命改変プログラム

ファーストなサイコロ

1188

 僕とローレはエアリーロへと乗りテア・レス・テレスの様子をうかがってる。エアリーロは空を飛べるおかげで、エリアとなってるドーナツ状の場所から離れることが出来る。この中で僕たちだけが、エリアに縛られてない。

「なんかあんまり動揺してないな」
「この程度、会長なら予測してたんでしょ」

 確かにそれはあり得る。てか……これって……

「まさか乗せられた?」
「そうかもね。けど、まあエアリーロの召還は決めてたし、私は予定通り動いてるだけよ」
「おい……」

 まるで僕が……僕だけが向こうの思惑に乗った様に言うなよ。そもそもこんな早く、オリジンを使う気はなかっただろうが。なにせこっちからは玉の特典、すべては見えてなかった。だからテア・レス・テレスがどんなものを持ってるかとか、選んだとか全くわからなかった。

 こっちが持ってるだけの玉の特典は見る限りしょぼかった。だから最悪、凶悪な特典をテア・レス・テレスが持ってる場合は、対抗策はオリジンしかないかもって話してたし、オリジン使う背中を押したのはお前だろうが。

「動き出したわよ」

 ローレがそういう通り、テア・レス・テレスが動き出した。下手に特典を出すと僕のオリジンにやられるからか、直接叩く事にしたようだ。それぞれ左右に分かれて動き出すテア・レス・テレス。二百人が動き出すと気持ち悪さがあるね。反則級の特典を出さないでくれるのは助かる。

「実際、あれと同じのが後どれくらいあるのか……」

 僕はポツリとそうつぶやく。それは独り言のつもりだったが、なんかローレの奴に聞こえてたようだ。

「向こうは玉を大量に持ってたからね。さっきのが一体どれだけの玉で手に入ったのか分からない以上、あれで終わりなんて思っちゃだめってことでしょ?」
「……そういう事だな」

 さっきの特典ははっきり言って反則級だったと思う。だからもしかしたらテア・レス・テレスはさっきの特典の為にほぼ全ての玉を使った――――可能性もすてきれない。けど、そう思いこむのは危険だ。玉と交換できるアイテムは自分たちが所有出来た以上の商品は見れなかったからだ。

 これで自分たちが所有してる以上の商品さえみられてたら、その商品のコストとテア・レス・テレスが持ってる玉を計算して、後どれくらい同じようなものを得たかってのが分かったわけだが……そんな事は出来ない仕様だったから仕方ない。

 わからない以上、楽観的に考えるのは危険だ。もしかしたら、さっきの以上のチートな特典があってもおかしくない。

「なんだよ?」

 なんかローレの奴が僕をじっと見てた。何でそんなに見る? オリジンの姿なら、こいつは見慣れてるだろう。

「いや、まだ向こうに特典があるのなら、それで狙うのはあんたかなって思って」
「う……」

 確かにそれは否定できないな。さっきは全体攻撃用の特典だった。けどそれが確実に個人に特定できるものならどうだ? 二百人中一人をたたくだけの特典なんか全体攻撃に比べたらしょぼく感じるが、その分威力とかはきっとえげつないものになるだろう。それこそ、システムで『絶対』を冠しててもおかしくないかも?

 まあそれならさっさと使うかもだが、向こうには会長がいる。僕がシステムに干渉できる祝福持ちだとばれてる。だからシステムの絶対にも確実性は絶対じゃない。警戒してる。でももしも……本当にそれがあるのなら、確かに僕は狙われる。だって特典をぶっ壊せるのはオリジン持ちの僕くらいだ。残りの特典がどんなものか、攻撃に使用できるものだけなのか……はわからない。

 けど、いずれにせよ、あるとしたら強力なものだろう。それらを十全に生かすためにも僕という存在は邪魔だ。

「肝に銘じておくさ」
「そうしなさい」

 僕たちがそんな事を話してる間にも、テア・レス・テレスの攻撃は始まってる。僕たちもそろそろ参戦しよう。

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