声の神に顔はいらない。

ファーストなサイコロ

196 高級マンションヒエラルキーが襲ってくる

 静川秋華に無理矢理連れられて私は都内にある高級マンションの前へと来てた。都内でも芸能人とかが多く居ると言われてる区の駅近のマンションだ。きっと階層によってヒエラルキーがあったりするんだろうなっていう偏見で見てしまうそんなマンション。

「ちょっ、ちょっと――」

 タクシーを降りた私達は静川秋華が手を握って私を無理矢理歩かせてくる。手ちっちゃ――とか、めっちゃスベスベしてるとか、そんなことよりも普通にこの高級マンションに向かうのが恐ろしい。だって私にはこんな場所縁ないし。
 まさか? 静川秋華のマンションなのだろうか? それはあり得ると思う。だってこいつお嬢様らしいし。それならこういうお金が掛かるところに住んでいてもおかしくない。それに似合う。静川秋華がこのマンションから出てきても、「おおー」となるもん。でも私なら、きっとこのマンションイメージを損なってしまうだろう。

 とかなんとか思ってる内になんかエントランスを突破してた。セキュリティとかがあったみたいだけど、なんかあまりにも自然に突破してた。

(やっぱりここは静川秋華のマンションなんだ)

 だってこういうマンションはちゃんとしたセキュリティな筈だ。自動ドアだってキーがないとあかないとかだろうし、さっきチラッとコンセルジュみたいなのも見えたよ。それにコンセルジュの人もとっても美しかったような……恐ろしい……どこにだって顔面偏差値が求められて恐ろしい。不細工に居場所はないっていうのか。

 とか思ってたらエレベーターの前だった。ここまで来る通路からして、普通のマンションと違ってオシャレだった。壁はただの白とかじゃなく、なんか高級そうなカラーリングされてるし、床だってただの重し身がないやつじゃない。流石に大理石……とかではなさそうだけど、綺麗な石が敷き詰めれてる。そしてエレベーターの扉だよ。

(なにこれ?)

 エレベーターの扉ってザ・質素の代名詞じゃん。質実剛健っていうのかな? それじゃん。けど、ここのエレベーターの扉は違う。なんかもうほぼ壁と同化してる。オシャレの中に溶けこんでやがる。こうなるときっと中も……すると下にエレベーターが来て扉が開く。その時、音もしない。そして中には人が居た。ふわふわの髪をカールさせて、大きなサングラスそしてもこもこの服を来てても、足だけは魅せていくスタイルをしてるなんか静川秋華に通じそうな人だった。

「ふぁー」
「失礼」

 私があまりにも間抜けな顔をしてたからだろうか? なんかすれ違いざまに笑われた気がした。やはり私にはこう言う場所は相応しくないよね。きっとここはブサイク進入禁止なんじゃないだろうか? 静川秋華が無理矢理連れてきただけですから! 私は無罪です。

「なにやってるんですか匙川さん。早く行きますよ」
 
 何かに拝んでた私を無理矢理引っ張ってエレベーターに乗らせる静川秋華。私はエレベーターの中で誰にももう会わないでって願ってた。

『ブサイクがなんでここに居るんだ』なんて糾弾されたら私の心は木っ端微塵になっちゃうよ。

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