命改変プログラム

ファーストなサイコロ

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「ていや!!」

 私は素早く近づいて枯れ木の一つに剣を振るう。そのスピードはスオウ君には及ばない物の、なかなかだと思ってる。だから枯れ木の一つや二つ切るくらいなら三秒もあれば……と思ってたんだけど――

「避けた!?」

 ――いや、この場合はやっぱりか。だってアレがモンスターだってのは分かってました。まあけど、まさか木に避けられるとは思ってなかったですけど。でもこれで確定しました。私はまだ大丈夫な騎士たちに伝える為に声を張ります。

「皆さん! 気を付けてください! この枯れ木はモンスターです!!」

 私はその間にも切りかかります。けど、器用に避けられる。幹を強引に捻じ曲げて動く枯れ木は柔軟性ありまくりである。枯れてないじゃんと言いたいです。まあ枯れ木なのは油断させるための変装みたいなものなんでしょうきっと。

「こうなったら!」

 私は幹の地面に近い所を狙う事にしました。そこなら流石に変な感じに曲げる事も出来ないでしょう。私の剣が幹を捉える――とおもったその瞬間、矢が私の攻撃を妨害してきた。

「つっ!?」

 私は体を捻ってそれを回避します。今、何気にスキルを使ってた? 洗脳された状態でもスキルとか使えるんだ。洗脳された人たちはゾンビ映画みたいにノロノロと来てたから大丈夫かと思ってた。けど考えてみれば、洗脳されてた狼型のモンスターもその能力が低下してたわけじゃなかった。

「って事は……」

 私がそう思うと洗脳されてる人達が走り出した。そして私の方と泥のモンスターを囲んでる騎士たちに分かれて突っ込んでく。私の方に迷わずアギトを寄越してる当たり、この木わかってます。私が一番やりづらいのがアギトだからね。

「やめろ! 目を覚ませ!!」

 そんな事を言って応戦する騎士の人達がいるけど、勿論そんな言葉でどうにかなるわけない。けど明らかに動きが違う人たちがいるのも確かです。多分抵抗してるか、完全に支配されたかの違い。アギトはまだぎこちないから抵抗してるみたい。

 言葉とかで都合よく術が解ける……なんてのはご都合主義の物語の中だけの話だと思う。でも、ここなら。LROならリアルよりは可能性があり得そうな気もします。なぜならLROは思いを組んでくれるから。気合を入れれば瀕死の重傷を負ってても動けるし、気合があれば、スキルの威力とか上がったりする。そういう謎の思いの力ってのをこのゲームは大切にしてる。

 だからまだアギトは可能性があるかもしれない。本当は早く大元を断ちたい。けど、混戦になってしまうとそれも難しい。それにあの泥のモンスターも動き出してる。

「ふはははは! お前たちは甘いんだ!! 甘さと共に死ね!!」

 そういって泥のモンスターはその体を散らす。何をやる気かと思ったら、洗脳されてる騎士たちの武器とかにコーティングの様に自身を張り付かせてた。本当ならあの狼型のモンスターの様に全身を包みたいんだろう毛とそれには泥の量が足りないのでしょう。

 けどこれで更にやりづらくなったのは間違いない。あの泥のモンスターを倒すにしても、斬り合わなくちゃいけないのは仲間である騎士です。本当に嫌な事ばかり……私はまずはアギトの心に訴える為にこういいます。

「アギト! 聞いてください!! 今のアギトは嫌いです! 戻ってきてください!!」

 その瞬間、アギトの動きが止まった。うん、アギトの事、私は信じてます。こんな洗脳なんかには負けないって。

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