声の神に顔はいらない。

ファーストなサイコロ

129 それはきっと見たくなかった光景

 ジュエル・ライハルト達からチケット受け取って別れてから、ギャンブルやる気になれずに、バッシュ・バレルを探してると、ここのスタッフに呼び止められた。そして連れて行かれたの個室だ。やけに豪華な扉を開けると、そこには美女二人にパンツ一丁のバッシュ・バレルが踏まれてた。

「…………」

 どんなプレイしてるんだこいつは? それになんでパンツ一丁なの? 追い出されるぞ。流石にカジノでそんな行為したらダメだと思う。怖いお兄さんにつまみ出されるぞ本当に。

「いたたたたた! おい、助け! うぐ!?」
「勝手に喋らないで。負け犬さん」
「そうですよ。今、この場で貴方に人権なんて物はありません」

 何か言いかけたバッシュ・バレルの尻に彼女達の高いヒールが食い込んでる。かなりハードなプレイをしてるな。それが良いのかバッシュ・バレル? てか本当にこれはプレイなのか? 普通に痛そうにしてるけど……まあこれで「はあはあ」言ってる奴なら、流石に監督として考え直した所かもしれないけど。

「えっと、如何したらいいのかこれ?」
「簡単ですよ。彼が負けた分のお金を払ってくださればそれで」

 やっぱりそういうことか。バッシュ・バレルの奴、こんな風体……今はパンツ一丁だけど……かなりワイルドな見た目してるくせに賭け事はさっぱりだ。けどそれはこいつ自身が一番理解してる。だからこそ、バッシュ・バレルに取ってはカジノは女を漁りに行く場所であって、儲ける場ではない。
 そんな奴が大負けするか? こいつはワイルドで野性的なのはそのままだ。野生の勘で引き際を見誤るなんてことはない。カジノをやるときは、ちょっと知った被って女の興味を引くため。

「はめられたのか?」

 自分の言葉にバッシュ・バレルは応えない。プライドでもあるのかもしれない。その代わりに、二人の美女が応える。

「はめてなんて居ませんよ?」
「そうです。私達楽しく遊んでただけなのですよ」

 個室には大ききな器に入ったボトルが何本かある。まあ開けられたの一本だし、そのほかの奴は器の中の氷で冷やされてるだけにとどまってるな。バッシュ・バレルもこの程度じゃ、酔い潰れるなんてことはない。こいつは酒が強いし……なら本当にただ美女に誘われてホイホイついてきてこんなことに? アホすぎるぞ。

「私達は止めたんですよ? けどバッシュ様がプライドとかなんとかおっしゃって」
「そうです。そして金がないならこの身を賭けるって脱ぎだしまして……なので私達が今は彼のご主人様です。ほら、脚をおなめなさい」

 うらやま……じゃなく、本当に今のが本当なら救いようがないぞ。確かに二人ともめっちゃ美人だが……そこまでアホだったこいつ? もっと強かだった筈だ。何かおかしい気もするが、自分は探偵じゃない。その何かがわからない。

「汚い舌をだすな!」
「ぐふっ!!」

 酷い……舐めさせようとして舐めようとしたら頭から踏みつけられた。ガゴンと床に頭がぶつかってるぞ。 だけどバッシュ・バレルは闘志を燃やした瞳でこういうよ。

「はっ、いい気なるなよ。今に見てろ。そいつが勝って、俺が逆にお前等をヒイヒイ言わせてやるぜ! ベッドの上で泣いてもゆるしてやらねえぞ!」
「そう言ってますが?」

 うん……自分もバッシュ・バレルが何を言ってるのかわからない。

「えーと、それでは存分と楽しんでください。自分は今夜はこれで帰るんで」
「おい! ちょっと待て!! いや、マジで!」

 そんな声を背に受けながら、個室からでた。その直後に「うおおおおおおおん」というなんとも下品な雄叫びが聞こえてた。

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