命改変プログラム

ファーストなサイコロ

1217

「チルチルちゃん!」
「げっ!? なんで来てるんですか!?」

 私に幻滅した筈では? なのに私の護衛の一人(向こうは仲間だと思ってる筈の)奴が私を追いかけてきました。ストーカーかな? いや、義務感でしょうか? とにかく彼がついてきた。そして追っ手はいない。どうやらテア・レス・テレス的には逃げる奴は追わない主義らしい。助かるけど、あの場のこちら側の陣営は二人も敵前逃亡して迷惑極まりないでしょうね。

 リアルなら銃殺……けどここはLROだし、私にはやることがあるので勘弁ししてください。そもそもが私の上司は大手チームの奴らじゃないですので。こっちの上司はもっと怖いんデス。

「俺は君を守るって誓ったんだ。離れる訳にはいかない。それに他の二人も今は居ないし」
「いいんですか? さっきのあれ、見てたんじゃないんですか?」

 あれと言うのは私がマウントとってナイフでざっくざっくしてた光景である。あれを見て引かれたとおもった。私は彼らが求めるか弱い純な乙女プレイヤー演じてましたからね。その幻想は砕かれたと思ったんですけど……違ったんでしょうか? 

 私の視線に彼は顔を赤くして下を向いて頬をかく。今はそんな場面? そんな良い雰囲気醸し出してないですけど……

「必死だったんだよね? そういうときはしょうが無いさ。あれは自分がふがいなかったから、チルチルちゃんにあんな……けど、今度は絶対に守るから!!」
「…………」

 なんか都合よく解釈してますね。私にとっても都合良いですけど、その都合の良い改変は自分のためだってわかってるんでしょうか? まあ大体こんなのはわかってないでしょうけど。見たくない物には蓋をする。そういう人間の心理、私は嫌いじゃないデスよ。

 まだ都合よく盾になってくれるというなら、私的には文句ないですしね。寧ろありがたいデス。やっぱり今の私の強さで一人って言うのはですね……かなり危険ですし。

「こんな私でも良いですか?」

 しなを作って、セミロングの桃色の髪をいじりつつ顔は下目に向けて、目は上目遣いで彼にそういう。あざとい……自分でそれをわかってやってますから。すると彼は予想通りの反応をかえしてくれた。

「も、勿論! お……お、お、いや僕は君が――」
「ありがとうございます。うれしいデス」
「――ああ、うん」

 私はハキハキとお礼をいって彼の言葉をかき消した。まあ元から紡いでなんてないでしょうが、私はそれを言わせる気も、そして聞く気もない。だって都合の良い存在で居てくれないと困りますからね。

 さて、とりあえず追っ手が来ないのはいいけど、どうするか……ですね。下にも戦場があって上にもあるし、横にだってある。二百人がこの戦場に来て、まだ百五十はのこってたして、それらを分散させてるとしたら、それなりの戦場があちこちにあって当然でしょう。

(スオウが居ませんね)

 あれは目立つはず出すけど……見た目がじゃない。だいたいスオウが居る場所は騒がしい。戦場だから騒がしいのはどこもですけど、あいつの居る場所はなにか特殊ですよね。それにスオウと共に居たあの召喚士もいない。それなりにあれから時間がたってるし、今や紙吹雪は見えない。それなのに二人がいない? どういうことでしょうか? 
 
 とりあえず足場や、階段はそこらにあるし、戦場を俯瞰する形で回ってみましょう。何か気付くことがあるかも。ただ目の前の状況に対処して行くだけではテア・レス・テレスを出し抜く事はできない。いや、あの会長を――だ。だからいったん戦場に加わらないで俯瞰することにしましょうデス。

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