声の神に顔はいらない。
108 声がたった一つの私の武器
「うおっしゃあああああああああああああああああああああああああああああ!」
そんな感じで拳を天高く突き出すマネージャー。あんなテンション高いあの人を初めて見た。そこまで嬉しかったんだね。マネージャーは何が楽しみなのかよくわからない人だった。仕事は真面目にやってくれてるが、情熱がある? かは正直わからなかった。まあ、こんな私を採用してくれたから、情熱もあったんだと思うけど、それが表に出る人ではない。
いつだって淡々と自分のやるべきことをやる人だ。そんな人が今、その喜びを全身で表してる。とても貴重だからとりあえずスマホでその動画を撮っておく。何かに使えるかもしれないし。まあ残念な事に、その瞬間って私たち二人とも見てないんだけどね。アニメ見てたからね。
でもここは私の腕の……いや、声の見せ所だ。
「スゴイ! グレイトでーす!」
片言留学生。
「ふん、そんなに喜んじゃって……まあけど、よくやったわ」
ツンデレお嬢様風。
「す、スゴイです。あ、あの、うん……」
一生懸命褒めようとしてる引っ込み思案な女の子風――と後他色々とキャラを変え、声を変えて褒めてみた。図とマネージャーはなぜか冷静になってた。
「なんか匙川が視界に入るとテンション下がるな。声だけなら最高なんだが……」
「……失礼しました」
確かにこんな不細工が視界に入るとテンション下がりますね。わかります。私だって可愛い声を聞いて想像してる間はとても気持ちいい。けどふと我に返って声優の顔、もっと言うと自分の顔とが浮かぶと吐き気を催すこともある。
やっぱり声優の顔なんて見えない方がいい。ちゃんとキャラの顔が浮かぶような声なら、声優を塗りつぶせるかもしれないが、今発してる声は一応今やってるアニメを意識してる物もあるけど、幅広く聞かせるために、適当にそれっぽい声をつくって出してる奴もある。
だからキャラの顔って奴はそれぞれで想像してもらうしかない。そんな中にふと私が入ると……その想像が塗りつぶされてしまうんだろう。ごめんなさい、強烈な不細工で。いや、普段は気にもとめない位の不細工な筈だ。声の相乗効果で期待値が上がってふと見るから、想像以上の不細工に見えるだけで、私は不細工の方ではまだマイルドの方だと思ってる。
まあ自分の心のためにそう思ってるだけだけど。
「ははっ、だがお前なかなか凄い奴だぞ。面白い。負ける気は無いがな!」
  そう言って愛西さんはレーンに立つ。確かにこのままでは想像以上に早く終わる。まだ彼の心を動かすには足りない。こうなったら……
「愛西さん、目を閉じて想像してください」
「なんだ? 集中してるんだが?」
「いいから、集中の邪魔はしません」
「ふむ……」
そう言って彼はボールを構えたまま目を閉じる。私は息を吸ってあの人が好きそうな女性をイメージしてこういうよ。
「もっとパカーンって気持ちいいの、私みたいな?」
「――おふっ、任せとけ!!」
どこまで想像を膨らませたのかは私にはわからないし、あれで好みに沿ってたのかはわからない。けど、愛西さんは豪快にストライクを――って惜しい! 一本残ってる。
「ぶっねえええええ!? 恐ろしいなお前の声!!」
「ちっ」
私は思わず舌打ちした。
そんな感じで拳を天高く突き出すマネージャー。あんなテンション高いあの人を初めて見た。そこまで嬉しかったんだね。マネージャーは何が楽しみなのかよくわからない人だった。仕事は真面目にやってくれてるが、情熱がある? かは正直わからなかった。まあ、こんな私を採用してくれたから、情熱もあったんだと思うけど、それが表に出る人ではない。
いつだって淡々と自分のやるべきことをやる人だ。そんな人が今、その喜びを全身で表してる。とても貴重だからとりあえずスマホでその動画を撮っておく。何かに使えるかもしれないし。まあ残念な事に、その瞬間って私たち二人とも見てないんだけどね。アニメ見てたからね。
でもここは私の腕の……いや、声の見せ所だ。
「スゴイ! グレイトでーす!」
片言留学生。
「ふん、そんなに喜んじゃって……まあけど、よくやったわ」
ツンデレお嬢様風。
「す、スゴイです。あ、あの、うん……」
一生懸命褒めようとしてる引っ込み思案な女の子風――と後他色々とキャラを変え、声を変えて褒めてみた。図とマネージャーはなぜか冷静になってた。
「なんか匙川が視界に入るとテンション下がるな。声だけなら最高なんだが……」
「……失礼しました」
確かにこんな不細工が視界に入るとテンション下がりますね。わかります。私だって可愛い声を聞いて想像してる間はとても気持ちいい。けどふと我に返って声優の顔、もっと言うと自分の顔とが浮かぶと吐き気を催すこともある。
やっぱり声優の顔なんて見えない方がいい。ちゃんとキャラの顔が浮かぶような声なら、声優を塗りつぶせるかもしれないが、今発してる声は一応今やってるアニメを意識してる物もあるけど、幅広く聞かせるために、適当にそれっぽい声をつくって出してる奴もある。
だからキャラの顔って奴はそれぞれで想像してもらうしかない。そんな中にふと私が入ると……その想像が塗りつぶされてしまうんだろう。ごめんなさい、強烈な不細工で。いや、普段は気にもとめない位の不細工な筈だ。声の相乗効果で期待値が上がってふと見るから、想像以上の不細工に見えるだけで、私は不細工の方ではまだマイルドの方だと思ってる。
まあ自分の心のためにそう思ってるだけだけど。
「ははっ、だがお前なかなか凄い奴だぞ。面白い。負ける気は無いがな!」
  そう言って愛西さんはレーンに立つ。確かにこのままでは想像以上に早く終わる。まだ彼の心を動かすには足りない。こうなったら……
「愛西さん、目を閉じて想像してください」
「なんだ? 集中してるんだが?」
「いいから、集中の邪魔はしません」
「ふむ……」
そう言って彼はボールを構えたまま目を閉じる。私は息を吸ってあの人が好きそうな女性をイメージしてこういうよ。
「もっとパカーンって気持ちいいの、私みたいな?」
「――おふっ、任せとけ!!」
どこまで想像を膨らませたのかは私にはわからないし、あれで好みに沿ってたのかはわからない。けど、愛西さんは豪快にストライクを――って惜しい! 一本残ってる。
「ぶっねえええええ!? 恐ろしいなお前の声!!」
「ちっ」
私は思わず舌打ちした。
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