声の神に顔はいらない。

ファーストなサイコロ

315 こんなお姫様は嫌だ 2

「御母様、御母様のオモチャ、私にください。御母様のその強欲、私に全部」
「何を! ただの小娘の分際で!」
「小娘……そうですね。でも皆どっちが好きでしょう。若い小娘と腐ったおばさん」
「んな!?」

 やめてよその言い草……ちょっと素にグサッときたよ。でもどうやら彼女の中では御姫様は無条件で美少女らしい。まあ物語の御姫様は大体美少女だからね。わかる。御姫様でブサイクとか許されないし、その設定は許そう。現実は案外違うけど、これはフィクションだ。問題ない。

「ほら、見てください。見なさい私が良いって言ってます」
「な……貴方たち!!」

 過程は吹っ飛ばすんだね。いや、彼女の中では合理的な何かがあったのかもしれない。それか美少女で御姫様には誰もが本当はかしずく? とか? 御姫様設定だし、そこには「本物」が括弧で入っていいから、本気を出せばこれが普通とかいう事だろうか? これはどこまで行ったらおわるのだろうか?

「な、何をやってる!」

 なんと私と陰キャな彼女がやってると、このままではいけないと思ったのか、さっきペンで脅されたパリピギャルの一人が入ってきた。良い根性してるね。このカオスに更にカオスをぶち込んで来たよ。これ後で絶対に怒られる奴じゃん。私が……なにせ私か先輩として回して行くって段取りだし……今はもう私の手を完全に離れてしまってる。これは完璧、私の責任だ。まあ事故にならないように、なんとか彼女に合わせてはは居るが……
 
(なんでここで来るんだよ~!)

 が私の本音だ。素人……いや、新人が役に入りきった彼女についてこれるの? てか何役?

「あらあら、宰相様ではありませんか? ごきげんよう」
「え? ええ、これはなんの騒ぎでしょうか?」

 パリピギャル2の子は自身が思ってた設定とは違ったんだろう。面食らってた。でもそう先に言われてはどうにも出来ない。なにせこれはいわば言った物勝ちだ。きっとパリピギャル2は自分も御姫様でいたかったんだろう。だって本当なら、皆御姫様をやって貰う訳だったからね。けど彼女の中では御姫様は自分だけ……他にいるなんて事はないんだろう。でも冷遇されてたんだし、他にも姫がいることは普通にあり得ると思うんだけど……そこはパリピギャル1に期待……しないで置こう。これ以上ややこしくして貰っても困る。

「あらあら騒ぎなんてそんな事はないですよ。楽しい親子の会話じゃないですか?」

 クスクスと彼女は含み笑いをする。さてどうするか……登場人物が増えると、終わりが先に先に行く気がするんだけど……早々に退場して貰うのがいいよね。

「そ、そうですわね。別段おかしくはないでしょう。私達はそう……親子……なのですから。お忙しい宰相様は早く業務にお戻りするべきですわ」

 存外にさっさと退場しろと言っている。けどどうやらパリピギャル2も声優としての意地とか、さっきの意趣返しもあるんだろう。なんか乗ってきた。

「確かに私は忙しい身ですが……そうですね。この場が気になってしまってこのままでは業務に差しつかえが出ます!」

 どういう言い訳!? 変に乗ってこないでよ!! 宰相ってクールで知的で、業務最優先でしょうが! さっさと仕事に戻りなさいよ。なんで女子高生バリの野次馬根性丸出しなの!? 頭痛くなってくる。

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