声の神に顔はいらない。

ファーストなサイコロ

154 大きな子供の、大きな夢 11

 カオスだった。路上芝居をやって気持ちよく二人でそこらの壁に背中を預けてたときだ。なぜかハイスクールの学生達と、ヤバ目な大人達がかち合った。こんなのカオスにならないわけない。いや、学生達が脅されて還ってくと思ったんだが……いかんせん、最近の学生は強い。

「何なんですか貴方たちは? 私達はこの人に用があるんです。暴力を振るう気ですか? ネットに流しますよ。言い逃れはできません。既に放送中です!」
「うぐっべ、別にこっちもそいつに用があるだけだ。別に暴力なんてしねーよ」
「なら、私達の後にしてください。こちらが先約です」
「いいや、それは譲れねーな。そもそもこいつは今から借金のかたに強制労働だ。もう会うことは出来ねーよ」

 うげ……なんかとんでもない事が聞こえたぞ。でも心当たりがあるだけになんともいえない……

「借金……そんなの待ってればいいでしょ!」

 この子、女の子なんだけど、体格が良くて、いかにも気が強いが、いささか気が強すぎない? 本当にそいつら危ない奴らだよ? 

「待ってたんだよこっちは! そっちが滞納してるからこうやって出張って来てんだろう!」

 ごもっともである。でもでも、そもそもがアルバイトを幾らやったって払える様な物ではない。利子で消えて、借金自体は一ドルたりとも減ってないのだ。

「本当……なんですか?」
「まあ……ね」
「せっかく、コデッチさんから聞き出したのに」

 彼女達はプラムと同じ学校のそれこそ演劇をやってる集まりだそうだ。ちょっと路上劇で話題になってたプラムに声を掛けて僕の事をしったらしい。そのプラムはこっちの事にはまるで無関心な様子。いつもの様に空見てる。講師なんて僕にはそもそもか無理だが、引き受ける引き受けないの話でもない。なにせ僕はもう……

「ありがとう、楽しかったよ」

 僕は最後のお別れをプラムに言うよ。きっともう会うことはないだろう。彼女がもしも女優とかを志したりすれば、いつか有名になったりするかもしれない。そうしてそんな彼女を画面の向こうから見れたり……そんな妄想をちょっとした。
 でもプラムは本当にきまぐれで、何を考えてるかわからない。自分に興味を持ったのも、ただの気まぐれがおおきそうだし、きっと自分がいなくなったら、もう演劇なんて物はしないだろう。それかここに来た彼女達がプラムを引き受けてくれるのか……いや、彼女達では不思議ちゃんであるプラムを引き受けるのは厳しいだろう。

「またね」

 今までの流れを全く無視したようなプラムの言葉。彼女はもう会えないなんて理解してないようだ。僕はもう一生借金返済の為に奴隷の様に働かされるだけなのに……

「嬢ちゃん、こいつの事はすっぱり忘れたほうがいいぜ。二度と会えないんだからな」

 プラムに残酷な事をいう借金取り。でもヘタに希望を持たせて劇場の前を転々とされても、その光景を目に浮かべると、寂しい。ならいっそ……すると諦めると思ってた、学生の子が口を開く。

「待ちなさい! それは本当に人道に則ったやり方なんですか! 法に従ってないのなら、その徴収は違法です!!」

 何故に彼女もそこまでま必死にかばってくれるのか、僕には謎だった。

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