声の神に顔はいらない。
212 誰にだってドキドキするわけじゃない
目覚めると質素な天井が目に入った。まさか日に二度も気を失う事があるなんて思ってなかった。
「ここは?」
「気づきましたか? ここは病院ですよ」
「病院……」
まさかのホスピタルらしい。私にそう言ってきた看護師さんは私の意識を確かめるためか、何個か質問をしてきた。更に目に光を当ててくる。眩しい……そして私の意識がはっきりとしてることを確かめると、一度部屋から出て行った。診察室なのか私の寝かされてる部屋は狭い。 診察台とお医者さんのためのテーブルとかがチョコンとある程度だ。
私は頭にコブができてる程度らしい。確か血が出てたような気がするけど、その傷は既に固まってるらしい。大事に至らなくてよかった。頭は危険だからね。
(危険……あっ)
私は先生の家で起こった事を思い出した。あの惨劇を……私は思わず体を勢いよく起こす。
「いっつ」
頭に走る鋭い痛み。私はたまらずに頭を押さえた。大事には至らなかったといってもなかなかに大きなコブが出来て凍りが入ったような袋を当てられてる。とても原始的な方法だ。文句なんてないけど、この時代の医療法なの? 何か貼るとか……まあ髪があると出来ないけど。流石に女性の髪を無断で切るなんて事はしないらしいね。良かった。別段この髪に未練があるわけじゃないし、髪は女の命とも言わないよ。寧ろこの無駄に伸びた髪は煩わしいとさえ思ってるほどだ。けど流石に行き成り無くなるなんて事があると困る。だってこの髪は長年の私の鎧だった。
他人と目を合わせないようにするために無駄に伸ばしてきたんだ。最近はちょっと切ったし、ヘアピンで分けてるけど……切るに至ってないのは、まだ私の覚悟の問題だ。もしかしたら、このままずっと切れないかも知れない。自分という人間がどういう奴か私が一番知ってるからだ。だから実は言いきっかけになったかも……と思わなくもない。
「大丈夫か?」
「ん……何で?」
てっきりあの看護師さんは先生を呼びに行ったんだと勝手に解釈してた。けど違った。スライドする扉を開いて現れたのは小太りの男性……疲れた顔に無精髭を蓄えて、目には隈がバッチリ出来てる私の担当マネージャーがそこに居た。
「何でなんて言葉はこっちが聞きたいくらいだ。一応先生に説明して貰ったが……いまいち要領を得なくてな。それに簡単に信じて良い事でも無い」
最後の部分はマネージャーは耳元でささやくように言った。それはめっちゃ近い距離……だけど――
「よかった。全くドキドキしないや」
「何の話しだ? まあ不整脈とかじゃないなら良いが」
――私の失礼な言葉に対してもマネージャーは心配の言葉をくれる。うんうん、それでもドキドキしない。やっぱり仕事のパートナーはこうでなくちゃ。私はそう自分に言い聞かせてた。
「ここは?」
「気づきましたか? ここは病院ですよ」
「病院……」
まさかのホスピタルらしい。私にそう言ってきた看護師さんは私の意識を確かめるためか、何個か質問をしてきた。更に目に光を当ててくる。眩しい……そして私の意識がはっきりとしてることを確かめると、一度部屋から出て行った。診察室なのか私の寝かされてる部屋は狭い。 診察台とお医者さんのためのテーブルとかがチョコンとある程度だ。
私は頭にコブができてる程度らしい。確か血が出てたような気がするけど、その傷は既に固まってるらしい。大事に至らなくてよかった。頭は危険だからね。
(危険……あっ)
私は先生の家で起こった事を思い出した。あの惨劇を……私は思わず体を勢いよく起こす。
「いっつ」
頭に走る鋭い痛み。私はたまらずに頭を押さえた。大事には至らなかったといってもなかなかに大きなコブが出来て凍りが入ったような袋を当てられてる。とても原始的な方法だ。文句なんてないけど、この時代の医療法なの? 何か貼るとか……まあ髪があると出来ないけど。流石に女性の髪を無断で切るなんて事はしないらしいね。良かった。別段この髪に未練があるわけじゃないし、髪は女の命とも言わないよ。寧ろこの無駄に伸びた髪は煩わしいとさえ思ってるほどだ。けど流石に行き成り無くなるなんて事があると困る。だってこの髪は長年の私の鎧だった。
他人と目を合わせないようにするために無駄に伸ばしてきたんだ。最近はちょっと切ったし、ヘアピンで分けてるけど……切るに至ってないのは、まだ私の覚悟の問題だ。もしかしたら、このままずっと切れないかも知れない。自分という人間がどういう奴か私が一番知ってるからだ。だから実は言いきっかけになったかも……と思わなくもない。
「大丈夫か?」
「ん……何で?」
てっきりあの看護師さんは先生を呼びに行ったんだと勝手に解釈してた。けど違った。スライドする扉を開いて現れたのは小太りの男性……疲れた顔に無精髭を蓄えて、目には隈がバッチリ出来てる私の担当マネージャーがそこに居た。
「何でなんて言葉はこっちが聞きたいくらいだ。一応先生に説明して貰ったが……いまいち要領を得なくてな。それに簡単に信じて良い事でも無い」
最後の部分はマネージャーは耳元でささやくように言った。それはめっちゃ近い距離……だけど――
「よかった。全くドキドキしないや」
「何の話しだ? まあ不整脈とかじゃないなら良いが」
――私の失礼な言葉に対してもマネージャーは心配の言葉をくれる。うんうん、それでもドキドキしない。やっぱり仕事のパートナーはこうでなくちゃ。私はそう自分に言い聞かせてた。
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