命改変プログラム

ファーストなサイコロ

1241

「ふう……」
「周囲に居た奴らは片付いたわね」
「何とかな」

 ローレの奴のおかげでなんとかなった。実際蜘蛛の糸にとらわれた時はもうダメだと思ったよ。なにせあの蜘蛛の糸、コードまでに絡みつく様になってたし、離れるのも難儀だった。なんとか抱えてたローレの体を使って身代わりにしなかったらやられてただろう。
 酷いとかは思わないでほしい。なにせ使っていいって言ったのはローレだし。

「まさか人の分体をあんな風に使うなんて、女の子からだよあれ? 酷くない?」
「あの状況で他にどう使えって言うんだよ?」
「それはほら……男子高校生なら女の体にすることなんて……何言わせるのよバカ」

 何故かローレの奴が半目で顔赤くしながら睨んで来た。こいつ、いつもはなにに対しても飄々と振る舞ってるのに……案外うぶなのか? 実は見た目通りの年齢とか? いや、流石にそれはないと思ってたんだけど……少なくとも大人だと勝手に思ってた。けど今の反応を見るに……

「なんで恥ずかしがってんだ?」
「自分の体にそういうことされるって、恥ずかしいでしょ!」

 そういうことか。まあ確かに普通に冗談で言うのとはちがうのかもしれない。どことも知れない誰かを思ってそんな行為を茶化すのは簡単でも、自分の体を対象にそういうことをしてると知ったら気まずくなると……まあ僕はローレでなんてやってないけどな。

「そんなことより、これからどうする?」
「そうね……」

 今は一時的にだけど、僕たちへの攻撃は止まってる。まあ怪しく動いてる奴らはいるけど……直ぐに何かやってきそうではない。なにせ周囲にいた奴らは一掃したし、こっちに魔法を放ってきてた奴らも、今はそれぞれの戦場の戦局が傾いたからこっちにまで手を出せずにいる。これもローレ様々だな。あいつの魔法がかなり効いたようだ。

 ざっと見たところ、既に双方百人を切ったように見える。半分を切った事で加速する事もあるだろう。もしかしたらもう一段階くらい、このエリアに変化があってもおかしくないかもしれない。自分たちは再び戦場に戻ってこれた。ならまた遊撃して行くことが出来る。しかもここは立体的な戦場だ。

 僕の機動力が生きる。なかなかに暴れ回れそうだが、再び紙吹雪とかで飛ばされてもかなわないんだよな……普通にどこかの戦場に参加して、一つずつ打ち破って行く方式が無難かもしれない。ローレもいれば、そうそう負けるなんて事はないと思う。

 いくつかある大きな戦場……そこで勝利を収めれば、かなり優勢になる。

「ちまちまやるのは私の趣味じゃない」
「じゃあどうするんだよ?」

 このわがまま娘め。そもそもこいつ、自分が出るのはイヤだからって面倒な方に持ってくこと多いだろう。エリアバトルだってこいつが出張れば大抵直ぐに終わるだろうに、どうでもいい下の奴らこき使ってるし。まあ流石に今回はメンツもあるからちゃんと働く気はあるようだが。
 それに大手チームのエリアももらえる手筈だ。後から活躍で文句言われない様にそれなりに働く気だ。

「そろそろ、会長の予想を上回らないとダメだと思わない? 私達会長の手のひらの上で踊ってる気がするし」
「それは……そうだな」

 確かにここまで来たことは全て会長の思い通り……という感じだ。じわじわと真綿で首を絞められてる感じがする。気付いた時には手遅れ……あいつが好みそうな事だ。それをローレは打破しようと言う訳か。確かにそれが出来れば、こいつの活躍に文句を言う奴はいないだろう。

「目に見えてる奴ら、全員に退場して貰いましょう。そして会長を引っ張り出す」

 そう言ってローレが錫杖を鳴らした。

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