命改変プログラム

ファーストなサイコロ

1370 校内三分の計編 30

 夏休み終わり、自分たちの動きが一時期ストップした。それは世間を騒がした騒動と共に、会長がその歩みを止めたからだ。いつだって先頭で自分たちを引っかき回し……じゃなくて、先導してしてきた会長が止まったら自分たちも動けない。なにせいつだってとんでもない道を切り開いてきたのが会長なんだ。

 まあ休みと思えば……ありがたかったと思う。でも一日……二日……一週間にもなると、歩みを進めない事に日の出ジャーナルの面々もそして生徒会の面々もそわそわし出した。なにか出来る事は無いか……と動きだす。一応これまで作ってきた事は自分たちでやれるから更新は続けた訳だ。

 でもそれは刺激と言うよりもローテーションだ。会長が無茶言ってくる刺激はない。どうやら俺達は会長が持ってくる嵐がないと物足りない体になってしまってたみたいだ。まさか高校生活でブラック会社の社員の気持ちをしるなんて……な。

 いや、ブラック会社では皆死んだような目をしてるんだと思う。そう言う印象だ。けど、自分たちは違う。そう思ってる。でももしかしたらこれこそがブラックな心理なのかも知れない。

「会長が戻ってきたとき、俺達も頼りになるんだってそれを示したい」

 そう言ったのは副会長だった。副会長は二年生の人だ。実際、一年の下につくってどうなの? とか思うが、そんなのは最初だけだった。今や会長に誰よりも従順だ。でもだからこそ、彼がそんな事を言ったのが意外だった。彼は従順で保守的なイメージだったからだ。

 寧ろそんなことをいうのなら雨ノ森先輩とかだとおもってた。自分たちはこの時、自分たちで色々と頑張って会長という生物の思考をトレースしようとしてみた。そしてそこで出来たのが、会長AIである。トレンドのAIを使って擬似的に会長を作ろうと自分たちはしてみた。

 色々とこれまでの事でそういうのに詳しい大人とも繋がりがあったしね。AIなんて学生に作れる物ではないし、皆のプログラマー班の腕はメキメキと上がってたが、だからと言って一朝一夕でAIなんて物が作れる訳はない。なので自分たちが目指したのはなるべく「会長ならこんな提案をするだろう」とか「会長ならここでこう言うはずだだ」なんて物を詰め込んだ、対話プログラミング? みたいな? 

 多分会長がいなくなってて、おかしくなってたんだと思う。自噴達は結局、会長を求めていたんだ。でもそれでもあの時、これを作ったのは間違ってたとは思わない。だってこれであの時は乗り越えられたからだ。

 そして会長が戻ってきて、会長は更に動きだす。遅れた分を取り戻すように……地域との交流を積極的にして、地域にある塾とかと連携とかしだした。冬に近付くにつれて、会長は作り上げた学校システムみたいな物を周辺の学校にも広めて行こうとしてるようだった。



 もうね……学生の域を超えた試みだ。普通はどこかで破綻するか、なにかあるだろう。ストップがどこかからかかる物だろうが……まだその時は来てない。会長はもしかしたらそういうのもわかってて回避してるのかもしれない。
 
 だからこそ、そんな人だからこそ、会長は彼女しかいない……と思うんだけどな。自分は今年の選挙ポスター並べた壁を見つめてそう呟く。

「おい、贔屓する記事なんてダメだからな」
「わかってるよ」

 自分たちは権力によってここまで来たが、だからって今の会長に不度した記事を書くつもりはない。そんな事を頼まれてもないし、それを良しとする人でもない。てか自分編集長……というか社長なんだけどな。まあ皆学生気分ではあるからな。
 距離感の近さ……それは悪い事ばかりでもない。こう言う学生気分は、きっとリアルな会社にはないだろうし。窓の向こうに校舎が見える。

 日の出ジャーナルは校舎から飛び出した。一つの会社となったとき、学校近くの雑居ビルに移った。学生なのに社長、学生なのに会社員……見たいな事になってる。不思議な事だ。でも、ここからの光景は悪くない。

「おう、威張ってるか?」
「呂鉢先輩!」

 時々こうやって呂鉢先輩も顔を出す。多分学校内じゃないから気安いんだろう。
 

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