命改変プログラム

ファーストなサイコロ

1167

 俺達は六人からなるパーティーを編成してアルテミナスへと向かう。既に手持ちの回復薬とかは使ってしまったから、一応初期の回復魔法を使えるアイリが回復役という事になった。後は取り合えず障害物を排除する役割だ。俺達は急いでアルテミナスへと戻る必要があるからな。

 なるべく固まって襲ってきた敵は速攻で物量で押して倒す。襲ってこないのなら、見逃すのが方針だ。

「来たぞ!!」

 一番前を走ってるのはグリゴーさんだった。彼はどうやら斥候としての能力があるみたいだ。感覚が鋭い。彼の洗脳が解かれたのは運が良かった。前から来るのはアルテミナス周辺でよく見る狼型のモンスターだ。泥をかぶってる訳でも、変な枝が出てもない。
 普通の狼型のモンスターだろう。なら恐れる事はない。

「各個撃破だ!」

 この小隊のリーダーである騎士の人がそういう。俺達は止まる訳にはいかない。だから正面から向かってくる奴らを一人一殺である。今の俺なら、一撃でこのくらいの敵を倒す事は出来る。勿論うまく当てる所とか考えないといけないが、今日は結構調子がいい。
 強敵との一線の後だから感覚が研ぎ澄まされてるのかもしれない。そういうのあると思う。俺は目の前に来た敵の大きく開いた口に剣を差し込む。団子に刺さった串の様にぐっさりといった。だがHPという概念のせいで絶命はしてない。それでも獰猛な目を向けてきてる。だから中から燃やしてやった。

 俺達もHPが尽きるまでは気合で動ける。それはHP1でも……だ。だからそれは俺達だけじゃない。LROでは完全に尽きたのを確認するまでは何が起こるかなんてわからない。油断はしない。

「すまん漏らした!!」

 まあ誰もが一撃で敵を屠れるだけの力を持ってるわけじゃない。でも俺達はチームなんだ。個人で足りない力を補う為にこうやって集団でいる訳で――

「俺がやります!」

 ――俺は一撃で目の前の奴を倒してたから余裕がある。直ぐに撃ち漏らした敵の方へと駆ける。

「うおおおおおおおおおお!」

 横に一閃。けどまだ浅い。次で!

「アギト!!」

 更に追い込もうとしたところで後方からアイリの声が響いた。離れすぎた。俺達の今の目的は敵の殲滅じゃない。既に襲ってきた狼型のモンスターたちは逃走を始めてる。今は逃げる奴らを追ってる場合じゃないんだ。俺は小隊に急いで合流する。

「これなら何とかなりそうだな」
「変な敵でも出ない限りだけど……」
「流石にそうそう、あんな変なのはいないだろ」

 さっきの泥の奴も洗脳使うベネジュラージャも何体もいていいモンスターじゃない。そもそもがここら辺では見た事無いよう奴らだ。だから変なフラグを立てても流石にあれ以上は出てこないと思う。

「そうだね。けど、ここはLROだからね。異変が起きるって事は、どこかに原因があるって事だよアギト」
「原因か……」

 確かにそれはありえる。ゲームの都合で配置された奴らは確かにいるが、世界は動いてる訳で、予期せぬ何かがつねにおきえるのがこのLROだ。まあとかなんとか言ってたが、予期せぬ敵なんか現れずに俺達小隊はアルテミナスへと到達する事が出来た。

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