声の神に顔はいらない。

ファーストなサイコロ

125 光の王子様に出会った

 今日はなかなかに調子がいい。この前の負けを帳消しに出来るかもしれない。自分はそこそこ小金持ちだと思ってるが、ここに来るとその認識の狭さを思いしる。流石はギャンブルの都市ラスベガスのVIPルームである。一応破産しない位の蓄えはある。
 あるけど、流石にイヤな汗が出てくる。なにせ額が額だ。だが今日はこの前の負けの分も既にあまりあるくらいに勝ってる。いくつかの台を回って色々とやったが、収支的にはプラスだ。とりあえず一息つくために、用意されてるバーにいって一つ注文する。

 このバーもVIPルームにあるだけあって、高い酒しか置いてない。おいてないが勝ってるからそこら辺は気にしなくてもいい。こうやって勝たせても金を落とさせるシステムなんだろう。ただでは返さないというカジノの執念深さを感じる場所である。

「HEY」

 一人飲んでると、そんな声が聞こえた。まさか自分ではないな……とか思ってるともう一度聞こえて、更に隣にだれか来た。横を見ると金髪で長身の爽やか系イケメンがそこにいた。バッシュ・バレルは荒々しさ全開で男臭い奴だが、この隣の人はなんか王子様って見た目だ。ある意味であいつとは正反対だ。

 そうして彼は何やら英語でしゃべり出してる。おっと翻訳翻訳――

「なかなか良い調子みたいだね」

 どうやら彼は自分の事をみてたらしい。流石に一緒のテーブルにいたらこのイケメンを見逃すはずがないし、一緒にはやってないと思うが、そうだとしたら後ろとかで、さっきのバク勝ちを見てたのか? まあちょっとギャラリーが集まって盛り上がってたし、なくもないだろう。とりあえずその人達にはお酒をサービスしておいたが……この人は受け取ってないようだ。

 とりあえず何かサービスしておいた方が良いかな? ここに居るって事はそれなりの地位の人だろうし。とにかく媚び打っていくスタイルである。敵は作らない方が良いというのが、自分のモットーだ。少しのお金で心証がよくなるならそれは投資の様な物だと思ってる。

「マスター」

 そう言ってグラスをキュッキュッと拭いてるマスターに声を掛ける。なんでバーのマスターってグラスを拭いてるだけで絵になるのか……あれか? 後ろの酒が良いあんばいにみえるのか? 

「彼に良い酒を――」
「いえいえ、それには及びませんよ」

 丁寧に自分の言葉を遮るイケメン。まさか断られるとは、バッシュ・バレルなら一番高い酒を出せって言うのに……意外すぎる。まあ見た目的ににそんな人ではない様に見えるが。まさに見た目通りなのか?

「えっと貴方は?」
「これは失礼。私は『ジュエル・ライハルト』役者をやっております」

 そう言ってまさに王子様の様に優雅な自己紹介をやってくれた。なんか周りの女性達がうっとりしてる様に見える。役者……けどこんな人みたことないような? てかわざわざ役者っていうって事は……自分はこの『ジュエル・ライハルト』と名乗った人の目的がわかったきがする。

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