命改変プログラム

ファーストなサイコロ

1286

「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「会長はやらせません!!」

 会長が受け止めた後衛のその少女が、杖を前にだす。けどこのゲーム魔法はそんな簡単に無詠唱で発動できるなんて代物ではない。それこそストックとかしとかないと無理だ。だからこんなの苦し紛れだと思った。それに避ける自信もある。更にだ――ここでこの少女が出てきたって事は僕の思惑ははまってるって事。会長に余裕があるのなら、この少女だってこんな必死にならないはずだ。

「てい!」

 そんな可愛らしい声と共に、彼女が何をしたのか。一応僕も身構えてた。どういう風に避けるとか、最悪くらっても腕は振り続けてみせる――とか思いながらね。でもあまりにもそれは予想外過ぎた。なにせ彼女杖の先端のちょっとした突起物が、彼女が杖のボタン? かはわからないが、そんな部分を押したと同時に、飛んで来たからだ。

「えっ!?」

 思わずそんな声をだして首だけで避けた。オモチャなのかその杖は。実際避けなくても問題なさそう威力だった思う。避けなかったら、顔に刺さってた……なんて事は多分無い。いや、マジでよける必要なんて1ミリもなかった訳だけど、あまりの意外さに思わず……だった。でも顔だけ僅かに動かした程度、僕のスピードは落ちてはいない。でもどうやら向こうの狙いはこれで良かったみたいだ。

 僕は顔だけ動かしてよけた。顔の……というか首の可動領域ってそんなに広くない。だから避けた先に更に何かがあるとそれを避けるのは難しい。僕の視界が何かに覆われる。それは紙だ。どうやら会長の奴、避けた先に紙を飛ばしたらしい。でもペラペラの奴だよ? 普通、それが自分の意図した場所に飛んでくなんて事はない。それにここは戦場だ。色々な余波が駆け巡ってる場所だ。室内だってペラペラの紙を目的の場所に飛ばすなんて至難の業。それをこんな戦場で僕の目にめがけてピンポイントで飛ばすなんておかしいだろ!! でもそれも一瞬だ。本当は僕の目に貼り付けたかったんだろうが、僕の周囲は風帝武装の風が絶えず吹いてる。流石に張り付く前には飛ばされた。

「会長、生きてください!!」

 僕はその少女と、会長にフラングランを振り下ろす。それも一回じゃない。できうる限り一杯だ。たくさん。なにせHPを削り切る気なんだから、一撃離脱なんて事はしない。僕の強みは一撃の重さじゃない。連撃だ。だから肺が焼けそうで、脳が痛み出すほどに僕は腕を振るう。会長と少女の周囲全部を使って動き、反撃なんて許さない。少女がまずは消えた。HPが付き、淡い光となって消えていく。でもそれで終わりじゃない。終わりになんてさせない。

(次はお前だ!!)

 そう決意して僕は動き続ける。どうして、後衛とはいえ戦闘に出るために装備を調えてる彼女からまずは消えたのか――その事にこの時の僕は思い至ってなかった。

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