命改変プログラム

ファーストなサイコロ

1096

 テア・レス・テレスに向かった岩は案の定だけど、反撃効果で防がれた。まあ反撃効果で防ぐっていうのかどうか疑問だが、とりあえず向かった岩は壊された。でも収穫はあった。なぜなら僅かに岩をずらして向かわせたからだ。反撃効果はダメージ自体は食らってる。
 
 そのダメージの何割かを問答無用で返すのが本来の反撃効果だ。それを会長がコードを弄っておかしな性能にまでしてるから攻撃事態が危険だが、ダメージはやっぱり受ける。受けないと反撃にはならないしね。ならそのダメージを回復の暇なく与え続ければどうなるのか。
 それは一つのこの高すぎる反撃効果への解でもある。

「くっ……そ……」

 テア・レス・テレスの一人がそんな声を出して消えていく。これはラッキーなのか? 実際こういう事を想定してなかったとは思えない。それにテア・レス・テレスの奴らは別段驚いた様子がない。逆にこっちは盛り上がってる。盛り上がるのは悪くない。

 実際士気が下がってたし、低いよりは高い方がいいだろう。

「おいおい、やられてんじゃねーか」

 そんな声がする方に視線を向けると、テア・レス・テレスの援軍と思われる部隊がいた。しかも一部隊じゃないぞ。いや、旗色はこちらが悪いんだ。あれは別に援軍じゃない。きっと他の場所のこちらの玉を奪い終わったんだろう。通信ではどこもかしこも増援を求める声があるし、情報が交錯してる。
 一体どれだけが落ちてどれだけが残ってるのかも、今はわからない。せめて落ち着ければ……いや、それでも厳しいか。
 てかこの反撃効果を全てのテア・レス・テレスが適応してるとなると……やばすぎる。こっちの玉が奪われまくるのがよくわかる。

(でも、それなら最初からアレを使えば圧倒で来たのでは?)

 そう思わずにいられないが……でも会長の奴も色々と気にする奴だからな。あいつは気が利く奴だ。だからこそこのイベントと化してる戦いを盛り上げようと考えたのかもしれない。最初から一位の奴が挑戦者を圧倒したら、最初は盛り上がるかもしれないが、それは最初だけだ。

『やっばりな』

 すぐにそんな思考にギャラリーは埋め尽くされるだろう。けど挑戦者が善戦して、いい感じに試合が展開していくと、その興奮を維持できる。そして最後には大逆転で挑戦者が勝利するのが一番盛り上がる筈なんだが……さすがにそこまで会長は甘い奴ではない。

 だから甘い事をしつつも、巧妙に罠を張って追い詰めてくる。最後には自分たちが勝つために。絶対王者を揺るがさないために。

「けどまあしょうがねえ。あの野郎がいる所は注意するように言われてるからな。気に食わねえ」

 こっちを見てすさまじい敵意を向けてくる奴。高い身長に白い髪に赤いバンダナをつけて、握る白い鎌の様な武器を左右に持ってる。

「お前たちは完膚なきまでに負けるぜ。玉を一つも残さずにな。なぜならそれがあの方の望みだからだ!!」

 全ての玉を取るという宣言。それを会長であるあいつが言ったのなら、その策を既に講じてるんだろう。あいつの思い通りにならなかった事なんて今まで一度も見た事ない。けど……そうやすやすとそんなことが受け入れられるか。それに僕はあいつを……会長を助けないと行けなんだ。

 仲間たちが周囲からの襲撃に警戒して玉の周りに集まってる。僕もそこへと降りた。皆、まだ戦意はある。これからどれだけの敵がここに来るかわからない。時間をかける程にその可能性は高くなる。そしてこちら側はどうだ? 玉が減れば、戦力を集められる筈だ。

 こっちの増援も期待できる? けど、倒されてたら復活までの時間が掛かる。向こうも無傷ではいられないだろうが、こっちの被害が大きそうなんだよな。あの岩とかの攻撃見る限りさ。それに今来た奴らは、積極的に戦闘をしそうな奴らだ。ここに攻めてきた奴らとはタイプが違う。
 多分攻めてる奴らでも意味があってチーム分けされてるんだろう。向こうに取っても連絡を密にされて、戦力を攻撃してる所に移動させられると厄介な筈。だから足止め……そう最初に僕たちが相手してた奴は足止めか、僕たちをここに釘づけにする為の役目。

 全ての玉を同時に狙われたら、全ての場所に戦力を分散しないといけない。これも守る側が多いこちらが不利。向こうには選択権があった。そしてこっちは後手後手だ。

 増援はそれほど期待しない方がいいだろう。

「やりはしないさ。全ての玉を取られはしない!」

 こちら側の一人がそんな風に自分を鼓舞するように言ってる。向こうにまで聞こえてはないだろうが、皆の気持ちは一つだ。僕たちの戦闘再び始まった。皆がこの玉を守ろうと戦ってる。けど僕には一つの思いもあったんだ。ここで戦ってていいのか? それが一番いい事なのかって……

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