声の神に顔はいらない。

ファーストなサイコロ

174 ゲームの中の行動は本質が出る

『俺様の物になれよ!!』
「うっわ~、実際こんな事やられたら殴りますよね。イケメン無罪なんですかね? まあお金があるってわかってるなら……我慢してあげますけど、この段階ではちょっと……」
「え? こんなに求められるってよくない……ない?」

 私と浅野芽衣はゲームをしてる。ニンテンドースイッチをテレビに繋げて、テレビの大画面を二人で見ながらやってるのだ。まあ大画面と言っても、24インチくらいの出始めの液晶テレビを中古で買った奴だから、色もおかしいし、今の時代の大画面と呼ばれる程に大画面でもない。けどまあ、ニンテンドースイッチの元の画面が7? 6インチくらいだから24でも十分大きい。

 二人でこたつに入りながら画面を共有くらいはよゆうで出来る。

「先輩、どんだけ寂しいんですか? そんなに男欲しいですか? 年齢イコール彼氏いない歴ですか?」
「うっさい……そうよ、私なんて年齢イコール彼氏いない歴の三十路も見えて来た年齢のおばさんよ」
「えっと……ごめんなさい」
「あんたに謝れると……余計に惨めになる」

 私はこたつに突っ伏しつつ、ミカンの皮をむく。浅野芽衣は小声で「どうしろと?」とか言っていたけど、画面に視線を戻して選択肢を選んでた。

「この俺様系はないな」
「浅野は……そういう系……す……すすす……す」
「先輩は小学生でそっちの感性止まってるんですか? そんなんでよく、これ攻略できましたね」

 そんな風になんか可哀想な人を見る目で見てくる浅野芽衣。何その同情の目。ムカムカする。普段傍若無人な奴に心配されると、こいつよりも下なのかと……私はむいたミカンを頬張りつついうよ。

「ひゃんばった……」
「はい?」

  私はミカンをゴクンと飲みこんだ。

「頑張ったの……めっちゃドキドキするし、ヤバい位切なくなるけどね……ゲームは全てを教えてくれるよね」
「なんか……同意したくないですね。先輩が言うと」

 どういう意味だこら。私はゲームの素晴らしさを語ってるというのに。ミカンを食べながら、あれこれ話しながらやってると、浅野芽衣の好みというか習性というか……そんなのが見えてくる。

『おいお前! これはどういう事だ!?』
『どういう事なんですか芽衣さん!』
『そんな奴だったなんて……』
『君にはがっかりだよ……』
「先輩……なんか修羅場になってます」
 
 画面の向こうでは、ヒロイン……いやヒーロー達に厳しい顔つきで責められてる主人公事浅野芽衣がいる。私的には当たり前である。
 でもわかる……皆にいい顔しちゃう。私みたいなのが、こんなイケメンの誘いを断るなんて……そんな事が出来るだろうが? って悩んだ。つまりは浅野芽衣もそうなのだ。

 いや、彼女の場合は私の様な思考ではない。

「うーん、俺様王子意外はキープが良いですね。とりあえず一番出世しそうなのに最後行きます」

 とか宣ってた。まあ昨今の乙女ゲーはハーレムエンドもあるし、出来ない事はない。でもハーレムエンドには圧倒的な好意、と誠意が必要なのだ。
 浅野芽衣には打算と欲望しかなくて……それがヒーロー達にバレたのだ。まさに八方美人。現実でも浅野芽衣は同じような事をしてる。

「ちょっと可笑しくないですかこのゲーム! 私の振る舞いは完璧だった筈なのに……」

 なんでこんな事になったのか……ゲームオーバーの文字をみても納得いってない浅野芽衣。これを未来の自分だと思えれば……ちょっと行動を改めるかな? とか思ったけど、そんな期待は出来そうにない。
 しょうが無いから、私は手を差し出して浅野芽衣にコントローラーを要求する。私が完璧なトゥルーエンドを見せてあげようじゃない。
 私はタイトルに戻ってニューゲームを押した。

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