命改変プログラム

ファーストなサイコロ

1281

 ローレはエアリーロとメノウ、そしてリルフィン……いやフィンリルを呼んだ。そういやあいつをここ最近ローレの側で見てなかった。前は自分こそがローレの一番の召喚獣なんだ!! って感じで側に居たのにね。まああいつはわざわざ呼ぶ必要なく居るからね。
 しかも人型にもなれるとかいう、そんな力があるせいでこき使われてるのにそれが絆とか言ってるドMな犬っころである。

 ローレが一気に三体もの召喚獣を呼んだ事で戦場の空気が変わる。なにせ召喚獣は強力だ。誰もがその姿と神々しさ……というか禍々しさというか、そんなのに注目せざる得ない。一瞬止まる双方のプレイヤー達。でもそういう間も見逃させない。
 どんな小さな油断さえ見逃さない様にしてるんだ。それなのに、この召喚獣の降臨に僕まで見入ってたら意味なんてない。僕は双方が止まってる間に動いてテア・レス・テレスを襲う。けど僕が手近な奴を攻撃しようとしたら、そのテア・レス・テレスのプレイヤーが目の前から消える。

(なに? いや、そういうことか)

 僕はチラッと足下を見る。その目をコードを見る目にして。すると足下にそれがあるのがわかる。会長の奴……いつの間に……この戦場の足下には会長がコードを書いた紙がちりばめられてた。そしてそれをさらに気付かれないように透明にしてる。いや、よく見たらわかる……そこまで完璧に隠す気があるわけでもないみたいだ。けどわざわざ目の前に敵が居るのに、足下ばっかり見てるプレイヤーなんていない。全員が参加して全員が必死になってたんだから当然だ。

(なら!)

 僕は目の前の邪魔者がいなくなったんだからこれ幸いと会長を目指す。そもそもが僕たちが倒したくてやまないのが会長だ。まあ最初のエリアバトルでは結局こいつを倒しても負けたんだけど……会長がいなくなるだけで、心への負担がこちらはへり、テア・レス・テレスには重くのしかかるのは間違いない。
 常に余裕を見せてるテア・レス・テレスでも、動揺は生まれるだろう。そしたらそこをリーダー達が突いてくれると思う。だから会長を道連れに出来れば、それは理想。

 けど次の瞬間、僕の四方にテア・レス・テレスの奴らが一気に現れた。これも突然だ。でもきっと今までもこれ、使ってたんじゃないだろうか? ここまであからさまに感じるのは、きっと双方が止まってて動き回ってないからで、距離も本当はもっと微妙な距離で使ってたんじゃないだろうか? 
 双方がぶつかってれば多少の違和感を塗りつぶすくらいは出来るだろう。それに多分、この移動はテア・レス・テレスのプレイヤー達の一存で行われてはいないと思う。多分これを発動してるのは会長だ。四人からに囲まれて武器を向けられてるその一瞬で、会長の奴僕にウインクしてきやがった。

(わかってる……てか)

 僕の行動なんて会長にはバレバレだ。それでもこれだけの混戦で誰も会長にたどり着けないのは可笑しいとおもってた。それがこの足下の仕掛けにあったと思う。だけどそれに気付いた今は今までとは違うぞ! 僕はまっすぐに会長を、会長だけを見てる。

 きっと会長はその違和感に気付いただろう。普通なら攻撃をされそうなのにそっちに目を向けないってのは可笑しい。でも僕はなんだかんだ言ってあいつを、ローレを信頼してる。だから知ってる。僕はこの攻撃よりも速いと!! 追い風が吹く。そして四人の振りは遅くなってた。一部分にだけメノウの力が発動してる。追い風と遅延。それだけあれば僕を捉える事は出来ない。僕は会長の目の前に迫る。でも僅かな距離を開ける様に会長は消えて現れた。振ってた剣は空を切る。けど僕は既にフラングランの一つを投げている。現れた場所に追いすがるフラングランとそしてさらに側面から白銀の獣が口を開けて迫ってる。

 そうしてようやく、僕たちの攻撃が会長へと届いた。

コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品