命改変プログラム

ファーストなサイコロ

1496 校内三分の計編 156

「では!」

 そう言って皆が衝撃が回復してない隙きをついてクリスのやつが僕の腕を引っ張る。こんな風に見えてもバリバリの特殊な組織に属してる奴だ。そういう訓練だって受けてるだろうし、鍛えてもいるだろう。
 でも僕だって体は最近鍛えてるし、戦闘技術もラオウさんに仕込まれてそこそこなものになってると思ってる。どうやら戦闘では僕のこの目はかなり有利に働くみたいだからね。
 だから一瞬、僕はひっぱられる直前にうまく踏ん張った。だってこの目があれば、何をしようとしてるのか、事前にわかってしまう。僕に不意打ちは基本効かないのだ。
 それこそ真後ろから強襲でもされない限りね。だから僕は一瞬、クリスのやつに抵抗した。まあ結局一瞬だったんだけど……なぜかって、それはこいつがやっぱり普通じゃなかったからだ。もしもこれが……クリスが普通のただの女の子なら、僕はそのまま彼女を引き止める事が出来ただろう。彼女の力よりも普通に僕のほうが強いし。
 でもそこはほら……こいつ普通じゃない。変な知識一杯持ってる。人体のツボとかも知り尽くしてるんだろう。なんか握られてる手のツボめっちゃ押されて痛い。

「いだ! いだだだだ!!』
「さあ、楽しいしデートをしましょうねスオウ」

 ふざけんな、めっちゃ痛いぞ。なにめっちゃいい笑顔で状況を演出ししてんだ。こっちは泣きそうだっての。それをこいつはいい笑顔で、まるでカップルの一場面かの様に演出しやがってる。
 そして大体は僕の居たがる顔よりも、クリスの笑顔に注目するんだろう。なんか普通に殺意が高まってる気がする。でも手が痛すぎてそれどころではない。全体の力では僕が上の筈なのに、ツボを的確に抑えられて、成す術が僕にはなかった。



「ここまでくればいいですかね」
「ようやくかよ」

 学校からそれなりに離れるとようやくクリスの奴が僕の手を離してくれた。僕は自分の手を見てびっくり……だってクリスに押さえられてた部分がめっちゃ凹んでる。

(も、戻るよなこれ?)

 そう思うくらいには凹んでるよ。よくあんな笑顔を保ったまま、これだけの力を一部分に出せたな……恐ろしすぎる。

「どういうつもりだよ? 絶対に選挙に影響するぞこれ」
「スオウだって知ってるじゃないですか。生徒会長選挙なんて私にはただの遊び、イベントデスよ」
「その割には楽しく破ってそうだったけど? それにお前は摂理を勝たせるつもりだったんじゃないのか?」

 そのはずだ。確かにクリスにはそもそもが勝つ気なんてなかった。こいつの立場上、生徒会長なんて役職につくなんて出来ないからだ。こいつはスパイ……いつ学校から消えたっておかしくない。
 だからこそ、生徒会長なんて立場になれるわけがない。でもそこで摂理だろ? おもちゃにして遊んでたんじゃないのか?

「まあ色々と私にも有るんデスよ。それにこのままじゃ、日鞠に勝てそうにないデスし」
「だからこんなアホな事を?」
「アホな事とは失礼デスね。これぞ逆転の一手、日本的に言うと天王山、関ヶ原の戦いですよ」
 
 なんか間違ってる気もするが、どうやらクリスの奴はまだ諦めたわけじゃないらしい。

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