命改変プログラム

ファーストなサイコロ

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 俺は特別なんかじゃない。それに気づいたのはいつだったか。俺は身長もあって運動も出来て、頭だってちょっと勉強やればそこそこできて、正直幼いころは自分が特別だって思ってた。なにせ何してもチヤホヤされたし、モテ期だったし、商店街とかでもよく天才だねーって言われてた。

 幼稚園でも小学生でも変わらなくて、中学生でも……そうだ俺はそこで本当の特別を知ったんだ。ただ人よりも少し身長が高くて、少し運動神経が良くて、頭は別に普通だった。その頃には勉強は得意ではなかったんだ。俺の特別性の限りは案外近かった。

 小学生までは簡単だった勉強も中学生ではちょっとずつ難しく感じる場面は増えてきてたんだ。特別じゃない俺は色々とやる気がなくなって行った。部活とかも最初は精力的にやってたし、なんなら小学生とかの時は複数の事をやってた。

 けど、やっぱりずっとそれをやってる奴には勝てなくて、勉強だって頑張ってる奴には勝てなくなって、特別だったものが、どんどんなくなって行くと、居場所とかなくなって結局部活とかはやらなくなった。もしかしたら一つの事に打ち込めばちょっと上には行けたのかもしれない。

 身長もあるし、バレーやバスケとかはそれもあって有利だったかもしれないが、なんか俺では頂点には行けない気がしたんだ。特別だった自分は実は普通で……けどそんな自分が本当の特別になれる場所。それを見つけた。

 それがLROだ。まあ厳密にいうと、あのゲームは誰しもを特別にするゲームだ。誰もが自分の物語を紡いでるから、あのゲームをすれば、皆が自分が主人公だと思うだろう。そこでの出会い、生まれた絆。そしてリアルでも失いたくない関係性。

 俺は……どこでだってアイリにとって愛にとって特別でいたい。かつて手放した特別を、今度は失いたくなんてない。だから……

(嫌いだなんて言わないでくれええええええええええええええええええええええ!!)

 俺は洗脳状態の中、そう叫ぶ。勿論洗脳されてるから、そんな声が口から洩れる訳はない。俺は視界は見えてる。けど、体の支配権が切り離されたかのように、自分の意思が通らない。さっきまではこれが洗脳状態なんだなーとか思ってて、後はアイリに任せていいとおもってた。
 アイリを信じてたんだが、アイリは更に俺を信じてくれてるようだ。俺がこんな洗脳に負ける訳ないと……それが出来たら俺はアイリの特別に答える事が出来るだろうか? 

 俺は洗脳というシステムに抵抗はしてたが、支配権を取り戻そうとはしてなかった。でもここで俺がアイリの超えに応える事が出来れば!!

 (うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!)

 俺は気合を入れる。気合でどうにかなるものじゃない? 確かにそうかもしれない。LROはスオウとかは思いを組んでくれるとかいうが、俺にはよくわからない。けど、信じてみようじゃないか。けどそれはLROをじゃない。俺が信じるのはアイリだ。

 アイリの為なら――俺は素足で炎の上だって歩いてやるぜ!! 洗脳なんかに俺は……俺は……

(負けねえええええええええええええええ!!)

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