命改変プログラム

ファーストなサイコロ

1361 校内三分の計編 21

「それではひとつ質問です。なんで私が勝てたと思いますか?」

 新生徒会長がなんだか自虐的なことを言い出した。まぁけどそれが興味ないかと言えば嘘になる。何せ大方の予想は2年生のどちらかだろうって見方が強かったし、更に不可解なのは、途中で目に見えて情勢が変わった――って訳でもなかった事だ。

 話題は最初にちょっとだけあった程度。その日あった事をスマホのメモ帳に綴ってるからそれを振り返ると、端的に言えば『一年生が立候補した』って事が大きい。なにせまだ入学間もない時期だ。
 新入生は生徒会長選挙に立候補なんてしない。それが普通だし、当たり前なんだから、そんな当たり前を覆した衝撃はかなりのものだった。
 まあけど、そもそもが生徒会長選挙に興味がある生徒の方が少ないんだから、それもやっぱり一時的なものだった。クラスでは多分それなりに盛り上がってたみたいだが、他のクラスでは他人事、他クラス事だ。自分だって物好きがいるなーって感じだった。勿論、この段階で当選するなんて思ってる奴はいなかっただろう。いや、同じ中学から上がってきた奴らは以前から彼女の事を知ってる訳で、早くも頭角を現してきた――と思ったのかも知れない。そこまで考えて思いついた。

「あれだな、同中の奴らに頼んだんだろう! 新入生が票を取るにはそれしかない」

 自分はどや顔でそういった。するとその瞬間に何故か先輩にシャッター切られた。何故に? 絶対に自分の事なんか撮らないじゃん。なのに何故にこのタイミングで撮るの? 

「あははは! これが世に言うどや顔だな!」

 そんなこと言って大笑いしてる。イラッとする。先輩だけど、イラッとする。どれか先輩のコラッた画像でも学校掲示板にでも流出してやろう。そう心に誓った。

「呂鉢先輩、笑ったら失礼ですよ」
「俺は良いんだ――良いんですよ。こいつは俺の後輩、いや部下……いや手足なんで!!」
「よしんば部員ですけど、今ただの後輩になろうかと思いました」
「ふふ、流石に一人になっちゃうと廃部ですね」
「それだけはご勘弁を!!」

 なんで自分にじゃなくて彼女の方へと頭を下げるんだ? 止めるか止めないかは僕の一存なんですけど……てか、さっきから気になってたが呂鉢先輩があんてに腰が低いのは始めてたみた。自分は新生徒会長に近付いてこっそりと耳打ちする。

「なあ、どんな弱みを握ってるんだ?」
「そんな弱みなんてありませんよ。私達は互いに信頼してるんです」

 そう言ってクスクスとする新生徒会長。信頼……ね。それにしては明らかに呂鉢先輩が下手に出てる気がするぞ。そう思ってると、ズイッと新生徒会長が自分に顔を近づけてくる。女の子特有の甘い香りがした。

「今のでファイナルアンサーでいいですか?」
「そういわれても……他に思いつく事なんて……」

 はっきり言って、さっきの呂鉢先輩の反応で今の回答が間違いだとは気付いてる。でもだからって答えを導き出せるかというと……自分はそんな優秀じゃない。だから僕は両手を挙げて降参した。次いでにその仕草と共に、後ろにさがって新生徒会長から離れる。いや変な気持ちに成ったら不味いじゃん。なりたくないし。だから距離をとった。

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