声の神に顔はいらない。

ファーストなサイコロ

173 マウントとっても悲しいだけだよね

「先輩、こんなつまらいな年末番組見るの止めてこれやりましょうよ!」

 そういって浅野芽衣が取り出しのは、最近……というか半年くらい前に話題になった乙女ゲームだ。まあ確かに年末番組はつまらない。年末やってる番組とか固定されてるからね。笑っちゃいけないシリーズに、紅白……あとは運動系とお笑い系? ボケーッと見るやつしかない。正直、どれもこれも飽きてる。
 NetflixとかHuluとか、そんなサービスに登録してるなら、それを見てるのがいいんだろうけど、売れない声優にそんな余裕はない。毎月千円くらいだろうけど、それすらも……ね。声優はオーディションの為に原作を買ったりしなくちゃいけない。
 けどオーディションを受けたってお金は入ってこないのだ。つまりは役が取れないと収支はマイナスだ。じゃあオーディションなんて受けなければ……なんて事になったら、それはもう声優は諦めたと言うことだ。この業界、名前で指名される人もいるだろう。
 でも、基本大御所と呼ばれる人達も普通にオーディションしてる。それはある意味、大御所と同じ舞台にオーディションから立ってる事になって、新人にとっては無理じゃん……とか怖じ気づく要素。けど、今ならそれがとても厳しい現実だとわかる。

 なにせ、大御所と呼ばれる人達でさえ、自分の力で……いや、声で新人と同じ土俵で奪い合いしてるんだから。それを考えると声優業界って異常だ。どんな大御所になっても安泰なんてことがないんだから。まあ俳優業界とかもそうなのかな? しらないからわからないけど、俳優業界とかは俳優ありきの配役が目立ってる気はする。まあ声優業界も実は指名されてるけど、オーディションには出てくださいっていう出来レースが一つもないなんて思わないけどね。

 でもそこら辺は私のような底辺からちょっと這い上がった暗いの声優にはわからない。それこそ、静川秋華クラスならそういう話があっても可笑しくないと思う。なにせ彼女を使えば売り上げ確保は確実だと言われる声優だ。円盤とかの売り上げとかではない。イベントでペイできるのだ。

 誰だって赤字の作品なんてイヤな訳で……それならちゃんと数字を持ってきてくれる静川秋華は超優良な声優だろう。まあ、それならもうアニメいらないじゃんって感じだけど。声優におんぶに抱っこの作品になっちゃうしね。

「おーい先輩きいてます?」

 なんか考えこんで色々と思考が横道にそれてた。私はこんな風に考えて横道にそれて、それでなんか無視してるとか思われて、話の会話の悪くなって嫌われる……なんて事がよくあった。私の悪い癖なんだろう。けどまあ浅野芽衣には別に気にならない。不思議な事じゃない。
 なぜなら、私も浅野芽衣もそうほう嫌いだと公言してるからだ。いや、公にはしてないけど、双方には互いに言ってるって事ね。浅野芽衣はファンには偽装してるし。

「聞いてる……それ、私も持ってる」

 さっき金なくて、Netflixとかにも加入出来ないとか言ってたのにゲームは買ってるのか? 当たり前である。好きな物まで我慢したら人生を生きていけないじゃないか。ゲームで私は癒やしを得てるのだ。なにせゲームの登場人物達は皆優しい。私を好いてくれる。最高だ。最初はツンケンしてる俺様系だって、私の手腕にメロメロである。

 現実の男よりもゲームの男なのだ。

「おお、どれくらいやりました? 私、忙しくてまだ誰も途中なんですよね」

 なんかサラッとマウント取りに来たな。流石浅野芽衣。けどことこれに関しては私の方が上である。私が逆にマウント取り返してやる!

「全ルート、全キャラ、裏ルートまで攻略済み」
「うっわ、先輩暇ですね。うける~」

 なんかバカにされた。やっぱりこいつ嫌いだよ。

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