命改変プログラム

ファーストなサイコロ

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「ぐっうぅ……いったい何が?」

 辺り見ると、白く靄の様な掛かってて視界が極端に悪くなってた。何かの攻撃を受けたのはわかる。だけどこれだけの攻撃を察知される事無く、繰り出せるなんて……正直信じられない。これが第一位のチームの実力。HPを見ると半分くらいは減ってる。

 後衛は大丈夫だろうか? 彼らは装備的に自分たちよりも防御が薄い。仕方ない事だ。視界が悪いからウインドウを出してパーティー内だけでも確認する。なんとかパーティー内の仲間は大丈夫みたいだ。皆かなりダメージを負ってるが、やられた奴はいない。

 とりあえず回復薬を飲んで周囲を警戒する。近くに居た多分仲間と思われる奴らの声が響いてる。ここら一体に何かが起こったから近くにいた全員が巻き込まれたのは当然か。とりあえず、玉だけは死守しないといけない。自分はインベントリ内のアイテムを確認する。

 自分は男色艦隊に所属する一兵士だ。男色艦隊は男ばかりの大所帯だが、決して自分がそっちの気がないって事は主張しておきたい。てかそんな奴がいるのかどうかはしらない。あんなチーム名だから勘違いされるが、普通のチームなんだ。

 そして皆、このチームにいる奴らは団長を慕って集まってきてる。その結束は決して他のチームに負ける事はない。LROで一番の戦闘集団と呼び声が高いのが、我等男色艦隊だ。冷静になれ……そして状況を確認して次の行動をとるんだ。

 数チームがこの攻撃を受ける前に視界に入ってた。それならその中に通信機を持った人がいるだろう。その人にとりあえず玉は預けた方がいいかもしれない。

「まずはHPを回復させるんだ! 前衛は周囲を警戒。後衛は魔法で索敵を頼む!」

 そんな声が聞こえる。この視界では誰かは分からないが、ここは従っておくべきだろう。すると靄の向こうに人影が見えた。

「そこに誰かいるのか?」

 声をかけるが、返事はない。向こうはこっちに気づいてないのかもしれない……が、なにか違和感がある。その時だった。見えてた人影が消えて、炎の塊がむかってきた。

「ぐあああああああ!!」

 咄嗟に剣で受け止めたが、炎は広がり体を包む。熱い! だが!! 自分が着込んでる黒い鎧に線が走る。それと同時に、体を回転させて炎を振り払った。

「ぬお!?」

 炎を払った所にさっきの人影と思われる奴が剣を突き出してきてた。けどそれもこの鎧に弾かれる。男色艦隊に入った者に支給されるこの装備はとても優秀だ。これだけの装備を自力で獲得しようとすると、目がくらむ大金でも用意しなきゃいけない。

 けど男色艦隊に入れば支給してもらえるんだ。男色艦隊がLRO一の戦闘集団といわれる所以はこれだ。この装備があるからこそ、バリバリ戦闘できる。自分たちはこの装備に絶対の自信を持ってる。不意をついた一撃を阻まれた敵は、更に連撃を加えてくるが、軽い。

 テア・レス・テレスといってもこの程度か? いや違う!! 足元に陣があらわれる。そこから出てきた土の竜に飲み込まれた。そのままかじられ、そして再び地面にたたきつけられる。鎧を通して衝撃が伝わり、大きく息を吐く。

「ぐっ」

 流石にサポートも何もなしに戦うには厳しいか……

「誰か――つっ!?」

 助けを求める様に周囲を見て激震した。いつのまにかこちらの数を上回る数の敵に囲まれている。既に味方のほとんどは中央に追われてそこで何とか対処してる感じだった。自分は確実に孤立してた。これでは援護なんて期待できない。
 いや、そもそもその余裕がない。このままでは奪った筈の全ての玉がここで……そこまで考えて気づいた。

「そういうことかああああああ!」

 スキルを発動させて土の竜を叩き砕く。だがそこに魔法が幾重も降り注ぐ。最初の何発かは叩ききった。だが数が多すぎる。しかも奴らこの鎧への対処法をわかってる。直接に自分じゃなく周囲の地面や、それか質量物質を生み出しての攻撃をしてきやがる。つまりは炎や雷とか風とかではなく、氷や水や土とかそっちの魔法だ。

 衝撃が鎧を通り抜けてくるし、大きな岩盤を落とされて自分は膝を地面につく。あとはもうなぶり殺しにあうしかないか……剣も手放してしまった。どうやって我々を倒すか、完璧にシミュレーションされてるかのようだ。

 奴らの狙いは玉を運ばせること……ようは自分たちはタクシーにされたんだ。そんな許しがたいことと思い抗ってみたが……向こうの方が一枚上手か……既にやりようがない。援軍……それしか……期待は薄い。なにせ今から動いたとして一瞬でここに来れる方法なんてない。転移なんてこの世界にはないんだ。

 大きな影が落ちる。それが何か、見なくてもわかる。多分自分を押しつぶす為の岩盤を作ったんだろう。それが落ちて来てるんだ。既に今の岩盤を支えるだけで精一杯の自分は動きようがない。既に使える強化は使ってこれだ。
 後は後衛の強化に頼るしかないが、向こうはそんな場合じゃない。たすけは……ない。そう思って諦めた時だった。風がふわっと吹いた気がした。いや、確実に吹いた。そして突然重さがなくなった。綺麗に切られた岩盤がそこにはある。そして目の前には風をまとった人物がいた。

「とりあえず退路を作る、回復しておけ!」

 そういってその人物は消えた。緑色の風が吹いてる様に自分には見えた。

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