命改変プログラム

ファーストなサイコロ

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 アイリが放ったスキルが泥を被ったモンスターを撃ち貫く。かなりダメージを与える事が出来た様に目視では見える。まあHPが見えてるからどのくらい効いてるかなんて一目瞭然なんだが。

「マジか……」

 俺はそう呟いた。それは一撃では流石に倒せる……とは思ってなかったさ。けど、HPを見ると全く減ってないのがわかる。派手に弾けてたし、飛んでたし、貫いたようにも見えてた。けど、どうやらそれは泥を弾き飛ばすにとどまったみたいだ。

 あの泥、性能よすぎじゃないか? そこらの装備よりも高性能だろう。一度の攻撃を完全にふせぐとかなるとな。

 中途半端な攻撃なんて泥を剥がす事も出来ないし……力を込めた攻撃さえも泥を剥がすに留まる。しかも辺りは泥だ。直ぐに泥なんて補給できる。

「アギト!」
「わかってるよ!」

 アイリは自身の靴から羽を出して泥に着地する事を拒否して指揮官を守って手近な敵を屠ってる。やっぱり泥さえなければ雑魚だな。アイリはそこまで攻撃力がある訳じゃない。そのアイリの攻撃で泥がないモンスターは屠られてる。スキルも靴から羽生やす以外は使ってないように見える。

 今なら一網打尽に出来る。けど操られてる奴らはバカじゃない。泥がなくなった時点でアイリから距離を取ろうとしてる。今のアイリなら追撃出来るが、指揮官エルフが「俺を守れえええ!」と言ってアイリの服を掴んでやがる。

 アイリに触れるな! ――とぶっ叩いてやりたいが、今はあのモンスターだ。かといって距離はまだある。なにせあいつら引いたからな。そしてモンスター共の足元の泥が蠢いて盛り上がる。まるでこの泥自体が生きてるかの様。なかなかにびっくりしたが、包ませない。

 俺はその場に止まってスキルを発動させる。

「炎剣――重ね」

 言葉の通り、刀身に炎か宿る。そしてそれを重ねる事で更に炎の威力を高めていける技を使う。赤い炎が青くたぎる。けどこのまま降っても届かない。だから更に技を駆使して射程を伸ばす。俺は泥に付くかつかないかギリギリまで水平に刀身を向けて腰を落とす。

 こんな風にやってる間に泥がモンスターどもを飲み込んだ。だがなんかもごもごしてるし、まだいけるだろう。

「うおおおおおおお! 炎々の波!!」

 振りぬいた刀身に既に炎はなくなってる。だが青い炎は波の様に進んでいき、もごもごとしてる泥ごと、モンスターどもを包み込む。泥は水分を多分に含んだ土だ。普通なら炎の勢いはおちるだろう。けど、この炎は更に対象を燃え上がらせてる。

 周囲が明るく照らされる程の炎。それを俺達は祈る様に見てた。

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