命改変プログラム

ファーストなサイコロ

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「行くんですねークスクス。王子様が来てくれて羨ましい限りですよ」
「苦十ククリ、やっぱり来たわね」

 ここはリアルへと精神が還る前段階の所だ。そこでコードを弄ってたら、奴がやってきた。不思議な雰囲気をした女の子。ダボっとしたワンピースを着て、足は素足だ。何? 起き掛けなの? と言いたい格好だ。肩よりも少し長い髪は揺れる度にその色彩を変えるおかしな髪してる。
 白目が見えない目を細くしてほほ笑んでる様にみえる。まあクスクス言ってるから笑ってるんだろうけど……

「まるで私が悪者みたいな言い方はやめてくださいよ~。私はただの協力者であって黒幕なんかじゃないじゃないですか」

 大きすぎる服のせいで手が見えてないが、そんな長すぎる袖を振ってクルクルしてる苦十ククリ。そんな彼女から目を離して私は手元に再び視線を落とす。
 そんな私に近づいて無理矢理私の視界にニョキっとその顔を割り込ませてきた。そしてニマーとした表情してる。

「黒幕は貴女じゃないですか。このことを彼が知ったら――」
「それが何?」
「またまた~もっと焦ってくださいよ~。もっと感情を見せてくださいよ~。そういうのもっと知りたいんです私は」

 本当に気味が悪い表情を出来る子だ。なんていうか、無理矢理作ってる表情というか……

「感情を見せるっていってもね。私が今、気分がいいのかわかるでしょ?」
「それをー私が落としちゃうって言ってるんですよー? なんで怒らないですか?」
「怒る事じゃないもの」

 私はそっけなくそういうよ。楽しいというのならそれをやればいい。私は止めはしないし、彼女にとって他人の言葉なんてそんな意味ないだろうしね。

「彼に嫌われますよ?」
「嫌われないもん」
「なんでですか?」
「その程度の関係じゃないもの」

 私は素早くそういっていく。すると私の周りを歩きながらその歩きに変な音楽をかけてくる。

「二人が幼馴染とは聞いてます。それはそんなに特別なのですか?」
「それだけじゃない。けど、ククリには無理だから」

 一瞬、空気が冷えた気がする。けど直ぐに目を細めて笑い出した。

「うふふふ、面白いですよ。じゃあ試してみますので、私の事恨まないでくださいね」

 そういって苦十ククリが消えた。きっとスオウの方へと言ったんだろう。はあ……苦十は扱いやすいが、油断は出来ない。あれば……とても危険な存在だ。けど……手札は幾つか手に入った。苦十ククリはネットの海で暗躍してる。
 それは世界をどうしていくか分からないが、あの子は無邪気で、そして好奇心が旺盛だ。そしてネットの海にいる限り、私達は手出しが出来ないから……だから少しでもその手段が必要だとおもった。スオウだってどこか苦十ククリが危険だと感じてる節はあると思ってる。

 だからスオウはわかってくれる。バラされようが、大丈夫だって私は確信してる。

「さあ、久しぶりのリアルだね」

 私は最後のコードを綴ってリアルへと還る。

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