが優しくて、慈愛に溢れてるとても出来た子だとしても、優先順位を間違えちゃいけない。私達声優にとって、オーディションは戦場だよ。どんなにキャリアがあろうと私達声優はその時、その時の声を判断される。
だからどんなに売れて立って安泰ってわけじゃない。だから私達声優は止まることなんて許されないんだよ。オーディションには全力が絶対だ。宮ちゃんは優しいけど、それを間違えちゃいけない。
「私の事は大丈夫だから……だから、宮ちゃんは全力を出して……でないと、私とは……戦えないよ」
「ととのさん……」
私は迷ってる宮ちゃんへとワザと煽る様な事を言う。なんか宮ちゃんは私に憧れが有るみたいだからね。そこんところははっきりいってなんで? って思う。私よりも全然宮ちゃんの方が売れっ子だし……全然宮ちゃんの方が可愛いい。女がよく言う「可愛い」ではなく、宮ちゃんはちゃんと美人としての「かわいい」を贈れる子だ。
本当に私とは女のレベルが違う。宮ちゃんは普通に恋人だって作れるし、きっと同級生とかから、淡い恋心を抱かれてることだろう。寧ろ既に恋人が居たっておかしくない。なにせ女子高生だ。
まあそんな事に成ったら炎上しそうだけど……とにかく宮ちゃんは私にこだわることなんて全く無いんだけど、彼女は私を好いて憧れてくれてる。だからちょっと先輩ヅラしてみた。
「わかりました。私、いってきます!」
上手く宮ちゃんの心を刺激できたのか、宮ちゃんが名前を呼んでるスタッフの所へと歩いていく。
「良かったの? 一緒に居てくれた方がここ強かったんじゃないですか?」
「オーディションをすっぽかせっていうの? そんなこと……させる訳にはいかない」
「強敵かもしれないですよ? あの子」
「認めてるんだ」
静川秋華の奴は、あんまり他人……というか先生以外に興味ないと思ってた。それは絶対の自信が自分に有るからってのも有るけど、結局の所、静川秋華はそこまで声優業界のトップにこだわりが無いってのもある。
トップだからそういう風に振る舞ってはいるけど、別段、抜かれるなら、それまで……って感じがある。
「認めてるっていうか、私は全ての私以下の人たちに期待はしてますよ。勿論、ととのちゃんにも」
ふざけるな。私は多分絶対に静川秋華の変わりの立場にはなられない。それはわかってるだろう。私が出来るのは影だ。それが限界。静川秋華の変わりなんて……
「いいんですか? あの人に声を掛けるんじゃないんですか? さっきからスマホの画面ばっかり見てるから、今こそ丁度いいじゃないですか」
「わかってる……今、行く所だから」
そんな風に私をからかって静川秋華はお菓子の所に戻っていった。てか普通に安物の菓子も食ってるんじゃん。何が高級なものしか知らないだ。
「えっと……こ、こんにちは! 久しぶり……ですね」
私の意を決したそんな声は虚しく、部屋の喧騒に消えていく。
「次の方、篠塚さん、篠塚宮さん」
「あっ、えっ……」
私の事を心配してくれてた宮ちゃんがここで呼ばれた。結構早い。私と名前を呼んでるスタッフの方を交互に見てる宮ちゃん。いやいや、それは駄目だよ? なんで呼ばれてるのに、私を気にしてるの? それはいけない事だ。
いくら宮ちゃんが優しくて、慈愛に溢れてるとても出来た子だとしても、優先順位を間違えちゃいけない。私達声優にとって、オーディションは戦場だよ。どんなにキャリアがあろうと私達声優はその時、その時の声を判断される。
だからどんなに売れて立って安泰ってわけじゃない。だから私達声優は止まることなんて許されないんだよ。オーディションには全力が絶対だ。宮ちゃんは優しいけど、それを間違えちゃいけない。
「私の事は大丈夫だから……だから、宮ちゃんは全力を出して……でないと、私とは……戦えないよ」
「ととのさん……」
私は迷ってる宮ちゃんへとワザと煽る様な事を言う。なんか宮ちゃんは私に憧れが有るみたいだからね。そこんところははっきりいってなんで? って思う。私よりも全然宮ちゃんの方が売れっ子だし……全然宮ちゃんの方が可愛いい。女がよく言う「可愛い」ではなく、宮ちゃんはちゃんと美人としての「かわいい」を贈れる子だ。
本当に私とは女のレベルが違う。宮ちゃんは普通に恋人だって作れるし、きっと同級生とかから、淡い恋心を抱かれてることだろう。寧ろ既に恋人が居たっておかしくない。なにせ女子高生だ。
まあそんな事に成ったら炎上しそうだけど……とにかく宮ちゃんは私にこだわることなんて全く無いんだけど、彼女は私を好いて憧れてくれてる。だからちょっと先輩ヅラしてみた。
「わかりました。私、いってきます!」
上手く宮ちゃんの心を刺激できたのか、宮ちゃんが名前を呼んでるスタッフの所へと歩いていく。
「良かったの? 一緒に居てくれた方がここ強かったんじゃないですか?」
「オーディションをすっぽかせっていうの? そんなこと……させる訳にはいかない」
「強敵かもしれないですよ? あの子」
「認めてるんだ」
静川秋華の奴は、あんまり他人……というか先生以外に興味ないと思ってた。それは絶対の自信が自分に有るからってのも有るけど、結局の所、静川秋華はそこまで声優業界のトップにこだわりが無いってのもある。
トップだからそういう風に振る舞ってはいるけど、別段、抜かれるなら、それまで……って感じがある。
「認めてるっていうか、私は全ての私以下の人たちに期待はしてますよ。勿論、ととのちゃんにも」
ふざけるな。私は多分絶対に静川秋華の変わりの立場にはなられない。それはわかってるだろう。私が出来るのは影だ。それが限界。静川秋華の変わりなんて……
「いいんですか? あの人に声を掛けるんじゃないんですか? さっきからスマホの画面ばっかり見てるから、今こそ丁度いいじゃないですか」
「わかってる……今、行く所だから」
そんな風に私をからかって静川秋華はお菓子の所に戻っていった。てか普通に安物の菓子も食ってるんじゃん。何が高級なものしか知らないだ。
「えっと……こ、こんにちは! 久しぶり……ですね」
私の意を決したそんな声は虚しく、部屋の喧騒に消えていく。
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