命改変プログラム
1506 校内三分の計編 166
「たのもー!」
私はこの街の領主の館を我が物顔で歩き、途中であった執事やメイドさんたちにマイオさんを何故かお願いされ、更にはエスコートまでされてしまった。普通ならアポもない客人なんて追い返すんじゃないだろうか? それこそ同じ立場かソレ以上の人ならまだ丁寧に対応されるのも納得できる。
けど、私はただの一介の冒険者である。そんな私がアポもなく……
(いや、一応アポは取ってるのかな?)
よくよく考えたら門番の人が後で行くって伝えてたはずだ。それならそれはアポって言うんじゃないだろうか? 多分いうと思う。私の浅い知識てもそれはアポイントメントだと言ってる。なら私はアポを取ってたからこの対応? いや違う。だって割といつ来てもこうだし。
今もほら……
「マイオ様をお願いしますね」
とかなんかエールされちゃってるし。いやいや、私の事、なんだとこの人達は思ってるの? そんな事を思ってると、なにか、強い視線を感じて私は振り返った。すると廊下の角の部分にメイドさんがいた。私をエスコートしようとしてた……ってわけではなさそう。
「あの人は?」
私はここにもよく来てる……というか孤児院以外では一番よく来てるからだいたい此の屋敷の人達はしってる。なのにそんな私でもあの人は知らない。見たことないメイドさんだ。
「ああ、彼女は新人なんです。最近街も活気が出てきて、マイオ様も忙しくなられたので、更に人員を補充してるのです」
「なるほど」
私はとりあえずその廊下の角の人にペコリと頭を下げる。するとニコリと笑って丁寧に完璧なお辞儀をしてくれた。
「新人さんですよね?」
「彼女は新人ですけど、他の貴族様の所でメイドをやってたそうです」
「そういう事ですか」
それならあの完璧な所作も納得できる。まあなんだか、あの人の笑顔が怖い気がするけど……多分私が人見知りだからだろう。他人は怖いって思っちゃう。
「ささ、マイオ様も今か今かとお待ちですよ」
「そうかな?」
「そうですよ」
この人達は本当に私たちの関係勘違いしてない? 別に私たちはなんでもないからね。私的にはマイオさんは頼りになるお兄ちゃん的な感覚だ。それにマイオさんは私のスオウに対する気持ち知ってるし。だから絶対にこの屋敷の人達が思うような事にはならないのに……まあいいけどね。
そして冒頭、私は「たのもー」と言って空気をぶち壊して入っていったのだ。
「ぷっなんだいそれ?」
彼の開口一番のセリフがそれだった。まあそういうよね。私だって「たのもー」なんて言って入ってきたやつにはそういうよ。正しい。なんか私は無性に恥ずかしくなった。
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