命改変プログラム

ファーストなサイコロ

1289

(体が重い……)

 風をなんとかまとめて再び風帝武装……いや、それにすらなってない物を纏って僕は走った。横で誰かが何か言ってたが、継続ダメージと聞いて直ぐに飛び出した。確かその前は回復系が効かなくなってるとも。そうなったらもう後は死を待つだけだ。一度の死でこのエリアバトルからはリタイアとなる。ということは、僕のリタイアは回避できない。この矢、胸に刺さったこの矢が回復薬とかの効果を打ち消してるのかと思ったが、多分違う。僕は祝福が使える。でも……今はそれが出来ない。それもこの矢が原因ではないけど、ある意味ではこの矢が原因だ。
 どういう事かというと、僕の力に会長のコードが干渉してる。今まで会長のコードを打ち砕いた時、一部が僕の中に流入してた。何かある――とは思ってたけど、テア・レス・テレスの奴らに掛かったダメージをこちらにランダムに返すあれを放っておく事はできなかった。だってアレがあったせいで、こっちは思いっきり攻撃とか出来なかったしね。

「つっ――」
「遅いぞ、どうした?」

 脚がぐらついて僅かにスピードが落ちたときにテア・レス・テレスの奴が出てきた。こっちの方が数が多くて、テア・レス・テレスは一人あたり相手にする人数が多いはずなのに、こうやっていきなりくる時がある。それの種もわかってるがどうしようもできない。それに今まではスピードに任せてそれこそ振り切れたしね。でも……今は違う。既に僕は風帝武装ではない。それでもそこらのプレイヤーよりは全然早い筈だ。簡単に追いつかれるとか、攻撃が出来る程の遅さじゃない。

 どうやら会長の奴、逐一ちゃんと僕の事を見てるらしい。そしてこっちの動きを予測してる。僕が来ると思われる所にこうやってプレイヤーを出して嫌がらせしてくる。リルフィンの奴が派手に暴れてるのに、それでも焦りはないらしい。いちいちプレイヤーが消えたり出たりしてるから、社長も陣形とかに苦心してるみたい。やっぱり一刻も早く会長を倒さない勝利は見えない。僕は向けられる剣を受け止める。

 そしてそのまま流してフラングランを深くその体に刻み込んだ。倒す気はない。ただ、素早くこいつをやり過ごす。でもそれが焦りだった。

「ふん!!」

 フラングランが食い込んだ奴の体で止まる。どうやらこのプレイヤーは自身の体でもってフラングランを受け止める気だったようだ。筋肉なのか、それとも他の何かでフラングランを固定してるのかわからないが、びくともしない。こんなのいつもなら、切り裂けてた。でも今は、風の精度が足りない。それにここからでも、本当なら風を爆発的に吹き出すとかさせればこいつにダメージを与える事が出来る筈だ。けど……それも今の状態じゃ厳しい。

「うおらぁ!!」

 膝が腹に入ってくる。武器での攻撃じゃないし、そこまでのダメージにはならないだろうがそれでもHPが減り続けてるなか、この一撃は重い。

(フラングランを離す?)

 でもそれは刹那で却下した。僕の武器はこれだけだ。他の武器なんてないしつかえない。これを無くして会長を倒せる訳がない。ならどうにかしないと……どうにか……今度は奴が剣を向けてくる。流石に今の状態でこれをウケるのは不味い……不味すぎる。でもその向かってる剣が異様に遅くみえる。これってアレか? 死の瞬間に周りが遅く見えるとかそういう……すると次の瞬間、上から風の刃が振り注いだ。

「バカ、死にそうになってんじゃないわよ!」

 それはローレの声だ。どうやら、ローレの奴が救援を送ってくれたらしい。助かった。これでまた前に……会長の場所に行ける。ローレの援護があれば確実だ。そう思ったけど、なんか脚が異様に遅い。これは……メノウの時魔法? 何でこんな事をやる? 

「ローレ!!」

 僕はその名前を叫ぶ。

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