命改変プログラム
1505 校内三分の計編 165
「セツリさん、こっちです」
「ええ……」
なぜだろう……なぜ此の人は私の案内をしてるのか……なんかちょっとゾワッとした。なぜかというと、私は街に戻って来た時、別の方の出入り口を使ったのだ。いやだって、確実に此の人がまた街を出た時の門にはいると思ったから、わざわざ街をグルっと回って、反対側の出入り口まで来たんだよ? それなのになぜか此の人はいるのだ。おかしい……これがおかしくなかったらなにがおかしいのか私にはわからない。
だって反対側だよ? それなりに距離あるよ? いや、そもそもがあんた門番でしょ? なんでこっちにいるのよ。もしかして時間が来たらローテーションしてるとか? そうであってください。でないと、なんか怖いし。
「マイオ様はいつでもいいとおっしゃってましたから大丈夫ですよ。どうでしたか今日の狩りは?」
彼は色々と私に話を振ってくる。私はソレを曖昧な相づちでやり過ごす。
(ううー、しんどい……)
なんかラブレターの事はなかったかのように振る舞ってる彼。意識的に多分そうしてるんだろうけど……ハッキリ言えばこっちが気が気じゃないよ。肉体よりも心に来る……一応笑顔を作ってるけど……ちゃんと出来てるか不安だ。
別に此の人はいい人だとは思う。でも……
(だってNPCだし……)
そこだよね。実際、ゲーム内で付き合ってる人っているんだろうか? いやプレイヤー同士なら、時々、ネットゲームで知り合って結婚しました――的なのを見る。もしも私とスオウがそこまで行ったら、まさにそれになるとおもう。
(ぐふふ)
「どうしました?」
「いえ、こほこほ、なんともないずよ」
しまったしまった、思わず結婚式の様子を想像して、家族も作って……ってところまで想像してしまったら、変な声が出てた。私は慌てて、ごまかすよ。
(まあけど、流石にNPCと付き合ってる人なんて……)
よくよく考えたら、このゲームの住人たちは高度なAIというかもう皆心を持ってるとしかおもえないからね。しかも可愛いとか格好いい奴はこんな世界だからか、結構いる。それを考えたら、NPCと付き合ってる人はいそうだよね。ただ、言わないだけで……普通にデートとかしてるだけじゃ、傍から見てたら気づけないし……ならそんなにおかしな事ではない?
(予行練習にはいいのかな?)
私はそんなひどい事を考えながら歩いてると、マイオさんがいる領主の館まで来てた。
「では自分はこれで」
「あ、ありがとう御座いました」
私はそう言って、彼を見送る。「はあ」思わず彼が見えなくなると、そんなため息がでた。そして私は別段ノックとかせずに、領主の館へとズカズカと足を踏み入れた。
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