声の神に顔はいらない。

ファーストなサイコロ

138 想像は受け取る人でイマジネーションも変わる物

 日が昇りかける朝方、劇場を背景にジュエル・ライハルトと愉快な仲間達……じゃなくて、その劇団員達がメイクに衣装着て集まってる。

 今日は一日、PVのための素材を撮るために劇場は休みである。まあ、元々この日が休みで、寧ろこの日しか休みがなかった。なにせジュエル・ライハルト達の劇団は人気が有る。チケットだって予め売られてるんだ。

 だから急に休みにするとか基本的に無理なんだ。なので今日撮ってしまわないと、次のオフなんて三週間後くらいだ。

 待ってなんていられない。というか流石にそれだけたってると日本に戻ってる。まぁ実際、PVだけなら自分は必要ない。何もやってないしね。けどこれは二人をより知るのに都合がいい。

 この延長戦上に自分の映画もあるようなものだからな。だから見ておきたい。今日素材を取り終えれば、後はバッシュ・バレルのチームが編集から完成まで数日でやってくれるらしい。勿論寝る間を惜しんで――である。
 とんだブラックだが、仕事が入るまでは暇だからそういう波はあるらしい。仕事なくても、youtubeで動画をあげてはいる様だけど、案外バッシュ・バレルはこだわりが強い。

 だからチームが暇な時はとことん暇なんだとか。バッシュ・バレルって感性で仕事してそうだしな。というかYoutubeでの動画投稿は仕事なのか……最近も実は投稿されてて、結構再生数いってた。ここ数ヶ月遊んでた印象しか……とか思ってたが、どうやら撮りためてた奴があって編集チームが頑張ってたみたいだ。ちょくちょくパソコンを借りてくるな……とか思ってたが、どうやら動画の出来を見てたらしい。
 バッシュ・バレルの奴はパソコンとか持ち歩いてない。このご時世に、パソコンも持たずにやってるとか……クレイジーだが、チームの面々は不満有るみたいだ。けどそんなのバッシュ・バレルは気にしてない。流石は自己中心的な奴。

 それでもチームは機能してるんだから、まあ問題ないと言えばそうなのかもしれない。バッシュ・バレルも『着いてこれる奴だけ残った』とか言ってた。だから今のチームはそれでも回る……回せる人だけが残った結果何だろう。

 そんなバッシュ・バレルの有能なチームの人たちは準備を色々と手早くすませてた。色々な撮影許可とかも手早く取ってたらしい。有能すぎる。アメリカとか一見そこら辺緩いのかと思ったけど、そんな訳はないらしい。自由の国だからって何だって自由な訳ではない。

 とりあえず朝焼け撮り一本勝負である。劇場前でスタンバイする劇団のみなさん。音楽は肩にラジカセ背負った年季有りそうなコスプレした一人が雰囲気を出して体を揺らしながらかきならしてる。カメラは三台を使ってアングル変えて撮るみたいだ。

 そして最初に抜くのはプラム・コデッチさんである。彼女は他の劇団員とは違い地味な格好をしてる。地味と意ってファンタジー感あるけどね。イメージは不思議の国のアリスみたいな? けど本来の彼女の容姿ではそれでも派手だった。というか、彼女は元から家世離れした雰囲気があるから、それと容姿がマッチしすぎてるんだよね。だから衣装程度じゃ隠せないから、今は黒いおかっぱのカツラを被ってる。

 そうなると結構印象が違う。元のプラム・コデッチさんの容姿は真っ白な肌に銀糸のさらさらの髪が靡き、黄金の瞳が更に輝きを与えてるという、宝石から生まれたの? 的な人だ。けど髪を黒のカツラで隠し、瞳も地味な茶色に今は変えてる。

 一応浮世離れ感は薄れてるが、それでも顔の良さって隠せないんだなって思う。寧ろ日本人とかにはこっちの方が受けそうまである。プラム・コデッチさんは海外の人に珍しく、容姿が幼く見えるんだ。成人してる筈なのに、少女感があるというか……彼女は何かを追いかける様に走ってる。その先であうのはウサギの長い耳をつけたジュエル・ライハルトだった。

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