声の神に顔はいらない。
170 知りたい気持ちが追ってくる
「せんぱーい、おじゃしまーす!」
コンビニの紙袋を持って浅野芽衣がドカドカと侵入してきた。この部屋に誰か入れるなんて初めてでちょっと緊張する。
「先輩の部屋ボロイですね~」
第一声がそれとか……こいつにはデリカシーという物がないのだろうか?
「帰っていいんだけど……」
「あははヤだなー先輩。今来たばかりですよ。外めっちゃ寒いんですから」
私が冗談を言ってると思ってるのか浅野芽衣が笑いながら床に荷物を置いて、コートを脱いで余ってたハンガーにそれをかけて、荷物からペットボトルの暖かいココアを出してそれを飲んで「ぷはー」と言ってる。いきなり自宅か!? と言いたくなる態度だ。ワンルームの狭い部屋に狭いキッチン、中央に古びたちゃぶ台。一応小さなテレビが畳に直に置いてあり、オーディションの為に買いそろえた原作の漫画や小説が端っこに平積みされてる。
そんな部屋を一通り見て浅野芽衣が一言。
「なんか昔のおじさんが住んでそうな部屋ですね」
私の心にズガンと何かが刺さった気がする。
「いや、オタクなおじさんですかね」
せめておばさんにしてくれない? さらにずかずかとなんか刺さってるよ。
「まあ先輩らしいですね。女っ気無いところとか。先輩ピースピース」
そんな声に反応してうつむいたままピースだけつくる。するとカシャカシャとスマホで写真を撮られた。
「よし、仲良し~先輩の家に来てるよイエーイ――と」
「ってちょっと待って! 何する気」
「何って投稿するんですよ。何の為に来たとおもってるんですか?」
「いや、何の為よ?」
何が目的かと思ってたけど、私を世間の笑いものにする気か! そうなんだ。なんて悪魔みたいな事を考えつく奴だろうか。恐ろしすぎる。ちょっとラジオでマウントとっただけじゃん。絶対にその事、根に持ってるよ。
「もう先輩忘れたんですか?」
「え? え?」
浅野芽衣が何を言ってるのかわからない。忘れたって何を。こいつと何かを約束した事なんかないよ。ラジオ以外でね。
「ほら、収録の時に言ったじゃないですかぁ」
「言った?」
「仲良しだって」
「誰と誰が?」
「私と先輩が」
「それはあんたが勝手に……」
「でも言ったのは事実で、先輩は否定してません」
「いや……本番で空気悪くすることなんか言えないでしょ……」
そうだよ。本番でそんな事をできるをわけない。そもそもこっちはネタだと思ってたんだけど……
「まあ確かにアレは私もノリで言ったんですけど、ほら、先輩って顔出ししてないじゃないですか? だから声オタの間では謎の凄い声優として話題なんですよ。それで仲いいと公言してる私のSNSにそいつらが集まってるんですよね。おかげで私のフォロワー増えてますよ」
「よかったわね」
自慢か? そう思ってると浅野芽衣は自分のスマホを見せてきた。
「うげ……」
思わずそんな声がでる。そこにはアニメアイコンのフォロワー達が私の事を大量に浅野芽衣に質問してた。有名人になりたいのなら、こんなに興味を持たれて嬉しいと思わないといけないのかもしれない。けど……その時私は単純に怖いと思った。
コンビニの紙袋を持って浅野芽衣がドカドカと侵入してきた。この部屋に誰か入れるなんて初めてでちょっと緊張する。
「先輩の部屋ボロイですね~」
第一声がそれとか……こいつにはデリカシーという物がないのだろうか?
「帰っていいんだけど……」
「あははヤだなー先輩。今来たばかりですよ。外めっちゃ寒いんですから」
私が冗談を言ってると思ってるのか浅野芽衣が笑いながら床に荷物を置いて、コートを脱いで余ってたハンガーにそれをかけて、荷物からペットボトルの暖かいココアを出してそれを飲んで「ぷはー」と言ってる。いきなり自宅か!? と言いたくなる態度だ。ワンルームの狭い部屋に狭いキッチン、中央に古びたちゃぶ台。一応小さなテレビが畳に直に置いてあり、オーディションの為に買いそろえた原作の漫画や小説が端っこに平積みされてる。
そんな部屋を一通り見て浅野芽衣が一言。
「なんか昔のおじさんが住んでそうな部屋ですね」
私の心にズガンと何かが刺さった気がする。
「いや、オタクなおじさんですかね」
せめておばさんにしてくれない? さらにずかずかとなんか刺さってるよ。
「まあ先輩らしいですね。女っ気無いところとか。先輩ピースピース」
そんな声に反応してうつむいたままピースだけつくる。するとカシャカシャとスマホで写真を撮られた。
「よし、仲良し~先輩の家に来てるよイエーイ――と」
「ってちょっと待って! 何する気」
「何って投稿するんですよ。何の為に来たとおもってるんですか?」
「いや、何の為よ?」
何が目的かと思ってたけど、私を世間の笑いものにする気か! そうなんだ。なんて悪魔みたいな事を考えつく奴だろうか。恐ろしすぎる。ちょっとラジオでマウントとっただけじゃん。絶対にその事、根に持ってるよ。
「もう先輩忘れたんですか?」
「え? え?」
浅野芽衣が何を言ってるのかわからない。忘れたって何を。こいつと何かを約束した事なんかないよ。ラジオ以外でね。
「ほら、収録の時に言ったじゃないですかぁ」
「言った?」
「仲良しだって」
「誰と誰が?」
「私と先輩が」
「それはあんたが勝手に……」
「でも言ったのは事実で、先輩は否定してません」
「いや……本番で空気悪くすることなんか言えないでしょ……」
そうだよ。本番でそんな事をできるをわけない。そもそもこっちはネタだと思ってたんだけど……
「まあ確かにアレは私もノリで言ったんですけど、ほら、先輩って顔出ししてないじゃないですか? だから声オタの間では謎の凄い声優として話題なんですよ。それで仲いいと公言してる私のSNSにそいつらが集まってるんですよね。おかげで私のフォロワー増えてますよ」
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自慢か? そう思ってると浅野芽衣は自分のスマホを見せてきた。
「うげ……」
思わずそんな声がでる。そこにはアニメアイコンのフォロワー達が私の事を大量に浅野芽衣に質問してた。有名人になりたいのなら、こんなに興味を持たれて嬉しいと思わないといけないのかもしれない。けど……その時私は単純に怖いと思った。
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